#マーケティング #顧客理解 #価値創出
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
「マーケティング」 と聞いて、難しそう、自分には関係ないと思っていませんか?
今回は、今日からできるマーケティングのはじめ方を、具体例とともにわかりやすく解説します。
「マーケティング」 って、自分には関係ない?
いきなりですが、「マーケティング」 と聞いて何を想像しますか?
広告を出す、SNS でバズらせる、会社のホームページをリニューアルする。マーケティングには、難しい横文字やアルファベットの略語のオンパレード…。
このようなイメージが先行していると、マーケティングのことを 「うちの会社には関係ない」 と思ってしまうかもしれません。
話を広げると、たとえば DX も、結局は 「誰に」 「何を」 届けるかが決まらないと、ただのツールの導入で終わってしまいます。
今回は難しい話は一切しません。最後に 「マーケティングって、実はおもしろい!」 「今日からできそう!」 と、ワクワクした気持ちになってもらえればうれしいです。
そもそもマーケティングとは何か
もし社長や事業責任者から 「マーケティングを強化するぞ!」 という号令がかかった時、あなたの会社はどのような対応をとるでしょうか?
「手段」 から入る落とし穴
少なくない企業では決まってこんな話になります。
最新のマーケティングオートメーション (MA) ツールを導入しよう、Web 広告の予算を増やそう、インフルエンサーを探そう、SNS でバズる投稿を考えよう、見栄えのいいホームページにリニューアルしよう。
もちろん、これらは間違いではありません。しかし、これらは全て 「手段」 でしかありません。
料理に例えるなら、最新の調理器具や高級な食材を買い揃えているだけの状態です。でも、肝心の 「誰に、どんな料理を届けたいのか」 が決まっていなければ、最高の料理は作れません。
手段から始めてしまうと、最新の高価なツールを導入したけど使いこなせない、広告費をかけたのに全く反応がない、ホームページを外注して作り直したのにアクセスされないといったことが起こります。ここには、最も大切な 「本質」 が抜け落ちています。
では、マーケティングの本質とは何でしょうか。
マーケティングの本質
マーケティングとは、「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。活動全般と言っているように、マーケティングを広く捉えています。
お客さんに選ばれるとは、商品を買ってもらえる、使ってもらえる、来店してくれる、指名されることです。
こうしたことへの 「選ばれる理由」 をつくり、商品やサービスがお客さんから選ばれ続けることによって、商品は生き残っていけます。ひいては自分たちのビジネスも存続できます。
お客さんから自分たちが選ばれるのを偶然に頼るのではなく、自社商品やサービスが意図的に選ばれる確率を高めるのがマーケティングの役割なのです。
選ぶのはお客さん
そして大切な前提があります。
選ぶという行為の最終的な決定権は、常にお客さんにあるということです。企業側の論理だけで 「これが良い製品だ」 「この機能が優れている」 と主張しても、それだけではお客さんの心は動きません。
マーケティングの出発点は、常に 「お客さんの立場になること」 です。
誰に、どんな価値を届けたいのか。そしてそのお客さんはなぜ他の商品ではなく自社の商品を選んでくれるのか (あるいは選んでくれないのか) 。お客さんの立場に立って、深く、そして具体的に理解することが大事です。
マーケティングをはじめると、どんないいことがある?
マーケティングを始めると、ビジネスに大きな変化が起こります。
- 「運でたまたま売れた」 から、「狙って売れる」 ようになる
- 営業さんが疲弊しなくなる。「これぞ!」 という武器 (選ばれる理由) を持って営業できる
- お客さんが 「ファン」 になり、喜んで他のお客さんを紹介してくれるようになる
- 社員が 「自分たちの仕事はこれだ!」 と誇りを持てるようになる
- 「あの会社で働きたい」 と、会社のファンが入社を希望してくれるようになる
4 つ目と 5 つ目がイメージしにくいかもしれないので、具体例で補足しますね。
4 つ目の社員の意欲の高まりについては、たとえばスターバックスです。
スタバは 「サードプレイス (自宅でも職場・学校でもない第三の場所) 」 というコンセプトのもと、「コーヒーを通じて人をつなぎ、コミュニティを豊かにする」 というミッションを掲げています。店舗スタッフ (パートナー) はそのミッションに共感し、誇りを持って働いていると言われています。
5 つ目の会社の採用への効果ですが、「北欧、暮らしの道具店」 が好例です。
従業員の多く (一時期は 8 割とも) が、もともと熱心なファンのお客さんだったそうです。共通する大切にしたい価値観のもとで人が集まるので、採用に困らず、企業としても強くなります。
なぜ、あの会社はお客さんから選ばれる?
マーケティングとは 「お客さんが "わざわざ" 選んでくれる理由」 を見つける活動でした。
いくつか具体例を見てみましょう (私の地元である名古屋のケースをピックアップしました) 。
[事例 1] コメダ珈琲店
コメダは 「他のカフェチェーンに比べてコーヒーの値段が高い」 と言われることもあります。それでも、コメダは人気です。なぜなのでしょう?
コメダがお客さんに売っているのは 「コーヒー」 でしょうか?
いいえ、コメダが本当に売っているのは 「リビングのような、くつろげる空間と時間」 です。
「お客さんが本当に求めているもの」 を知り、「自社の強み (ふかふかソファ, 広い席など) 」 をかけ合わせる。これがマーケティングです。
[事例 2] 矢場とん
次の例は 「矢場とん」 です。名古屋めしの代表格のひとつが味噌カツです。矢場とんが提供しているのは 「味噌カツ」 だけでしょうか?
名古屋の地元の人が 「これぞ名古屋のいつもの味だ」 と感じる。その 「いつもの味」 が、名古屋めし全体への親近感につながり、最終的に 「やっぱり名古屋っていいな」 という 「地元への誇りや愛」 を実感させてくれる価値を提供しています。
「お客さんが心の奥で感じたいこと (地元愛への欲求) 」 を理解し、「自社の強み (変わらないいつもの味噌カツの味) 」 をかけ合わせる。これもマーケティングです。
[事例 3] BtoB メーカー
BtoC の一般消費者向けのビジネスだけではなく、BtoB の会社だって同じです。
これはあるメーカーの話です。お客さんは 「とにかく安い部品」 が欲しいと思っていた…、というわけではありませんでした。
顧客企業の担当者が本当に欲しかったのは 「絶対に生産ラインを止めない "信頼" 」 でした。その BtoB メーカーのこだわりは、「製品への安全性を追求し、非効率でも検品は 3 回やる」 という愚直さです。
また、この会社は製品をお客さんに販売したた後のアフターフォローも手厚くやっていました。来てほしいと言われなくても定期的にお客さんの元に足繁く通い、担当者との人間関係を築き、いざというときには早急に駆けつけました。
これらは当たり前と思っていましたが、競合他社はここまではやっていませんでした。
「お客さんの本当の悩み」 と 「自分たちの譲れないこだわり」 がガチッとハマった時、「だから ○○ 社さんじゃなきゃダメ」 という、強い 「選ばれる理由」 が生まれます。
お客さんからの 「選ばれる理由」 の見つけ方
マーケティングは 「センス」 がある人だけがやるものではありません。「お客さんを知ること」 から始まります。
[Step 1] お客さんのことを知る
難しく考えなくて OK です。例えば、次のようなことをやってみてください。
- 一番長く取引してくれているお客さんに、「なんでうちと取引してくれてるんですか?」 と率直に訊いてみる
- 営業さんの商談に、1 回だけ同行させてもらう
- 問い合わせメール、SNS のコメント、お客様窓口の記録、営業担当者の日報を、宝物だと思って読み返す
[Step 2] 自分たちの 「実はすごいところ」 を知る
自分たちでは 「当たり前」 でも、外から見たら 「すごい」 ことは山ほどあるはずです。
- 社長や創業者に 「なんでこの会社、始めたんですか?」 と (飲み会でもいいので) 聞いてみる
- 現場で一番長く働いているベテランさんに 「仕事で一番こだわってることは何ですか?」 と聞いてみる
- 製品が新発売された当時のニュースリリースがあれば読んでみる。そこには製品に込めた想いが書かれているはず
[Step 3] 顧客と商品の 2 つを結びつける
ここまでやってきたことをつなげます。
お客さんは、こんなことに困っていた (ステップ 1 ) 。うちは、こんな 「すごいこと」 をやっていた (ステップ 2 ) 。
2 つがつながった瞬間が、あなたの会社の 「選ばれるワケ」 が見つかる瞬間です。これがマーケティングの一番おもしろいところです。
マーケティングのはじめ方
マーケティングとは、ツールを導入する、広告を打つ、SNS を始める、会社のホームページをリニューアルすることからはじめるのではありません。
お客さんを知り、自分たちを知り、そして選ばれる理由を見つけること。お客さんと自社商品の縁を結ぶ 「仲人」 のような仕事です。
そして、ビジネスをやっていく上で忘れないようにしたいことがあります。
それは、「お客さんの理解にはどこまでいっても終わりがない」 ということです。
生活者環境やビジネスの世界は常に変わっています。その環境に身を置くお客さんも当然、変わっていきます。
仮に今の時点でお客さんのことをよく理解できたとしても、その直後から少しずつでも確実にお客さんは変化していきます。顧客理解ができたからといってそこでやめてしまうと、変わり続ける 「お客さんの実態」 と 「自分たちの認識」 のギャップが生まれてしまいます。
マーケティングは顧客理解に始まり、決して完璧になることはありません。だからこそ、お客さんの理解は続いていくのです。
この意味において、マーケティングとは 「終わりなき顧客理解の旅」 のようなものです。旅に終わりはありませんが、その旅をやめないことで、お客さんから選ばれ続ける理由をつくり続けられます。
ぜひ、誰か一人のお客さん (未顧客の想定顧客も含む) に話を聞くことから始めてみてください。
まとめ
今回は、「マーケティングは難しくない」 「実はマーケティングっておもしろい」 というテーマで、あらためて言語化をしてみました。
最後にポイントをまとめておきます。
- マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 であり、MA ツールや広告などの 「手段」 から始めるのではなく、「誰に・どんな価値を届けるか」 からはじまる
- 選ぶ決定権は常にお客さんにあるため、マーケティングの出発点はお客さんの立場になり、相手を深く理解すること顧客理解にある
- マーケティングが機能すると運ではなく狙って売れるようになる。営業が楽になるだけでなく、社員の誇りや採用にも良い影響が出る
- 選ばれる理由を見つけるには、「お客さんが本当に求めているもの」 と 「自社の強みやこだわり」 をかけ合わせることがポイント
- マーケティングは 「終わりなき顧客理解の旅」 。まずは一人のお客さん (未顧客の想定顧客も含む) に話を聞くことからはじめる
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 2 ~ 3 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。
ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから登録して、ぜひレターも読んでみてください!
