投稿日 2022/05/29

顧客インサイトを解説。ブランドスイッチの裏にあった心のホットボタン


今回はマーケティングの 「顧客インサイト」 を取り上げます。

マーケティングを成功するために重要なのは顧客理解です。では何を理解するかと言うと、「顧客インサイト」 です。この記事では顧客インサイトについて具体例を使って解説しています。

✓ この記事でわかること
  • マーケティングの重要な 「顧客インサイト」 とは
  • 顧客インサイトが人を動かす
  • ブランドスイッチの具体例で解説
  • 選択理由の奥にある本音まで掘り下げよう

この記事を読んでいただきたいと思うのは、マーケターの方です。具体的にはこれからもっとマーケティング力を高めたいと思っていたり、マーケターとしてさらなる活躍をしたいと考えている方です。

他には、マーケティングに興味のある方や、経験豊富なマーケターの方にも参考になればと思います。

顧客インサイトとは


マーケティングで重要なキーワードが 「顧客インサイト」 です。

顧客インサイトとは 「顧客を動かす隠れた気持ち」 です。

普段は顧客自身は自覚していなく無意識下にあるものですが、そうだと気づかされれば買うなどの行動につながる奥にある感情です。「心のツボ」 や 「心のホットボタン」 という表現をします。

顧客インサイトは顕在化したニーズとは違います。マーケティングでは既に顕在化しているニーズに対応しているだけでは不十分です。顧客本人も気づいていないようなマーケター自身が顧客インサイトを見つけ、心の琴線に触れられるかが重要です。

ではここからは、顧客インサイトの具体例をブランドスイッチの話で説明しますね。


あるブランドスイッチの話


これは私自身の話ですが、普段から 「完全栄養食」 を食べています。

ある時に完全食を買おうと思った時に、以前から買っている商品 (ブランド A) から別の完全食 (ブランド B) に変更したことがあります。

その時に何が起こったかを順番にご説明すると、もともと買おうとしていたブランド A を 「完全食 ブランド名」 というキーワードから検索をしました。

しかし検索結果には別の完全食の商品 (ブランド B) が写真付きで表示されました。なんとなく興味を持ちもう一度ブランド B で検索をし直して商品ページに行くと、ラインナップに低糖質・高タンパク質の商品がありました。味もバニラとチョコレートの2種類があり、なんとなくでしたが食べてみたいと思ったのです。

当初は別の完全食を買うつもりは全くありませんでしたが、一度試してみようと思い直し、新しくブランド B を買いました。この瞬間、ブランドスイッチが起こったわけです。

なぜブランドスイッチをしたのか?


自分自身のことをあらためて掘り下げてみると、今まで食べていた完全食 (ブランド A) に、どこかちょっとした不満があったことに気づきました。

具体的には、1つは味です。実は最近になって味が少し新しく変わったのですが、自分にとっては変わる前の味の方が好みでした。とはいえ新しい味のことを嫌いとまでにはならない程度の変更でした。

味への物足りなさはもう1つあり、ブランド A は味が1種類しかなく、毎回同じだと知らず知らずのうちに飽きがきていたのも、今回のブランドスイッチをして気づいたことです。

2つ目の不満は、低糖質の商品はブランド A にもありましたが、低糖質には大容量 (1 袋 1 kg) はなく、買いにくさをどこかで持っていました。

以上のような自分では自覚できていなかった 「潜在的な不」 と、さらに奥にあった本音は 「新しいものを試してみたい」 という気持ちでした。これらが自分自身の顧客インサイトです。

顧客インサイトが起点だった


こうした気持ちは私自身も無自覚で、明確な不満にまでは至っていませんでした。

今回のブランドスイッチで、別の選択肢が現実的なものとして表れてようやく自分の気持ちに気づいたわけです。「自分 (顧客) を動かす隠れた気持ち」 でした。

まとめると、既存商品の無自覚な不満や物足りなさが知らないうちに蓄積していて、同時に新しいものを試したいという気持ちがどこかにあったわけです。


顧客インサイトまで理解しよう


今回の私のブランドスイッチは、いくつかのきっかけが重なり起きる確率の低いことが実際には起こりました。

具体的には、

✓ 今回のブランドスイッチの要因
  • 既存商品への無自覚な不満や潜在的な欲求
  • 検索行動
  • 新しい商品との偶然の出会い

今回のブランドスイッチは1つの例ですが、人が何かを選んだり買うものを決めるきっかけやプロセス、そして決め手は、時にはあいまいで直感的なものです。

マーケティングで重要なのは、表面的な選択理由、つまり相手に尋ねればすぐに言葉が返ってくるような理由だけではなく、奥にある本音 (顧客インサイト) までの理解です。顧客インサイトを理解し、インサイトを満たす訴求をやっていくのがマーケターの役割です。


まとめ


今回はマーケティングの 「顧客インサイト」 についてでした。

最後にまとめです。

顧客インサイト
  • マーケティングで重要なキーワード
  • 顧客インサイトとは 「顧客を動かす隠れた気持ち」 。普段は顧客自身は自覚していないが、そうだと気づかされれば買うなどの行動につながる奥にある感情
  • 顧客インサイトは顕在化したニーズとは違うもの

顧客インサイトまで理解しよう
  • 人が何かを決めるきっかけやプロセス、そして決め手は時にはあいまいで感情的なもの
  • マーケティングで重要なのは、表面的な選択理由 (相手に尋ねればすぐに言葉が返ってくる理由) だけではなく、奥にある顧客インサイトまでの理解
  • 顧客インサイトを理解し、インサイトを満たす訴求をやっていくのがマーケターの役割


ニュースレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスのヒット理由がわかり、マーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、今日から活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 2 ~ 3 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方には、レターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから無料登録をしていただくと、マーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。