投稿日 2022/05/11

秀逸なたとえ 「ブランディングは筋トレである」 から考える、ブランドの本質とつくり方


今回のテーマは、マーケティングのブランドです。

あるインタビュー記事で語られていたリブランディングの話が興味深かったので、ここから学べるブランディングについて解説しています。

✓ この記事でわかること
  • ブランディングとは日々の筋トレのようなもの
  • ブランドの本質、ブランドのつくり方
  • ブランディングと筋トレの共通点に学べること

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

 「ブランディングとは日々の筋トレである」 


今回の背景は、あるインタビュー記事を読んだ内容からです。

新潟県燕三条地区の家電メーカーであるツインバード工業が、創業70周年となる2021年11月にリブランディング (ブランドの再構築) を実施しました。

ツインバード工業の社長へのインタビューの内容が、日経新聞に掲載されていました。

―― 変化の激しい時代において消費者のニーズもだんだんと変わります。どう変化に対応しブランド価値を高めていきますか。

 「ブランディングはまさに日々の筋トレのようなものだ。

お客様の声を聞いて真摯に受け止めることの繰り返しだ。コールセンター業務は外部委託せずに本社、それも開発本部のすぐ近くに設けて社員が対応している。製品開発にすぐにフィードバックするためだ。

また東京・日本橋にある自社ビルでは、体験型のショールームやカフェを運営している。この10年間で、お客様の声をほぼ毎日シャワーのように浴びられる道具立てに投資してきた」 

発言の中にあった 「ブランディングはまさに日々の筋トレのようなものだ」 という表現が興味深かったです。

では、マーケティングにおけるブランドとは何かについて見ていきましょう。


ブランドとは


皆さんはブランドと聞いてどんなイメージを持つでしょうか?

ブランドの本質


結論から言うと、ブランドとは 「顧客からの望ましい感情が伴った商品やサービス」 です。これが私の一言のブランドの定義で、数式で表せば足し算の 「商品 + 感情 = ブランド」 です。

望ましい感情とは、好き・共感・満足・誇り・憧れ・応援したい気持ちです。こうした感情が深い商品やサービスほど強いブランドになります。

マーケティングでのブランドは 「お客さんの頭の中にある価値イメージや信頼」 と捉えます。

ブランド (Brand) に ing がつくのが Branding ですが、ブランディングとは、お客さんに商品やサービスへの望ましい感情を抱いてもらい、頭の中に価値イメージを持ってもらう働きかけです。

ブランドができるプロセス


ではブランドはどうやってできるかも見ていきましょう。

結論は 「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成」 です。

補足をすると、ブランドとは商品やサービスに感情移入がされているものでしたが、感情が形成されるのはその商品・サービスに関するユーザー体験からです。

具体的には次のようなものです。

✓ 商品やサービスのユーザー体験
  • 初めて知る
  • 興味を持って調べる
  • お店で買う
  • 商品・サービスを使う
  • 人に話をする (例: 良かったと推奨する) 

こうした1つ1つの体験とポジティブな感情が良い記憶として残り、価値イメージができるとブランドになるわけです。

ブランドは一朝一夕ではできません。地道に商品やサービスの1つ1つ良い体験を提供し、体験にポジティブな感情が伴い、商品・サービスへの価値イメージが形成されます。結果としてお客さんの頭の中にブランドができるのです。


ブランディングと筋トレの共通点


ここまでの内容を踏まえ、最初に取り上げた 「ブランディングは筋トレのようなものである」 に話をつなげます。

筋トレはやってすぐには効果は表れないですよね。翌日に筋肉痛になることはあっても、体重や体脂肪の数値に反映されたり、体型が目に見えて変わるのは数ヶ月単位で後のことです。地道に続けた先に結果が表れます。

さらに言えば、筋トレはただ闇雲に行っても思うような効果は出ません。目的をはっきりさせ、意図を持って各部位を鍛える方法を続けることが大事です。

このようにあらためて筋トレを捉えると、ブランディングと共通点があります。

✓ 筋トレとの共通点からブランディングで大切なこと
  • ブランド構築の目的を明確にする
  • お客さんの頭の中に持ってもらう価値イメージ (目指す姿) の具体化
  • 目的と戦略からブランド施策への落とし込み (体験を提供する打ち手) 
  • すぐに効果は得られなくても地道に続ける継続性
  • ブランド構築状況の定期的なチェック (例: ブランド診断調査) 
  • 一度ブランドができたとしても、そこでやめてしまえばブランドはなくなる

まさに 「ブランドは1日にしてならず」 であり、ブランディングは腰を据えて長い時間をかけて取り組むべきことです。


まとめ


今回は 「ブランディングは筋トレのようなもの」 という秀逸なたとえを取り上げ、ブランディングで大切なことを見てきました。

最後にまとめです。

ブランドの本質
  • ブランドとは 「顧客からの望ましい感情が伴った商品やサービス」 。望ましい感情とは、好き・共感・満足・誇り・憧れ・応援したい気持ち
  • ブランドはお客さんの頭の中にある価値イメージや信頼
  • ブランディングとは、お客さんに商品やサービスへの望ましい感情を抱いてもらい、頭の中に価値イメージを持ってもらう働きかけ
  • ブランドができるのは 「体験 → 感情移入 → 価値イメージ形成」 というプロセスから

筋トレとの共通点からブランディングで大切なこと
  • ブランド構築の目的の明確化
  • お客さんの頭の中に持ってもらいたい価値イメージ (目指す姿) の具体化
  • 目的と戦略からブランド施策への落とし込み (体験を提供する打ち手) 
  • すぐに効果は得られなくても地道に続ける継続性
  • ブランド構築状況の定期的な診断
  • 一度ブランドができたとしても、そこでやめてしまえばブランドはなくなる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。