投稿日 2022/05/04

問題への問題提起。問題という言葉は使わず問題設定をしよう


今回は、問題設定の方法についてです。

ともすると曖昧な意味である 「問題」 という言葉への問題意識から、どうやって問題設定をするかを具体例を使って掘り下げています。

✓ この記事でわかること
  • 「問題」 という日本語への問題提起
  • 問題を3つに分解しよう
  • 具体例 (マーケティングの現場で起こった問題) 

この記事を読んでいただきたいと思うのはビジネスパーソンの方で、特に与えられた問題だけではなく、自ら問題設定をやって問題の解決を求められている方です。

問題設定の方法を具体的に知りたい、または事例として取り上げるマーケティングに興味のある方にも参考になればと思います。

ぜひ最後まで読んでいただき、お仕事での参考になればうれしいです。

問題への問題提起



日本語の 「問題」 について普段から思っている問題意識があります。

ビジネスの現場では、問題という言葉は人によって様々な意味で使われています。具体的には、

✓ 色々な 「問題」 の意味合い
  • 起こってしまった結果, 不都合な出来事
  • 事象が起きた原因
  • これまでの経緯

いずれも日本語では 「問題」 と表現できてしまいます。

問題設定をして原因を究明し解決策をつくるためには、関係者間で 「問題」 への認識がずれていると弊害があります。議論がまとまらず意思決定に支障をきたします。

だからこそ大事なのは、問題について 「今はどこの話をしているのか」 の認識合わせです。


問題の要素分解


そこでこの記事での結論であり提案は、問題を3つに分解して 「問題という言葉を使わずに問題設定をしよう」 です。

次のように要素分解をします。

✓ 問題の分解
  • 背景: これまでの経緯
  • 事象: 起こった結果
  • 原因: 事象の奥にある真因

このように分解すると問題状況の整理がしやすいです。

では具体例で見ていきましょう。


体重の増加



1つ目の例は身近な話からです。

自分の 「体重が増え続けている」 という問題に、3つの分解を当てはめてみます。背景・事象・原因の例は次のようになります。

1. 背景 (問題視した背景) 
  • 子ども達と実家に帰省し、高校生の時の写真アルバムを皆で見た
  • 懐かしく思い、子どもにとっては初めて見る昔の父親が新鮮に映った様子
  • 子どもがふと 「昔のパパはかっこよかったんだね」 との何気ない一言に、少しショックを受ける

2. 事象 (起こった不都合な出来事) 
  • あらためて当時の体重と今を比べると +20kg
  • 毎年の健康診断では特にここ1, 2年は増えていて前年比 +3kg

3. 原因
  • とりわけ平日の晩ごはんを食べ過ぎている
  • 食べすぎの要因は仕事へのストレス (休日は食べ過ぎることはない) 
  • 無意識のうちに食事が仕事のストレス発散の唯一の手段になっていた

ではもう1つの具体例は、ビジネスの例で当てはめてみます。


ブランドマネージャーの困りごと



マーケティングの例で問題の分解を見てみましょう。

あるブランドマネージャー (ブランドの売上と利益に責任を持っている) の場合です。

[分解 1] 背景


その会社のマーケティング部では、毎週の定例会で各ブランドの最新状況が共有されます。

通常は議論にはなりませんが、例えば新商品発売や商品リニューアル直後のタイミングでは、事前の売上予想と実際の売上状況を詳細に報告し活発な議論になることもあります。

[分解 2] 事象


自分の担当ブランドについて事前の予想よりも売上が低かった時に、ブランドマネージャーは要因を十分に説明できない時があります。

この事象が発生する頻度は高くないとはいえ (新商品発売やリニューアル後なので) 、これではブラマネとしての責任を果たしているとは自分でも思えず、なんとかしたい、解決する必要があると考えました。

[分解 3] 原因


要因は、ブランドマネージャーである自分のところに最新の売上や詳細情報が共有されるのが遅いからです。情報伝達が定例会議に間に合っていないわけです。

この要因は、関係各部署で独自に必要なデータを入手しているからでした。

具体的には、

✓ 各部署での活用データ
  • 営業部: 取引先の小売からの売上データ (POS) 
  • 宣伝部: 広告会社からのブランド認知率や好意度
  • 調査部: 調査会社からの購入者アンケートデータ

これらのデータや情報が、ブランドマネージャーに共有されるタイミングやデータフォーマットがバラバラだったわけです。

確かにブラマネは各データにアクセスできますが、体系立てての売上分解の構造化がされていません。それをやるためにはブラマネが自ら手を動かさないといけませんでした。

つまり問題の原因は、そもそもとして社内で見るべき指標が部署横断で統一されていないこと、そして皆が同じところを見にいく共通の場 (データダッシュボード) がない状況にありました。

誰かがそれを主導する必要がありましたが、結局のところはブランドの責任者であるブランドマネージャーがその役割を果たしていなかったわけです。


問題設定で大切なこと



ここまで2つの例から問題の3つの要素分解を見てきました。

問題解決のためには、どれだけ適切に問題設定ができるかです。その時に意識したいのは問題の解像度を高めることです。

今回ご紹介した3つの要素分解である 「背景」 「事象」 「原因」 に分けると、問題状況の整理がしやすくなります。

ぜひお仕事での問題解決の時に、よかったら参考にしてみてください。


まとめ


今回は問題設定の方法で、問題の要素分解についてでした。

最後にまとめです。

問題への問題提起
  • 日本語の 「問題」 について問題意識があり、ビジネスの現場では、問題という言葉には人によって様々な意味で使われている
  • 起こってしまった結果や不都合な出来事, 問題の原因, これまでの経緯
  • 関係者間で 「問題」 への認識がずれていると、議論がまとまらず意思決定に支障をきたす

問題の要素分解
  • 問題を3つに分解して 「問題という言葉を使わずに問題設定をしよう」 
  • ① 背景: これまでの経緯
  • ② 事象: 起こった結果
  • ③ 原因: 事象の奥にある真因

問題設定で大切なこと
  • 問題解決のためには、どれだけ適切に問題設定ができるか
  • 問題の解像度を高めるために問題を 「背景」 「事象」 「原因」 に分けてみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。