投稿日 2026/01/03

自分の道を信じることの大切さ - 青春小説 「成瀬は都を駆け抜ける」 が教えてくれる、自分らしく生きる勇気

#マーケティング #生き方 #本

他人の目を気にせず、自分がおもしろいと思ったことに一直線。そんな生き方ができたら、どんなに楽しいだろう――。

書籍 「成瀬は都を駆け抜ける (宮島未奈) 」 は、我が道を突き進む最高の主人公の青春小説シリーズの完結編です。


今回は、成瀬あかりという少女の物語が語りかける 「自分らしく生きるためのヒント」 を紐解いていきます。

シリーズ累計 180 万部、感動の大団円



2024 年本屋大賞を受賞した 「成瀬は天下を取りにいく」 から始まった成瀬あかりシリーズが、完結を迎えました。

全 6 編の連作短編で構成され、それぞれのエピソードで友情、挫折と再起、恋心、別れと再会が心温く積み重ねられていきます。

物語の舞台と主人公

主人公の成瀬あかりは、滋賀県大津市出身の女子大学生。膳所高校を卒業し、晴れて京都大学理学部の 1 回生となりました。

舞台は、千年の都・京都。新しい環境で成瀬あかりが掲げた目標は 「京都を極める」 こと。入学式に祖母の形見の和装で登場し、オリエンテーション初日には 「びわ湖大津観光大使」 のたすきを着用して教室で異彩を放つなど、大学でも相変わらず唯一無二の存在感を放ちます。

彼女の口癖は 「○○ を極めようと思う」 です。あかりは周囲の目など気にせず、自分がおもしろいと思ったことに一直線に突き進んでいく、我が道を行く天晴な主人公です。

京都での新しい出会いと挑戦

大学では、これまでのシリーズ同様、個性豊かな人々との出会いが待っていました。

  • 一世一代の恋に破れ、大学生活に生きる意味を見出せない同級生
  • 森見登美彦ファンが集う 「達磨研究会」 に入った地元京都 (北白川) 出身の男子大学生
  • 自分の居場所がついにできた簿記 YouTuber 「ぼきののか」 
  • 成瀬に恋焦がれる男子大学生 (厳密には大学入学前から成瀬あかりとは親交がある) 


成瀬あかりは彼ら・彼女らを巻き込みながら、時に励まし、時に道筋を示しながら、いつもの成瀬ワールドを炸裂させます。

達磨研究会が 「桃太郎電鉄」 をプレイしながら文学を語るという設定には、思わずクスリと笑えると同時に、「友情や仲間って、こんなに自由でいいんだ」 という温かさがあります。

そして最終話。幼馴染でお笑いコンビ 「ゼゼカラ」 を組んでいた、東京の大学に進学した島崎みゆきのもとに、あかりから突然の速達が届きます。それは、びわ湖大津観光大使として最後の任務を自分の代わりに担ってほしいことでした。

あかり、島崎、観光大使の相方・篠原かれんが合流し、京都市左京区の琵琶湖疏水 (そすい) 記念館から蹴上 (けあげ) を経て、びわ湖疏水船で京都から大津へと遡る旅へ。この最後の航路には、シリーズを彩ってきたこれまでの登場人物も一堂に会し、大団円を迎えます。

高校から大学へという人生の節目を通じて、成瀬あかりというキャラクターの青春がひとまずの完結を迎えるという感動的な構成です。

本書が伝える人生のテーマ


この小説は感動物語というだけにとどまらず、物語には、人生全体にも通じる、普遍的テーマが織り込まれています。

自分の道を信じることの大切さ

本書の大きなテーマは、他者の目を気にせず、自分の信念に従って生きることの強さと美しさです。

成瀬あかりの口癖の 「○○ を極めようと思う」 に象徴されるように、彼女は周囲の空気や他人の価値観に流されることはありません。

自分が強く興味を持ったこと、おもしろいと思うことに一直線です。

  • 入学式に和装で登場
  • びわ湖大津観光大使のたすきを大学や外出にも着用
  • 地元の滋賀県膳所の安全のために自主的に地域パトロールを実施
  •  「京都を極める」 という壮大な目標を掲げ、100 個の目標を着実に実行


周囲から変わっていると思われるかもしれないとは、あかりは決して考えません。自分が 「これだ」 と思ったことに迷わず飛び込む姿勢が、彼女の人生を豊かにしているのです。

興味が湧いたことには迷わずやってみる。人から変だと思われても、自分がおもしろい・やりたいと思うことにはまず挑戦してみる。そこから自分の道が見えてくる可能性がある。これが本書が伝える、重要なメッセージです。

作者・宮島未奈さんは 「成瀬らしく立ち振る舞うことで、結果として周りの人を救っていく」 と語っています。あかりが我が道を貫くことで、周囲の人々も 「自分らしく生きていいんだ」 と気づかされていく。それが成瀬あかりの物語の中心にあるテーマです。

人生のステージが変わっても、自分らしさは変えなくていい

高校生だったあかりは大学生となり、環境が大きく変化します。膳所から京都にも行動範囲が広がり、新しい仲間との出会いも増えます。

しかし、どれだけ環境が変わっても、軸となる成瀬あかりの 「らしさ」 は一貫しています。

  •  「○○ を極める」 という姿勢
  • 自分の信じた道を全力で走る行動力
  • 周囲を巻き込む不思議な魅力


これらは中学や高校時代から、もっと言えば幼少期から変わりません。むしろ、京都という新しいフィールドで、その 「らしさ」 がさらに輝きを増していきます。

環境が変わると、「新しい自分になろう」 「周りに合わせよう」 と思ってしまうものです。でも成瀬あかりが教えてくれるのは、環境が変わっても、価値観や行動の根底にある 「自分らしさ」 を見失わず、曲げないことの大切さです。

そうすることで、どんなライフステージでも 「自分の人生を生きている」 という実感を持てるはずです。あかりの一貫した生き方は、読者への勇気となるでしょう。

友情や仲間の多様性が世界を広げる

本作では、実に多様な人々が登場します。

恋に破れて未だ立ち直れず生きる力を失っていた同級生、森見登美彦ファンが集う 「達磨研究会」 のような一風変わったサークルに入った新入生、簿記 YouTuber で自己肯定感がようやく得られた大学生、テレビ取材を受ける母、成瀬に恋する男子学生。

さまざまなバックグラウンド、価値観、生き方を持つ人たちが成瀬あかりと出会い、あかりと関わることで、影響を受け、それぞれが自分らしさを見つけていく。彼ら・彼女らは、そして成瀬あかり自身も多様な人々との関係の中で、自分の世界が広がり、視野が広くなるのです。

大学という場は、高校までとは比較にならないほど様々な人が集まる場所です。本書はそうした多様性を肯定的に描き、「違う人たちとの出会いこそが、自分を成長させる」 というメッセージを伝えます。

失敗・挫折からの再起し、前を向いて歩み続ける

本書でも、順風満帆な成功物語だけではなく、失敗や挫折からの再起の物語も描かれています。

  • 失恋した同級生の物語
  • かつての自分の選択と行動への後悔
  • 成瀬自身の入院というアクシデント


しかし、誰もがそこで止まりません。挫折しても、失敗しても、前向きに歩み続けることによって、新しい人生を切り拓けることを本書は教えてくれます。

印象的なのは、成瀬が最後の任務をアクシデントで役割を果たせなくなるエピソード。計画通りにいかない状況に見舞われても、成瀬は親友にピンチヒッターを依頼し、無事に大団円を迎えます。

こうした柔軟さ、前向きも成瀬あかりの真骨頂です。人生は思い通りにいかないことだらけ。でも、諦めずに前を向いていれば、道は開けます

主人公の描かれ方とマーケティングへの示唆


成瀬あかりシリーズの構成において興味深い点は、主人公である成瀬あかり本人の視点では一度も描かれないことです。

多面的な視点で浮かび上がる主人公像

物語は常に、あかりの周りの人たち── 友人、家族、あるいはたまたま関わった人たちの視点で進行します。

  • ある場面では恋に悩む同級生の目から見た成瀬
  • 別の場面では達磨研究会メンバーの目から見た成瀬
  • さらに別の場面では母親の目から見た成瀬
  • 成瀬のことが好きな男子大学生から見た成瀬


今回の第 3 部で言えば、全 6 章あるので、6 人の異なる登場人物から見た 「成瀬像」 が描かれるというわけです。

読者は色々な登場人物の視点から、成瀬あかりという小説全体の主人公の人物像が次第にわかってきます。

全編を通して成瀬あかりの立場から描かれることはなく、実際に成瀬がどう思い何を考えているかの行動の奥にある心情はわかりません。あくまで他者の目から映る成瀬あかりの言動の描写です。

このように一面的に固定されることなく、多面的に描かれるからこそ、読者は成瀬あかりの魅力に引き込まれていきます。

複眼的な視点がもたらす深い洞察

小説での 「多面的な描かれ方」 は、小説としてのおもしろさを深めるだけでなく、ビジネスやマーケティングの視点でも示唆に富みます。

売り手がお客さんのことを様々な角度から捉え、複眼的に理解すること。消費者や顧客のことを 「こういう人 (または企業) 」 と決めつけず、柔軟かつ深く理解することの大切さです。

小説ではそれぞれの登場人物の視点から見える成瀬の姿は異なります。ですが、どれも成瀬あかりという人物の真実の一面です。

ビジネスでのお客さんも同じではないでしょうか。家族の前での顔と、仕事での顔は異なるはずです。ある状況では合理的な判断をするお客さんも、別の状況では感情的な選択をするかもしれません。

売り手が 「この顧客は ○○ タイプ」 と一面的に決めつけるのではなく、様々な角度から観察し、多面的に理解する。こうした複眼的な理解こそが、お客さんの真実に迫るカギになります。

成瀬あかりというキャラクターが、複数の人物からの違う視点から描かれることで成瀬像が立体的に浮かび上がるように、お客さんのことも多様な視点から捉えることにより、本当の姿が見えてくるはずです。本書は、そんなマーケティングの本質を、物語を通じて教えてくれます。

まとめ


今回は、書籍 「成瀬は都を駆け抜ける (宮島未奈) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 周りの目を気にせず、自分がおもしろいと思ったこと、興味があることに飛び込んでみる。そこから自分の道が見えてくる

  • 環境が変わっても、自分が大切にする 「価値観」 や 「自分らしさ」 は曲げなくていい。それが人生の軸になる

  • 多様な人との出会いを恐れず受け入れてみる。自分と違う価値観との接触が世界を広げ、自分を成長させる

  • 失敗や挫折は誰にでも起こる。大切なのは、そこで腐らずに前を向いて、「次どうするか」 を考えて歩み続けること

  • 人や物事を一面的に 「こうだ」 と決めつけず、多角的に捉える。複眼的な視点から多面的に理解を広げて深めることで本質を見抜く力を育てられる


マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 2 ~ 3 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。

ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから登録して、ぜひレターも読んでみてください!

最新記事

Podcast

多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信中。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。