投稿日 2022/05/27

趣味でつながる 「クラブツーリズム PASS」 。過去にダメだったアイデアを復活させる方法

出典: KDDI

今回のテーマは、サービス開発です。

おもしろいと思った旅行会社のコミュニティサービスを取り上げ、サービス開発に学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 同じ趣味のテーマで学び合う 「クラブツーリズム PASS」 
  • サービス開発の経緯
  • 過去にダメになったアイデアを復活させるポイント

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

クラブツーリズム PASS


ご紹介したいのは、クラブツーリズム PASS という旅行会社が提供するコミュニティサービスです。


同じ趣味で学び合うコミュニティ


クラブツーリズム PASS は、クラブツーリズムが2021年10月に開始をした、旅行や趣味に関するオンラインサービスです。

登山や鉄道などの趣味ごとでクラブがあり、動画コンテンツをサブスクで見られます。旅行会社の社員が自ら動画制作を担っているとのことです。

サービス開発の経緯


以下は、クラブツーリズム PASS について書かれた日経新聞からの引用です。

19年6月、同社は顧客層の若返りに向けて、既存の旅行商品にとどまらない新規事業を模索していた。経営企画部に所属していた川鍋誠さんは、過去の事業にヒントはないかと振り返るなか、00年ごろに立ち上げた 「クラブ1000事業」 に目がとまった。

同じ趣味を持った人たちが集まり 「クラブ活動」 として旅行に出かける――。「生き生きとしたシニア層」 をテーマに登山や温泉など趣味ごとのコミュニティーを最大1千個作り、マニアックな旅行商品を販売するという目的のもと立ち上がった同事業。だが当時はネットが普及する前で、クラブ運営のコストがかさみ11年度に終了した。

 「テーマ自体は現在でも通用する。今なら SNS などを使って交流の幅を広げやすいのでは」 。川鍋さんは当初、オンラインを使った利用者同士のコミュニティーの場にしようと考え、検討を進めた。クラブ内で利用者が交流し、利用者自身が考えたツアーをクラブツーリズムが商品化して販売するというビジネスモデル。アイデアは徐々に具体化していったが、状況は新型コロナ禍で一変する。

オンラインによる趣味のコミュニティーは 「旅行以外の新たな事業の柱として確立する必要がでてきた」 (川鍋さん) と、クラブの目的を、旅行を前提としたものから 「出かけなくても楽しめるもの」 にシフトし、趣味に関する動画配信を中心とした学び要素を強めた。システム開発や顧客獲得に向けて KDDI と協力し、21年10月に始動した。

引用内にあった 「クラブ1000事業」 は、以前には時代よりも早すぎたサービスでした。クラブツーリズム PASS は社内にあったアイデアや知見から着想を得て、サービスとして復活させたわけです。

ではここからは、クラブツーリズム PASS からサービス開発に学べることを見ていきましょう。


学べること


クラブツーリズム PASS からの学びを一言で表現すれば、外部環境と顧客ニーズにおいて、変わったこと・変わらないことを見極める重要性です。

外部環境と顧客ニーズ


クラブツーリズム PASS のアイデアは、2000年頃に立ち上がった 「クラブ1000事業」 から始まりました。テーマで分けたクラブを最大で1000個作り、コミュニティごとにテーマに合ったマニアックな旅行商品を販売する事業でした。

しかし当時はネットが今ほど普及していなく、スマホや SNS がなかった時代です。技術的な制約やコスト面からもビジネスが成り立ちませんでしたが、サービス終了から10年以上が経ち、多くの人がスマホを持ち、SNS の利用も一般的になった外部環境の変化がクラブツーリズム PASS の開始の下地になりました。

生活者のニーズについては、同じ趣味を持つ人たちでつながりたいという望みは、昔も今も変わらないものです。むしろ今のコロナ禍において、より強まったと言えます。

クラブツーリズム PASS は、社内にあった以前はうまくいかなかった事業やサービスアイデアから着想を得て、外部環境の変化に適応し、今も変わらない顧客ニーズにうまくフィットさせたのです。

見極めと柔軟さ


クラブツーリズム PASS を立ち上げられたポイントは、過去と今で 「何が変わったか」 「何が変わっていないか」 を見極めたことです。サービスの前提となる外部環境と顧客ニーズにおいて、何が同じで、何が異なるかです。

もう1つ注目したいのが、サービスの中身に固執しなかったことです。以前の 「クラブ1000事業」 は、旅行サービスの販売が主目的でした。一方のクラブツーリズム PASS は、コミュニティ内で動画コンテンツにより学び合う場の提供です。

外部環境や顧客ニーズから、新しく 「旅行に出かけなくても楽しめる」 というコンセプトに変え、過去のアイデアに固執しなかったことも成功のポイントです。


まとめ


今回はクラブツーリズム PASS を取り上げ、サービス開発に学べることを見てきました。

最後にまとめです。

過去にダメだったアイデアを復活させる方法
  • 以前はうまくいかなかった事業やサービスアイデアをヒントにする場合は、外部環境と顧客ニーズで変わったこと・変わらないことの見極めが重要
  • 外部環境の変化に適応し、今も変わらない顧客ニーズを満たせるかがポイント


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。