今回のテーマは 「弱者の戦略」 です。
おもしろいと思った牛乳屋さんの販売事例を取り上げ、戦略の観点から学べることを解説しています。
✓ この記事でわかること
- まちの牛乳屋さんの超アナログ商法
- 弱者の戦略とは?
- 強者ではないプレイヤーの戦い方
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
まちの牛乳屋さんの超アナログ商法
こちらの記事を読みました。
アマゾンが熱視線 まちの牛乳屋さんの超アナログ商法|産経新聞
兵庫県稲美町の 「稲美 (いなみ) 乳販」 を紹介する記事です。
アマゾンも注目する稲美乳販
稲美乳販はアマゾンがかつて 「物流を引き受けないか」 と打診してきたほどの独自の物流網を持っていて、地域に密着した新規顧客獲得と既存客の維持を展開しています。
上記の記事によれば、稲美乳販は新型コロナウイルス禍の2021年度に約8億円の過去最高の売上高を記録したとのことです。
稲美乳販が扱っているのは牛乳やヨーグルトなどの乳製品だけではなく、お米や卵、生鮮食品など幅広く、長年培った宅配ルートとノウハウを駆使して独自の営業を展開しています。その秘密はアマゾンの対極をいくような 「超アナログ商法」 にあります。
骨の健康度チェックからの集客
自社開催のイベントから新規客の獲得をしている話が興味深かったです。
中高年層を中心に計約2万6千件の定期購買者を抱える。一定の解約はあるが、減った分を補って余りある新規契約者を獲得している。
それを可能にしているのが4年前から始めた 「骨の健康度チェック」 イベント。月に10 ~ 15回、営業エリア内各地の広場などにブースを出し、買い物客らの骨密度を測定し、数値の悪い客に牛乳を勧める。
「試しに毎日牛乳を飲んだ人は2カ月もすると、てきめんに数値が上がっていて、喜んで契約してくれます。途中でやめてしまった人も、久しぶりに測ってみると数値が下がっていて、再契約につながるんです」
定期的に同じ場所でイベントをやっていると、新規客が友人・知人も誘って来てくれるようになり、健康志向の高まりも相まって 「おもしろいほど新規契約がとれる」 という。
定期的に開催している 「骨の健康度チェック」 のイベント (出典: 産経新聞)
紙チラシ活用と御用聞き
また、独自の配達ルートを活用していますが、ここでもアナログな方法をやっています。
販売戦略が究極のアナログだ。牛乳などを配達する際、受け箱にチラシを入れる。客はチラシの申し込み欄に注文を書き込んで受け箱に入れるか、直接同社に電話で注文をする。
コロナ禍に見舞われた令和2年以降、たびたびイベント営業の自粛を余儀なくされたが、定期購買者への電話での 「御用聞き」 が巣ごもり需要と合致。さらに商品の取り扱い幅が広がり、今では約4千品目を扱っているという。
「こういう営業方法は、日々顔を合わせる地域密着型でないと成り立ちません。お客さんはうちを信頼していろいろなものを注文してくれるんです」
学べること
稲美乳販のアナログ商法から学べるのは、大手ではないプレイヤーの戦い方です。
弱者の戦略
人員や予算、大規模な設備を持っていない、この意味で 「弱者」 と表現しますが、弱者がどう戦うかのヒントが得られます。
弱者の戦略は 「強者にできないことを徹底すること」 が肝になります。
具体的には次の5つです。
✓ 弱者の戦略
- 局地戦: 戦う範囲を限定する
- 一点集中: 攻める場所や武器を絞る
- 接近戦: 相手に近づいて戦いを展開する
- 一騎打ち: 多くの敵と同時に戦わず、なるべく一対一の状況をつくる
- 陽動戦: 泥臭くゲリラ的な戦い方をする
稲美乳販の戦略
5つのポイントを稲美乳販のアナログ商法に照らし合わせると、局地戦、接近戦、陽動戦が当てはまります。
✓ 稲美乳販の戦略
- 局地戦: 販売する商圏エリアを地元のみに限定し、広域展開しない
- 接近戦: 独自の配達ルートを持ち、お客さんと直接のやり取りから御用聞きもする
- 陽動戦: 営業エリア内の広場などで骨の健康度チェックのイベントを定期的に開催
このような地域密着を徹底した戦い方 (商法) は大手にはできないことです。
自分たちの勝ち筋の見極め
では、稲美乳販から学べることを整理しておきましょう。
稲美乳販からの示唆は身の丈にあった戦い方を見極める重要性です。
強い者への憧れ、No.1 の大手になりたい気持ちは誰にでもあるでしょう。しかし現実は強者とは数では全体の中の一握りにしかいないプレイヤーです。
もちろん強者になりたいという思いは大事です。一位を目指す意思があるからこそ高みを目指すことができます。
しかし一方で、自分たちは客観的には強者でないにもかかわず自己認識を見誤り強者と同じ戦いをしても無理筋があります。「強者の戦い方ができる強者」 と 「強者の戦い方をしようとする弱者」 では、軍配が上がるのは前者の強者なのです。
ではどうするかと言うと、稲美乳販の事例で見たように弱者には弱者ならではの戦い方があります。
客観的な自己認識と外部環境 (市場にいる顧客や競合プレイヤーの状況) の理解から自分たちの戦い方をすることが大事です。
戦い方に唯一の正解はありません。人や他社の表面的な真似ではなく、自分たちにしかできない戦略を磨き勝ち筋をつくっていく重要性を稲美乳販は教えてくれます。
まとめ
今回は 「まちの牛乳屋さん」 の稲美乳販を取り上げ、戦略について 「弱者の戦い方」 という観点で学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
弱者の戦略
- 局地戦: 戦う範囲を限定する
- 一点集中: 攻める場所や武器を絞る
- 接近戦: 相手に近づいて戦いを展開する
- 一騎打ち: 多くの敵と同時に戦わず、なるべく一対一の状況をつくる
- 陽動戦: 泥臭くゲリラ的な戦い方をする
自分たちにしかできない戦い方
- 自分たちは客観的には強者でないにもかかわず、自己認識を見誤り強者と同じ戦いをしても無理筋がある
- 「強者の戦い方ができる強者」 と 「強者の戦い方をしようとする弱者」 では、軍配が上がるのは前者の強者
- 人や他社の真似ではなく、自分たちにしかできない戦略を磨いていこう
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