投稿日 2022/05/13

利益を度外視する 「調理専門学校のハンバーガー店」 に学ぶ、学びを活きたスキルにする方法


今回のテーマは、学びの機会をどうつくるかです。

おもしろいと思った調理専門学校の取り組みをご紹介し、そこからビジネスパーソンが学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 調理専門学校のハンバーガー店
  • 店は営業すればするほど赤字でも、やる理由とは?
  • 「知っている」 と 「できる」 の違い
  • 学びを実践する機会をつくろう

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

調理専門学校のハンバーガー店


ご紹介したいのは、あるハンバーガー店です。

ほぼ原価の赤字価格


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

調理・製菓などの専門学校を運営するバンタン (東京・渋谷) が、高級食材を使ったハンバーガーを割安価格で提供する飲食店を期間限定で開いている。

ミシュラン一つ星を獲得したフランス料理店 「sio」 (東京・渋谷) の鳥羽周作シェフが監修し、神戸牛やトリュフなど高級食材を使ったチーズバーガーを 「ほぼ原価」 (バンタン) の990円で販売する。

利益を度外視する狙い


高級食材を使用したハンバーガーを、食材の原価程度の価格で販売するのには狙いがあります。

再び記事から引用します。

フードメニューはチーズバーガーとポテト (110円) の2種類のみ。その代わり、飲み物も含めて 「ほぼ原価で楽しめる」 (同社) 。バーガーのパティは神戸牛 (原価300円) 、香り付けには黒トリュフ (同285円) 、卵は高知県産の 「土佐ジロー卵」 (同101円) を使っている。光熱費や人件費を考慮すると 「チーズバーガーの本来の販売価格は3270円」 (同社) になるという。

これを990円で提供するのは、「調理学校の生徒教育が目的」 (同) だからだ。調理から接客まで全て同校の生徒が担当する。「店舗の企画・運営を通じてオペレーションや接客ノウハウを学んでもらう」 (同社の細井信宏氏) 狙いだ。

ここでしかできない経験


バンタンのハンバーガー店の営業は短期的なものではなく、腰を据えた取り組みです。

バンタンはこれまでも生徒に現場経験を積んでもらおうと、1日限定のポップアップ店を企画してきた。ただ 「継続出店でないと得られないノウハウがあることが課題だった」 。例えば、長期的に人を呼び込む SNS (交流サイト) の運用や来店客の反応を受けたレシピ・提供方法の改善などは単日営業では難しい。

そこでゲンカイバーガーでは生徒自身が SNS などでの投稿内容を考え、来店につながるかを検討している。来店客には 「フィードバックシート」 に、味やサービスの率直な感想を書き込んでもらっている。

1月22 ~ 23日の初回営業では 「味の重なりが素晴らしい」 などの好意的な意見のほかに、「アツアツで出してほしい」 「袋からインクの匂いがする」 など厳しい意見も相次いだ。

 「指摘は改善につながり、良い感想はモチベーションにつながる」 (細井氏) 。開業以来、1日100食が完売するなど好評で、営業期間の延長や新商品の追加も検討しているという。

実際に生徒自らが店舗運営に積極的に関わり、一定期間で続けることによって集客だけではなく、改善や新商品の追加などからの顧客維持にも力を入れています。これは、専門学校の教室では得られない経験です。


実践の場をつくる


ハンバーガーをほぼ原価で提供できるのも、最初から飲食店で儲けようとはしていないからです。

光熱費などのお店の運用コストを考えれば、食材の原価のみでの提供は赤字です。しかしこの赤字をコストと見ずに、生徒たちへの教育費と捉えているわけです。

現場に出て実践の場で学ぶ機会を、お金を払ってでもつくっているのです。


 「知っている」 と 「できる」 の違い


実践での体験や学びが重要なのは、「知っている」 と 「できる」 にはギャップがあり、ここを埋めるためだからです。

専門学校は座学があり、新しい知識やノウハウを学びます。しかし習ったことを現場に出てその通りにできるかと言うと、そうとは限りません。また座学で得た情報や知識は、現場でそのまま当てはまらない可能性もあるでしょう。

以上のような 「現場に出て初めてわかること」 は実際にやってみないとわからないのです。バンタンのハンバーガー店の営業活動は、「座学で知っていること」 を 「実践の場でできること」 に変える取り組みです。


学べること


では最後に、今回の話から学べることを整理してみましょう。

一言で表現をするなら、学びは 「実践での学びは、時には自分でお金を払ってでも機会をつくろう」 です。

もちろんセミナーに参加したり、書籍やネット記事などでの学びから知識を得ることは大事です。一方で座学ばかりに偏ると、「知っていること」 は多くても 「できること」 が相対的に少なくなってしまいます。

今回のメッセージとして残しておきたいのは、学んだことを自らの手で活用する機会をつくる重要性です。

 「知っている」 を 「できる」 に変え、さらには 「 (やろうと思えば) できること」 を 「 (定着し自然と) やっている」 という状態まで目指すといいです (知っている → できる → やっている) 。


まとめ


今回は調理専門学校のバンタンが営業するハンバーガー店をご紹介し、学べることを見てきました。

最後にまとめです。

 「知っている」 と 「できる」 の違い
  • 学んだことをその通りにできるとは限らない。また座学で得た情報や知識は、現場でそのまま当てはまらない可能性もある
  • 「知っている」 と 「できる」 にはギャップがあり、ここを埋める工夫が必要

実践の機会
  • 座学ばかりに偏ると、「知っていること」 は多くても 「できること」 が相対的に少なくなってしまう
  • 学んだことを自らの手で活用する機会をつくることが大事
  • 「知っている」 を 「 (やろうと思えば) できる」 、さらに 「 (定着し自然と) やっている」 を目指そう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。