投稿日 2026/01/08

B リーグのバスケ観戦で学んだ、逆境を覆す 「風林火山」 の戦い方

#マーケティング #タイミング #風林火山

先日、バスケットボールの B リーグの試合をアリーナで観戦してきました。

地元チームを応援するアリーナで、大盛りあがりの試合の展開を見ながら感じたのは、ビジネスにも通じる戦い方でした。

今回は B リーグの試合観戦からの気づきを共有します。

名古屋ダイヤモンドドルフィンズ



※ サムネは 4Q に 3P シュートを 3 本成功させ MVP を獲得したマーフィー選手


観戦したのは、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ (名古屋 D ) の試合でした。

試合経過

2025 年 12 月 14 日、名古屋の 「IG アリーナ」 で行われた B.LEAGUE 第 14 節 GAME 2 となる、茨城ロボッツとの対戦です。

試合は名古屋 D が 89-68 で勝利しました。スコアだけを見ると大差のゲームですが、試合内容は終盤まで緊張感のある展開でした。

序盤から両チームは互角に得点を重ね、前半は茨城がやや優位に試合を進めます。名古屋 D はチーム全体の動きが噛み合わず、判定への不満も重なってフラストレーションを抱えた雰囲気でした。

それでも点差は最大でも一桁の 10 点未満に抑え、なんとか 3 点ビハインドで前半を折り返しました。

打開できない流れが変わり始めたのは第 3 クォーター後半です。名古屋はディフェンスの強度を一段階引き上げたことで、相手のシュート成功率が目に見えて落ち始めました。

ディフェンシブリバウンドを確実に奪い、速い展開で攻撃に転じボールが素早く前に運ばれはじめ、オフェンスのテンポが上がりました。齋藤拓実選手の得点を皮切りに逆転に成功します。

クォーターではその流れを一気に加速させ、MVP を獲得したアイザイア・マーフィー選手が効果的な 3 ポイントなど、4Q を 27-10 と圧倒しました。

苦しい前半でも踏みとどまり、流れを逃さずに主導権を握った名古屋 D が、力強い勝利を収めた一戦でした。

流れとギアチェンジ

勝利するチームであっても、常に主導権を握り続けられるわけではありません。

重要なのは、自分たちに流れが来ていない時間帯をどう過ごすかです。

今回の試合、名古屋 D は前半は流れが悪く、思うような展開ができていませんでした。しかし無理に主導権を奪いにいくのではなく、影響を最小限に抑えながら耐え続け、点差を一桁に保って 「自分たちの番」 が来るタイミングを静かに待ちました。

そして後半、流れが変わりはじめ、そこから名古屋 D は一気にギアを上げます。粘り強いディフェンスとリバウンドから速攻へと転じ、攻撃のスピードを高めました。ここで戦力を逐次投入で小出しにせず、一気呵成に攻め切ったことが試合を決定づけました。

試合展開に見た 「風林火山」 との共通点


観戦した試合での名古屋ダイヤモンドドルフィンズの戦い方には、戦国武将の武田信玄が掲げた 「風林火山」 の思想に通じるものがあります。

風林火山とは、「其の疾 (はや) きこと風の如く、其の徐 (しず) かなること林の如し、侵掠 (しんりゃく) すること火の如く、動かざること山の如し」 という言葉に象徴される戦略思想です。

状況に応じて、速さと静けさ、攻撃と我慢を明確に切り替えることの重要性を説いています。

山と林

この試合において、名古屋 D は前半、「山」 と 「林」 の戦い方をしていました。

流れが相手にあり、判定にも不満が出る中で、無理に攻め急ぐことはしませんでした。

オフェンスが停滞しても、ディフェンスの集中力を保ち、大崩れすることなく点差を最小限に抑え続けた姿は、「動かざること山の如し」 、そして 「徐かなること林の如し」 という表現が重なります。

派手なプレーはなくとも、静かに、しかし確実に試合から脱落しない戦い方を選んでいたのです。

風と火

そして第 3 クォーター終盤、流れが名古屋 D に傾き始めると、チームは一気に様相を変えます。

ディフェンスの強さが上がり、相手のシュート成功率が下がり始めます。ディフェンシブリバウンドを起点にした速攻が増え、ボールが素早く展開され、オフェンスのスピードが上がりました。この切り替えの速さは、「疾きこと風の如し」 です。

さらに最終クォーターでは、ここぞというタイミングで決まる 3 ポイントや連続得点によって、相手に反撃の余地を与えない展開をつくり出しました。確実に点数を重ねる強さが際立っていました。

守備から攻撃への連動が噛み合い、会場のボルテージも上がりチームとファンが一体となって攻めていく様子は、まさに 「侵掠すること火の如し」 という表現がふさわしい展開でした。

前半に 「林」 と 「山」 で耐え、後半に 「風」 と 「火」 で畳みかけた名古屋 D 。この切り替えがあったからこそ、試合は終わってみれば 21 点差という大きなスコア差になったのです。

強さとは、常に攻め続けることではなく、「攻めるべき時」 を見極め、来た瞬間に一気に踏み込めることなのだと、この試合は教えてくれました。

ビジネスへの応用


B リーグの名古屋 D の試合観戦から見えた風林火山の戦い方は、ビジネスにおいても実践的な示唆を与えてくれます。

重要なのは 「状況に応じて振る舞いを切り替えること」 、そして 「攻めるべき瞬間に一気に踏み込む覚悟と実行力」 を持つことです。

事業運営・プロジェクトマネジメント

まず、事業やプロジェクト運営の文脈で考えてみましょう。

ビジネスの現場でも、常に有利な流れが来ているとは限りません。

市場環境が逆風のとき、競合優位が取れていないとき、仮説検証が不十分な段階で無理にアクセルを踏めば、かえって傷口を広げます。

この局面は 「山」 や 「林」 のフェーズです。投資や拡大を抑えつつ、まずは顧客理解を深め、現場の声やデータを丹念に拾い、次に来る流れに備える。致命傷を負わない状態を維持することが大事です。

一方で、局面が変わり、兆しが見え、自分たちの流れが来そうだと判断した瞬間には、迷わず 「風」 と 「火」 に転じる必要があります。流れをつかめるときには、意思決定を速め、リソースを一気に投下し、主導権を取り切る覚悟が求められます。

マーケティング

次に、マーケティングの文脈で風林火山を捉えてみます。

マーケティングで陥りがちなのは、「いきなり火を使おうとすること」 です。大規模な広告投下や話題化施策を先行させる一方で、お客さんの文脈や心理までを十分につかめていないケースは少なくありません。

重要なのは、まずは 「林」 のように、静かに市場を観察したり、小さな施策やテストを通じて反応の兆しを探ることです。一時的な流行に振り回されることなく、「山」 のように不用意に動きません。

ここで蓄積された顧客理解や洞察が、「風」 と 「火」 を使うための土台になります。

勝ち筋が見えはじめた際には、一気に展開します。スピード感を持って認知を取り、競合が追随する余地を与えず、お客さんの記憶と体験を押さえにいく。この 「小さく試し、大きく勝つ」 という動きが、風林火山の思想をマーケティングに落とし込んだ姿です。

汎用的な学び


今回の B リーグのバスケの試合が教えてくれたのは、勝敗を分けるのは個々の能力差に加え、「流れをどう扱うか」 という戦略の差でもあるということです。

 「林」 「山」 におけるリーダーの役割は焦りの制御

耐えるべきときに耐え、動くべきときに一気に動く。その切り替えを意図的にチームで組織としてできているかどうかが、スポーツでもビジネスでも、結果を左右します。

自分たちに有利な流れが来ていない状況で無理にアクセルを踏めば、むしろ傷口を悪化させてしまうでしょう。

ビジネスにおいて、売上が悪い時や成果が出ない時、現場も経営層も 「何か新しいことをしなければ」 と焦りがちになります。バスケで言えば、無理な体勢からのシュートであるタフショットを乱発して、シュートが決まらず相手チームにリバウンドを取られて速攻を食らうパターンです。

 「山 (動かざること)」 という状況において、リーダーに求められるのは、現場の焦りを鎮め、既存のプラン (バスケなら粘り強いディフェンスからの速攻を展開する, 外からの 3 ポイントも積極的に狙う) を信じさせる力です。

名古屋 D がフラストレーションの溜まる前半を乗り切れたのは、ヘッドコーチやコート上のリーダー (名古屋の場合はキャプテンの今村選手や司令塔の齋藤選手など) が、「今は我慢だ、プラン通りでいい」 とチームを規律の中に留めたからこそでしょう。

 「風」 「火」 への転換点をいかに察知するか

観戦した試合では第 3Q 後半に流れが変わった瞬間がありましたが、ビジネスに応用する際、流れが変わりはじめた局面をいかに察知するかが重要になります。

ビジネスにおける例えばマーケティングでは、変化の兆しは 「小さな数字の変化 (例: CPA の低下, クリック率の急上昇, 特定の顧客層からの良好な反応, 好意的な口コミの発生) 」 です。

ビジネスでは 「林 (テスト) 」 はずっとやっているものの、「小さな火種」 を見逃してしまい、「火 (大規模な投資) 」 に移るタイミングを逸することがあります。いつまでも林を彷徨っているという状態にならないために、データ分析と現場の直観などの感度の高いセンサーが組織には必要です。

風林火山を実現するための 「エネルギーの蓄積」 

戦力を逐次投入するだけにとどまり、どこか様子見の姿勢が残っていては、自分たちの流れはすぐに失われます。これはランチェスター戦略などにも通じる軍事・経営の鉄則ですが、実行するにはリソース (資金・人の体力・気力) が残っていることが大前提です。

今回の B リーグの試合の前半の 「山」 のフェーズで、もし名古屋 D の選手がイライラして自暴自棄に陥ったり、無駄な動きでスタミナを浪費していたら、後半の 「火」 の戦い方はできなかったはずです。

ビジネスでも、逆境時に残業過多や無意味な飛び込み営業の強要で社員を疲弊させないことが、好機に転じた時の爆発力 (= 火) を発揮するために大事です。

まとめ


今回は、バスケットボールの試合から学ぶ、風林火山の戦略思想を取り上げました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 強いチームでも流れには逆らえない。逆境時は無理に動かず、被害を最小限に抑える 「山」 の姿勢でいる

  • 停滞期はただ何もしないのではなく、市場観察や顧客理解など基礎固めに徹する 「林」 の戦略期間と捉える

  • 逆風時のリーダーの仕事は焦りの制御。既存のプランを信じさせ、規律の中にチームをとどめることが攻めの流れでの爆発力を生む

  • 流れが来た瞬間には 「風」 のようにすみやかな意思決定と実行に転じ、戦力を逐次投入で小出しにせず、一気呵成に 「火」 のように攻め切る覚悟が勝敗を分ける

  • 反撃時のために組織のエネルギーを温存させ、局面が変わる兆候を見逃さないセンサー (データと直観) が、「風」 「火」 への転換タイミングを決める


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。