投稿日 2022/05/17

漫画 e-Learning 「コミックラーニング」 と 「ヒカルの碁」 に学ぶ、ユーザーの裾野を広げるマーケティング


今回のテーマは、マーケティングコミュニケーションです。

おもしろいと思ったサービスを取り上げ、名作漫画との共通点からマーケティングに学べることを見ていきます。

✓ この記事でわかること
  • 漫画の e-Learning サービス 「コミックラーニング」 とは
  • 「ヒカルの碁」 (漫画) の魅力
  • 裾野を広げる漫画というフォーマット
  • マーケティングに学べること

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

e-Learning 「コミックラーニング」 


ご紹介したいのは、パーソルイノベーションが提供する 「コミックラーニング」 です (公式サイトはこちら) 。

コミックラーニングは、漫画形式の e-Learning (研修サービス) です。

パーソルイノベーションがリリースを出していて、新たに SDGs や LGBTQ など29点の研修コンテンツを追加したとのことです (リリース (2022年5月) はこちら) 。

追加された漫画のイメージ (出典: パーソル イノベーション


漫画というフォーマット


コミックラーニングの特徴は、漫画でわかりやすく学べることにあります。研修内容が専門的であったり受講者に馴染みがなくても、漫画であれば入りやすいです。

そのテーマについて初めて本格的に知るであろう受講者は、いわば 「初心者」 です。コミックラーニングは 「漫画」 と 「ビジネス研修」 というありそうでなかった2つの組み合わせから、研修テーマの裾野を広げ、理解を深められるおもしろいサービスです。

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漫画の 「ヒカルの碁」 


ここで話を変えるのですが、コミックラーニングで思い出したのは漫画の ヒカルの碁 です。


あらすじ


主人公は小学6年生・進藤ヒカルで、ある時に天才囲碁棋士の霊に取り憑かれるところからストーリーは始まります (怖い話ではないです) 。

天才棋士の名前は藤原佐為 (ふじわらのさい) で、平安時代に非業の死を遂げ、成仏できずにいました。佐為はヒカル以外の人には姿も見えず会話もできず、守護霊のように存在するキャラクターとして描かれます。

主人公のヒカルは囲碁には興味がありませんでしたが、佐為にせがまれて囲碁を打ち始めます。最初はヒカルは佐為の指示で囲碁を打ちますが、次第に囲碁の魅力を知り、佐為のサポートがなくても自分自身で打てるようになっていきます。

そこからヒカルは囲碁の腕をめきめきと上達していくというストーリーです。

おもしろく読める理由


ヒカルの碁がおもしろく読めるのは、読者は囲碁について詳しく知らなくても楽しめるところにあります。

囲碁のルール、勝つポイントや戦い方、漫画での局面を見ても戦況がどうなっているかわからなくても読み進められるのです。実際に私自身もそうでしたが、初めてヒカルの碁を読んだ時も囲碁のことはルールすら全く知りませんでした。それでも全巻 (単行本の23巻まで) を飽きることなく読めたんです。

囲碁のことを詳しくなくてもおもしく読めるとは、初心者でも楽しめるストーリー設計になっているということです。


学べること


では、ここまでの内容から学べることを掘り下げてみましょう。

コミュニケーション相手の見極め


ヒカルの碁では漫画の中で囲碁の詳しい説明はほとんどされません。最低限の用語やルールの注釈程度です。それよりも、キャラクター、ストーリー展開で読者を引き込みます。

マーケティングへの学びとして一般化すれば、コミュニケーションや訴求する相手の見極めです。詳しい上級者なのか、それとも初心者かによってアプローチを変える重要性です。

上級者には機能やスペックの詳細を伝えるのがいいでしょう。一方の初心者にはブランドイメージ、ストーリーや世界観を見せて共感してもらうアプローチを取ります。詳しい仕様を説明するのは、獲得したお客 (初級者) が中級者以上になってからでいいのです。

あえて商品やサービスの詳しい機能やスペック、仕様のことを説明するよりも、「こういう価値がある」 「こんなに便利」 「使い方はカンタン」 などの価値イメージ、ブランドイメージ、ストーリー、商品やサービスが持つ世界観を伝えるといいです。

伝え方の前に 「誰に」 「何を」 伝えるか


e-Learning のコミックラーニングとも併せて考えると、マーケティングコミュニケーションへの学びは 「相手の状況や理解レベルに合った見せ方や伝え方をしよう」 です。

ここで大事なのは、伝え方の前にやることがあるということです。

伝え方はあくまで手段です。重要なのは、伝え方 (How) の前に、誰に (Who) 、何を (What) を明確にすることです。この順番がポイントで、Who と What が定まってこそ適切な How に落とし込めるわけです。

コミックラーニングで言えば、コミュニケーションの対象がもし研修テーマに相当レベルで詳しい人であれば漫画形式よりも文字や表で詳細に伝えるほうがいいでしょう。

一方のコミックラーニングは、研修テーマに対して初心者である受講者 (Who) を対象にし、伝える内容 (What) も基本やこれだけは押さえておきたいことがあり、それを踏まえて漫画という伝え方・見せ方 (How) になっているのです。

学びとして言葉にすると当たり前に聞こえるかもしれませんが、コミュニケーションで大事なのは、伝えたい相手は誰で、何を伝えたいのか、その上で相手視点になった伝え方をすることです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。