今回は、ある興味深い事例から、奥にある人々の価値観を掘り下げます。
おもしろいと思ったサービスを取り上げ、マーケティングの観点も入れながら 「価値」 について見ていきましょう。
✓ この記事でわかること
- 物々交換からのプライスレスな満足感
- コンサルティングの対価はお寿司?
- お金の歴史の巻き戻し
- お金よりモノにある価値とは
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
物々交換でプライスレスな満足感
日経新聞でおもしろい記事がありました。
物々交換、満足プライスレス|日経新聞
新しい物々交換
以下は記事のリード文からの引用です。
モノやサービスを購入する対価としてお金を払うのが当たり前の世の中で、金銭を介しないやり取りがじわり広がっている。
「物々交換」 をコンセプトにしたブランドや店舗が登場しているほか、サービスの対価として受け取った野菜を料理に使って廃棄を減らす試みも出てきた。社会の多様性などに注目が集まるなか、様々な人とつながる物々交換が新しいライフスタイルとして注目を集めている。
コンサルティングの対価はお寿司
記事の内容で特に興味深かったのは、「おすしカンパニー」 の事例です。
出典: 日経
該当箇所を記事から引用すると、
コンサルティングの対価はお寿司 (すし) ――。こんなコンセプトをかかげた 「おすしカンパニー」 という集団が21年11月に立ち上がった。この話は、お金の成り立ちに遡ると考えさせられます。
「稼いだお金でお寿司を食べるなら、仕事の対価自体がお寿司でいいのではないか」 と考え、ブランディングや企画立案を手掛けるデザイナーらが参加している。企画のアイデア提案やブランディング支援のサービスを提供し、お金以外のモノやサービスで 「対価」 を受け取る。
老舗のすし店から新たな顧客層を開拓するためのブランディングの依頼を受けた際、対価として寿司を受け取ったという。例えば、精米店ならお米、焼き芋店なら焼き芋がコンサルティングの対価となるという。
モノだけでなく、美容室ならヘアカットのサービスと交換する。おすしカンパニーの陳暁夏代さんは 「その人や会社のオリジナルの価値を一緒に探し、作っていきたい」 と話す。
お金の歴史の巻き戻し
あらためてお金とは何でしょうか?
はるか昔、人は物々交換で生活をしていましたが、物々交換には非効率な面もあり、わずらわしさや不便さを解消するためにお金が生まれました。
お金の役割は大きく3つで、尺度、交換、保存です。価値を測る尺度として、等しい価値と交換するためのツール、価値を保存しておく役割を果たすのがお金です。お金が人類史に与えた影響は大きいです。
ここで最初に見た、コンサルティングの対価としてお金ではなく物やサービスで受け取る話とつなげます。
世の中にお金がある中で、あえて対価をお金で受け取っていないのは、お金の歴史と照らし合わせると巻き戻していると捉えられます。ここに、まだ一部の人々のみかもしれませんが、人の価値観の変容を見ます。
お金とモノへの価値観
お金の心理的な価値が、今までよりも相対的に下がっているかもしれません。
機能的に使い勝手の良いお金ではなく、物やサービスで対価を得ているのは、お金よりも高い、またはお金にはない何かしらの価値があるからです。お金の機能的な価値 (広く使える利便性) に対して、モノ・サービスに込められた情緒的な価値です。
具体的には、お金以上に感じる自分がやったことへの相手からの感謝の気持ち、作り手がモノやサービスに込めた想い・哲学・世界観です。モノ・サービスからこれらを直接的に実感できるからこそ、あえてお金ではなくモノやサービスを対価として受け取っているわけです。
お金が存在しない時代に単純に戻るのではなく、現在の技術や仕組みでお金を介さない新しいライフスタイルと、奥にある価値への認識 (価値観) の変化に注目しておきたいです。
まとめ
今回は、お金を使わない価値交換の事例を取り上げ、奥にある価値観について掘り下げました。
最後にまとめです。
お金とは
- 物々交換の非効率さ、わずらわしさや不便さを解消するためにお金が生まれた
- お金の役割は尺度・交換・保存
お金とモノへの価値観
- コンサルティングを実施し、対価としてお金以外のモノやサービスで受け取る事例がある。例えば寿司店へのコンサルティングの対価がお寿司
- この事例が意味するのは、お金の心理的な価値が、今までよりも相対的に下がっているかもしれない
- 注目したい奥にある価値観の変化は、お金の機能的な価値 (広く使える利便性) に対して、モノ・サービスには込められた情緒的な価値 (感謝や世界観) への再認識と評価
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