投稿日 2022/05/16

発売1年目の 「BODY STAR」 の誤算と手応えを、マーケティングのフレーム 「認知・配荷・好意度」 で分析するとわかりやすい話

出典: PR TIMES

今回は、マーケティングのフレームである 「認知」 「配荷」 「好意度」 を、スナック菓子の 「BODY STAR」 に当てはめて解説をしていきます。

✓ この記事でわかること
  • BODY STAR の発売1年目の誤算と手応えとは?
  • 売上を伸ばす3つの要素
  • 3つの要素で BODY STAR を分析

マーケティングの参考になればと思うので、よかったら最後までぜひ読んでみてください。

BODY STAR 発売1年目の評価


今回の背景は、あるインタビュー記事を読んだからです。

おやつカンパニー専務 / マーケティング本部長・髙口裕之が明かす 「BODY STAR」 発売1年目の通信簿と2年目の戦略|Marketing Native

ベビースターラーメンを販売するおやつカンパニーが、タンパク質訴求のスナック菓子 「BODY STAR」 を発売したのが昨年の2021年3月15日でした。


この記事は、おやつカンパニーの取締役専務執行役員でマーケティング本部長の髙口裕之さんへのインタビューです。BODY STAR の発売1年目の自己採点、誤算や手応え、2年目の戦略が語られていて、興味深く読みました。

髙口さんの BODY STAR への評価は60点とのことです。

マーケティングのフレームである 「認知」 「配荷」 「好意度」 で見ると、うまくいったこと、想定と違ったことが見えてきます。


売上を伸ばす3つの要素


マーケティングのフレームとしてぜひ覚えておきたいのは、売上を伸ばす要素としての3つである 「認知」 「配荷」 「好意度」 です。

✓ 認知
  • 商品やサービスをどれだけの人が知っているか
  • 単純な規模ではなく、想定するターゲット顧客のうちどれだけ知っているかというターゲット内認知が大事

✓ 配荷
  • どれだけのお店で売られているか
  • ターゲット顧客が買える機会の多さ。店頭だけではなく EC のネットも含む

✓ 好意度
  • ターゲット顧客が商品やサービスをどれだけ愛着を持っているか
  • 好ましい感情が伴っている商品・サービスほどブランドになっている


BODY STAR を3要素で分析


冒頭でご紹介した BODY STAR について、1年目の評価を 「認知・配荷・好意度」 で見ていきましょう。まずは店頭要因である 「配荷」 からです。

配荷


最初に見ていくのは1年目の誤算からで、BODY STAR は店頭への配荷に課題がありました。

先ほどの Marketing Native でのインタビュー記事から引用します。

想像よりハードルが高いと感じたことが2つあります。

1つは小売さんの導入で、広告の投下量が一定以上あるかどうかが極めて重要だとあらためて認識しました。テレビ CM を入れると、小売さんとしても前向きに扱ってくれやすいのですが、弊社の場合、大手企業のように高い GRP (Gross Rating Point = 延べ視聴率) の広告宣伝費を出稿できるわけではありません。

今回、小売店の配荷を拡大することも目的の一つとして、少量ながらにも広告投下を実施しましたが、投下量の少なさとコンセプトの新しさから小売さんの導入が想定以下に留まりました。

 (中略) 

スナック類の中には 「ポテトチップス」 という巨大すぎる存在がいます。

小売さんは基本的に坪効率商売ですから、同じ1平方メートルならなるべく老若男女多くの人に好かれやすい商品を置きたいのは当然です。もちろん、小売さんも BODY STAR のような商品が注目されていて市場もこれから伸びるだろうと肌感覚的には認識しているものの、まだ少し様子見をするところが想定より多かったと感じました。

テレビ CM が少なかったこと、BODY STAR が新しいコンセプトのお菓子であったことが、なかなか店頭でおいてもらえない要因でした。ここが想定よりもハードルが高く、自己評価が60点だった理由です。

では次に BODY STAR の1年目の評価について、手応えを感じたことを認知と好意度で見ていきましょう。

認知


まずは認知からです。

インタビュー記事で語られていたのは、

オフラインの店舗で購入したい方も大勢いらっしゃいます。我々に寄せられる問い合わせの多くも 「どこで買えるのか?」 「どこに売っているのか?」 です。

具体的な認知率については記事では言及はなかったですが、問い合わせの多くが 「どこで買えるのか」 だったことは、BODY STAR を知っている人は一定数はいることが伺えます。

先ほどの配荷の話で見たように、お店では売られていないところがやはり BODY STAR のボトルネックなわけです。

好意度


好意度については、まずはインタビュー記事で語られていたことを見てみましょう。

ソーシャルリスニングや意識調査をすると、主な購買層は 「スナック菓子を食べたいけど、健康管理やボディメイクにも興味があって、実際に食事管理にある程度取り組まれている方」 です。

定性的なデータですが、その方々には 「ボディメイクをする以上、スナック菓子は我慢しなければいけないと思っていたけれど、BODY STAR のような商品があった」 「スナック菓子を食べるなら BODY STAR」 と認識いただけたと考えています。

EC の場合、単価100円台のスナックを1袋だけ購入するのは難しく、我々もケースやボールという単位で販売しています。

 「ボディメイク中だけど、鶏の胸肉やササミだけでは飽きるからスナック菓子も食べたい」 と考えるターゲットの方々が、複数個入りの BODY STAR をケース買いし、リピート購入していただいているからこそ Amazon の売れ筋ランキングで安定的に動いているわけです。その傾向がはっきりと見えてきた点は大きな手応えになっています。

記事では、タレントの西川貴教さんの BODY STAR へのツイートが紹介されていました。


配荷が想定より少なく、消費者にとっては買える機会は限られているのは解決しなければいけませんが、認知と好意度で、特にブランドの観点からも大事な好意度が得られています。

BODY STAR の2年目に期待したいですね。


まとめ


今回は、マーケティングのフレームとして覚えておいて損はない 「認知」 「配荷」 「好意度」 (売上を伸ばす3つの要素) を、BODY STAR に当てはめて見てきました。

最後にまとめです。

売上を伸ばす3つの要素
  • 認知: 知っている人の規模。想定するターゲット顧客のうちどれだけ知っているか (ターゲット内の認知) が大事
  • 配荷: どれだけのお店で売られているか。ターゲット顧客が買える機会の多さ
  • 好意度: ターゲット顧客の商品やサービスへの愛着の度合い。好ましい感情が伴っているほど商品・サービスはブランドになっている

BODY STAR の1年目の評価
  • 1年目は60点
  • 課題は店頭での配荷。テレビ CM 露出の少なさと新しいコンセプトから、お店であまり置いてもらえなかった
  • BODY STAR の認知と好意度で、特にブランドの観点からも大事な好意度が得られた


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。