#マーケティング #採用
採用活動はマーケティング活動とよく似ています。
というのも、お客さんに自社の商品やサービスを買ってもらうためのマーケティングの考え方は、求職者に自社という働く場所を選んでもらう採用活動にそのまま適用できるからです。
今回は、マーケティングを応用し、優秀な人材から 「選ばれる会社」 になるための採用について掘り下げます。
マーケティングとは
あらためてマーケティングとは何でしょうか?
マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。活動全般と言っているように、マーケティングを広く捉えています。
お客さんから選ばれる理由をつくる
お客さんに選ばれるとは、商品を買ってもらえる、使ってもらえる、来店してくれる、指名されることです。こうしたことへの 「選ばれる理由」 をつくり、商品やサービスがお客さんから選ばれ続けることによって、商品は生き残っていけます。ひいては自分たちのビジネスも存続できます。
お客さんから自分たちが選ばれるのを偶然に頼るのではなく、ビジネスの文脈では自社商品やサービスが意図的に選ばれる確率を高めるのがマーケティングの役割です。
選ぶという行為の主体者はお客さんです。誰に、なぜ選ばれるのかを解像度高く理解することが重要になります。
マーケティング活動の全体像
マーケティング活動は広範囲にわたりますが、俯瞰すると次のような6つのステップをとります。
- 注力するお客さんを決める
- そのお客さんのことを理解する
- 困りごとを解決する商品を用意する (なければつくる)
- お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
- お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
- お客さんに他ではなく自社商品を選んでもらえる状態をつくる
企業の従業員の採用活動は、商品・サービスを買ってもらうマーケティング活動に共通する要素があります。
そこでここからは、6つのステップに採用活動を当てはめて順番に見ていきます。
採用で 「選ばれる会社」 になるための6つのステップ
マーケティングでは通常、自社商品やサービスを買ってほしい人や企業を注力顧客にします。
採用活動での 「注力顧客」 は求職者や採用候補者などの入社してほしい人材となります。
では、マーケティング活動の6つのステップに当てはめて、採用活動にマーケティング視点を入れて見ていきます。
[Step 1] 「誰に」 届けたいかを決める (顧客設定)
採用活動の成否を分ける最初の分かれ道は、誰にアプローチするかを明確にすることです。
マーケティングが 「誰をお客さんにするか」 から始まるように、採用活動もまた 「どのような人材を採用したいか」 を具体的に定義することからスタートします。
自社の事業戦略や組織文化から逆算し、どのような人と一緒に働きたいか、仲間になってほしいかを考えます。
スキルや経験といったスペックをリストアップするだけでは不十分です。その人がどのような価値観を持ち、どんなキャリアを思い描き、何に喜びを感じるのか。その内面にまで深く踏み込んで人物像を具体的に描くことが大事です。
たとえば急成長を目指すベンチャー企業であれば、「自律的に課題を発見し解決できる人」 「新しい技術への学習意欲が高い人」 「チームでの成果を重視する人」 といった具体的な人物像が浮かび上がります。
このように採用したい 「注力顧客」 を明確に言語化し、社内で共有することにより、その後のあらゆる活動の精度が飛躍的に高まります。
[Step 2] 採用候補者を深く理解する (顧客理解)
採用活動での 「注力顧客」 が決まれば、次はその人たちの頭の中をのぞき、相手の本音を理解する段階に入ります。マーケティングにおける顧客理解のプロセスであり、採用においては候補者のインサイトを把握することに相当します。
採用活動において理解したいのは、定めた採用候補者たちが仕事やキャリアに対してどのような 「困りごと」 というペインポイントを抱えているかです。今の職場にどんな不満や課題を感じているのかです。
「もっと裁量権を持って仕事がしたい」 「自分の成長実感が得られない」 「古い技術しか使えず将来が不安だ」 といった声が聞こえてくるかもしれません。あるいは、「給与よりも事業の社会性を重視したい」 「ワークライフバランスを整えたい」 といった価値観を持っている可能性もあります。
普段どのような情報源に触れ、どんな言葉に心を動かされるのか。転職を考えるとき、何を基準に企業を見ているのか。社員へのヒアリングや転職市場の調査を通じて、候補者理解への解像度を上げていきます。
こうした地道な理解の先にこそ、候補者の心に刺さるメッセージの種が眠っています。
[Step 3] 「選ばれる理由」 を用意する (商品開発)
候補者の理解が進んだら、その理解をもとに自社についての具体的な魅力、つまり採用市場における 「商品」 を用意します。マーケティングにおける商品開発のフェーズです。
採用活動における商品とは、会社そのものであり、働く環境・キャリアパス・企業文化、そしてそれらを伝える情報コンテンツを指します。
重要なのは、「うちの会社はこんなにすばらしい」 という一方的なアピールに終始しないことです。あくまで先ほどのステップで特定した候補者のキャリアでの課題感に寄り添い、課題にフィットするように自社の魅力を提示するわけです。
たとえば、候補者のこれまでの職場での置かれた状況が 「裁量権が小さく、成長実感が得られない」 ことだとします。それならば、若手社員が大規模プロジェクトのリーダーを任された経緯を語る社員インタビュー記事や、挑戦を奨励する社内文化を紹介する経営者のメッセージが、その人にとって価値ある 「商品」 となるでしょう。
もし、候補者のニーズに応えられる魅力が今の自社に不足しているのであれば、それをつくり出す必要があります。
情報発信の方法を工夫したり、働きがいを高めるための人事制度や福利厚生そのものを見直す。これもまた、採用における大切な 「商品開発」 なのです。
[Step 4] 魅力を届けて応募へと導く (プロモーション)
どんなに良い商品も、知ってもらえなければ存在しないのと同じです。
採用活動でも、用意した魅力をターゲットに届け、興味を持ってもらい、買ってもらう。すなわち採用選考にエントリーしてもらうための活動を展開します。マーケティングで言うところのプロモーション活動です。
アプローチの手段は、求人サイトへの出稿だけとは限りません。
オウンドメディアである自社サイト、他には採用ブログや note を通じて社員の生の声やリアルな企業文化を発信する。X や Instagram 、公式 YouTube 、LinkedIn などのビジネス SNS も活用して採用ターゲット層と直接的・継続的なコミュニケーションを図る。あるいは、社員と候補者が気軽に話せるミートアップのような採用イベントを開催するのも有効です。
また、社員の友人・知人を紹介してもらうリファラル採用は、信頼性の高い候補者と出会える採用方法です。
採用での 「プロモーション活動」 の段階でステップで大切なのは、用意したコンテンツを多様な採用候補者との接点で届け、候補者が 「この会社で働く自分」 を具体的にイメージできるように後押しすることです。
「ここでなら自分が活躍できそうで、次のキャリアを築けるかもしれない」 と実感できることによって、採用へのエントリーという行動への動機付けとなります。
[Step 5] 選考体験で価値を実感してもらう (顧客体験)
エントリーはゴールではなく、むしろ候補者との関係をつくる始まりです。
ここからは、候補者に自社の価値をしっかりと知ってもらい、体験してもらうフェーズに入ります。マーケティングの 「顧客体験 (Customer Experience (CX) ) 」 が、採用においては 「選考体験 (Candidate Experience)」 という採用プロセスでの体験に相当します。
候補者は選考過程を通して、これまで発信されてきた内容や、提供されたコンテンツの内容などの企業情報が本当かどうかを確かめることになります。
例えば、ウェブサイトに書かれていたビジョンは、面接官の言葉から感じられるか。社員インタビューで語られていた風通しの良さは、実際にオフィスを訪れたときの雰囲気から伝わってくるか。採用候補者は五感をフルに活用し、その会社や社員の本当の姿を見極めようとします。
面接官の真摯な態度、人事担当者からの迅速で丁寧な連絡、社員と交流する場でのオープンな雰囲気。これら一つひとつの見極めや体験が、候補者の入社意欲を左右します。
どれだけ多岐にわたる広報活動を展開しても、選考体験の質が低いと採用候補者に受け取られれば、それまでの努力は水泡に帰してしまいます。候補者一人ひとりにとって、心地よく、かつ有意義な選考の場を提供することが重要なのです。
[Step 6] 「この会社でずっと働きたい」 と選ばれる状態をつくる (関係構築・LTV)
採用活動で目指すのは、数ある選択肢 (働く会社) の中から 「ぜひこの会社で働きたい」 と候補者に選んでもらうことです。
マーケティングが一度きりの販売で終わらず、お客さんと末永い関係を築き、LTV (Life time value (顧客生涯価値) ) を高める活動であるように、採用もまた内定承諾が最終的なゴールではありません。
内定を出した後も、懇親会や社員との面談といったフォローによって、入社までの不安を解消し、迎え入れる姿勢を伝え続けることが大切です。
そして、入社後にはスムーズな立ち上がりを支援するオンボーディングプログラムを用意し、相手から 「この会社を選んで本当によかった」 と心から思ってもらう。こうした入社後の満足が、採用活動における成功の証となります。
なぜなら、満足して働く社員の存在そのものが次の採用における最高の広告塔となるからです。彼ら・彼女らが語る自社の魅力や、知人に自社を推薦してくれる行動 (リファラル採用につながる活動) が、これからも 「選ばれる会社」 であり続けるための強力な資産となるでしょう。
候補者や従業員にとって他にはない働く意義や価値を提供し、長く愛される関係を築くこと。長期的な視点こそが、採用競争を勝ち抜くためのカギを握ります。
まとめ
今回は、企業の採用活動にマーケティングの考え方を当てはめ、共通点から採用への示唆を考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 「誰に届けるか」 を決める。採用したい人物像を具体化し、社内で共有する
- 候補者の理解。ターゲットとする人材が、今の職場やキャリアにおいての悩みや課題感を抱えているかを知る
- 自社が選ばれる理由を用意する。働く環境・制度・情報コンテンツを候補者の課題感に合わせて設計する
- 魅力の発信と応募への促進。自社サイトや採用ページ、SNS 、採用イベントなどの多様な接点で自社で働く魅力を伝え、候補者に応募をしてもらう
- 良質な選考体験で価値提供。選考プロセス全体を候補者にとって価値のある体験とし、面接や社員との交流から自社の魅力を実感してもらう
- 長く選ばれる関係を築く。内定承諾がゴールではなく、入社後のフォローまで行い、社員満足度を高める。満足して働く社員の存在が、次の採用における選ばれる理由につながる
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