ラベル サイエンス/テクノロジー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル サイエンス/テクノロジー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
投稿日 2013/11/02

身体行動が先で、脳でそれに見合った感情が形成されるという 「脳の妙なクセ」 がおもしろい


脳には妙なクセがある という本をご紹介します。著者は脳研究者である池谷裕二氏です。脳の最先端の研究結果がわかりやすく書かれています。


投稿日 2013/10/12

世界の経営学のホットトピック 「両利きの経営」 がおもしろい




読み始めたら一気に読んでしまった本が 世界の経営学者はいま何を考えているのか - 知られざるビジネスの知のフロンティア でした。



エントリー内容です。

  • 本書の特徴
  • イノベーション研究で注目されている 「両利きの経営」
  • 知の探索は怠りやすい

投稿日 2013/07/28

ネットがもたらした 「注意力散漫な脳」 は進化?退化?




カジケンブログにある以下のエントリーを、興味深く読みました。

参考:テレビドラマって、もう一話15分で良いんじゃないの?|カジケンブログ


テレビドラマは15分くらいが最適?


エントリーの内容は、自分の SNS 上で話題になっていた NHK の連続テレビ小説 「あまちゃん」 についてでした。オンデマンドで見始めたを機に、テレビドラマは15分くらいが最適なコンテンツ時間なのではと考えるようになった、という内容です。

以下は該当箇所の引用です。

まず最初の取っ掛かりとして、15分だったらとりあえず一話ぐらいは観てみようかなという気になりました。YouTube も一つの動画の長さが最大10分なのでその感覚に近いかも。

逆に言うと、45分や1時間とかだったら観ていなかったと思います。実際今までのテレビドラマを観なかったのは、それが原因。

あと、一話の単位が15分だとちょっとしたスキマ時間で観れます。15分だからこそ 「あ、今ちょっと時間あるから次の回を観てみよう」 となる。それこそ友達に薦められた YouTube の動画をさらっと観るみたいな感じで。

これが45分とかだったら、例えば会社の昼休みをほとんど使っちゃうわけでかなりの決断になるし、この違いは大きい。
投稿日 2013/06/23

因果関係よりも相関関係:ビッグデータがもたらす3つのパラダイムシフト




ビッグデータの正体 - 情報の産業革命が世界のすべてを変える という本をご紹介します。



ビッグデータがもたらす3つのパラダイムシフト


本書で興味深かったのは、ビッグデータがもたらす3つのパラダイムシフトです。

  • 限りなく全てのデータを扱う。N = 全数
  • 量さえあれば精度は重要ではない
  • 因果関係ではなく相関関係が重要になる
投稿日 2013/06/22

書評: 2100年の科学ライフ (ミチオ・カク)




2100年の科学ライフ という本をご紹介します。



エントリーの内容です。

  • 本書の内容と特徴
  • 2100年の未来とは
  • 未来は不確実だからこそおもしろい
投稿日 2013/06/16

眼鏡型コンピュータの次はインターネットコンタクトレンズ




今回は、ウェアラブルコンピューターについてです。眼鏡型コンピューターや、期待しているインターネットコンタクトレンズについて書いています。

エントリー内容です。

  • ウェアラブルコンピューターへの期待
  • インターネットコンタクトレンズとは
  • レンズを媒体に脳とネットが直接つながる?

投稿日 2013/06/09

自動車 × インターネットという有望フロンティア




今回は、自動車の将来的な有望性を考えます。

携帯電話もパソコンも便利になったのは、インターネットにつながったからです。

ネットというオープンなネットワーク系に高速・常時・低コストでアクセスできるようになったことは画期的だったと思っています。

ネットアクセスを期待したいもので残っているのは、テレビや家電、そして自動車です。
投稿日 2013/01/26

ファブラボ4.0:人工物が生物のようになる未来世界




ロングテールやフリーミアムの概念を提唱したのはクリス・アンダーソンです。クリス・アンダーソンが次に注目しているのが 「ものづくり革命」 です。

ものづくり革命を紹介する本


Web の世界で起こった革命がモノづくりでも起こる、と言います。

関連する以前のエントリーはこちらです。

 「MAKERS」 書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?

クリス・アンダーソンの著書 MAKERS - 21世紀の産業革命が始まる は概念の説明が主でしたが、FabLife - デジタルファブリケーションから生まれる 「つくりかたの未来」 という本は、事例が中心です。MIT メディアラボの人気授業 「 (ほぼ) なんでもつくる方法」 体験記、世界各地のファブラボの活動など、ムーブメントの最前線が紹介されています。



ファブラボの4つの進化構想


Fablife という本が興味深いのは、未来のものづくりの進化構想について書かれているからでした。

本書のキーワードは 「ファブラボ」 です。ファブラボとは、デジタル工作機械をシェアし実際に顔をあわせてつくるための知識・スキルの交換・共有を行なう工房のことです。

このファブラボの進化構想の段階として、1.0 から 4.0 までの四段階があります。
投稿日 2012/12/30

「MAKERS」書評:Web世界で起こった革命がモノづくりでも起こる未来は明るいのか?

Web で起こったことがモノの世界でも起きる。それが21世紀の産業革命である。

こう主張するのは、かつてロングテールやフリーミアムの概念を提唱したクリス・アンダーソン氏です。「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」という本の主題です。

■ Web の本質

そもそも、Web の世界で起こったこととは何だったのでしょうか。最近のエントリーでも触れたように、ウェブの本質は「個の情報発信」「双方向性(ネットワーク)」です。

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題|思考の整理日記



ウェブ以前、あるいは普及前は情報発信をすること自体が今ほど手軽ではありませんでした。

それが、クラウドによるサーバーコスト低下、通信速度の向上、コンピューターやスマホ等の高性能かつ(一般ユーザーでも手に入る)安価なデバイスの普及で、ウェブが当たり前になり、個人レベルでの情報発信も容易になりました。これが1つ目の個の情報発信の背景です。

もう1つ、ウェブの世界で起こったことで大きかったのが、双方向性が実現したことです。つまりネットワークの構築です。

情報発信と合わせて捉えると、情報を発信して終わりではなく、双方向で情報のやり取りが可能になり、情報やアイデアはシェアされ、またたく間に拡散していきます。結果、ウェブ以降の世界は、情報量が爆発的に増えたのです。

■ Web で起こったことがモノの世界でも起きる

本書「MAKERS」の主題は、ウェブで起こったことがモノの世界でも起きることです。ここまで見た2点から考えると、モノの世界でも

  • 個人によるモノづくり
  • アイデア/設計/プロダクトの双方向性

が当てはまることになります。

個人によるモノづくり:本書では 3D プリンタ・3D スキャナ・レーザーカッター等のツールが紹介されています。従来は企業などの特定のプレイヤーでしか使われていなかったのが、今後はコストダウンやサイズのコンパクト化により個人レベルでも普及していきます。生産手段を個人が所有するようになる。プリンタで紙を印刷するようにモノをつくる、欲しいものは自分でつくってしまう、という状況です。

アイデア / 設計 / プロダクトの双方向性:ウェブの世界で情報がシェア・拡散していくように、モノの世界でもそれは起こります。すでにあるウェブに、モノの情報(アイデアや設計情報など)が載って双方向にやりとりされます。ウェブではソフトウェアのオープンソースの文化があるように、モノの設計情報やモノ自体がオープンソースとなって公開、シェアされます。

■ モノのロングテール、Web をベースにしたモノづくりのマネタイズ

個人によるモノづくりが普及していくと、ウェブの世界でも見られたロングテールがモノの世界でも起こるようになるとクリス・アンダーソンは言います。本書「MAKERS」から引用すると、
新しい時代とは大ヒット作がなくなる時代ではなく、大ヒット作による独占が終わる時代なのだ。

(中略)

ただ、「より多く」なるというだけなのだ。より多くの人が、より多くの場所で、より多くの小さなニッチに注目し、より多くのイノベーションを起こす。そんな新製品-目の肥えた消費者のための数千個単位で作られるニッチな商品-は、集合として工業経済を根本から変える。

(中略)

もの作りの世界を再形成することになるはずだ。

一方、著者の見方で興味深かったのが、新しいメーカーズ(もの作りプレイヤー)は、ウェブのフリーの恩恵をベースにモノでは収益を上げているという事例でした。

ウェブがなければ、新しいモノの発想やアイデアがあっても、それをつくって実現化させるのにハードルがありました。もしくは作ったとしても作っただけという「発明家」で終わっていました。しかし、今はウェブを活用すれば「起業家」になれると言います。

ウェブのフリーミアムを活用し、モノではマネタイズができるのでしょうか?

MAKERS を読んだ今の意見としては、モノの世界でもウェブ同様にマネタイズできて個人がモノ作りで食っていけるのは一握りではないかと思います。

■ モノづくり世界の「セミプロ vs プロ」

もう1つ思ったのが、モノの世界でもセミプロが増えっていった時に、セミプロ対プロはどんな競争の構図になるのかでした。

最近読んだ、こちらのエントリーで言われていることがモノの世界でも同じなのでは、という論点です。

[IT一般] セミプロに駆逐されるプロという構図|Nothing ventured, nothing gained.

この記事で書かれている内容は、

  • ネットの普及などにより、多くの人が情報発信するようになった。その中には今までは埋もれていた人(セミプロ)の知識や経験が発信され、支持されるようになる
  • しかし、アマチュアやセミプロの市場への参入というのは必ずしも良いことばかりでは無い気がする
  • なぜなら、その市場で今まで食べていたプロからするとコンテンツ流通価格の低下が進み、良質なコンテンツを提供するプロがいなくなるという事態に発展することも考えられるから

という懸念です。

もちろん、フェアな競争でプロとはいえセミプロに駆逐され、結果として市場が良質なものになるのであればよいと思います。しかし、プロが質の高いものを提供するモチベーションを阻害するような状況であれば、果たして大量のセミプロが存在する環境が本当に良いのでしょうか。考えさせられる問いです。

モノの世界でも、ウェブで起こったことが起こるとすると、セミプロ対プロの構図はできあがるはずです。もの作りのプロである企業が提案するプロダクトよりも、セミプロが自分でつくってしまうモノのほうが特定のニーズを持つ人には刺さることも十分考えられます。「そうそう、こんなのが欲しかった」と。

部分的には作り手と受け手のニーズが一致しウィンウィンですが、長期的に見れば大量のセミプロの市場参入によりプロが駆逐されるのでしょうか?それは本当に社会全体で見ると良いことなのでしょうか?まさにさきほどのウェブでの指摘と同じ構図です。

実際のところどうなるかはわからないし、そもそもまだ「モノの世界で大量のセミプロがマネタイズできていて市場参入している」というのも起こっていません。

★  ★  ★

「MAKERS」という本は読み応えのある内容でした。

クリスアンダーソンが主張する「モノの世界でもウェブで起こったことが起こる」は、そうだろうなと思います。その先の、本エントリーで考えたようなその先のロングテール現象、マネタイズ、セミプロ対プロ、など、色々な論点があり興味深い内容でした。


※参考情報
重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題|思考の整理日記
[IT一般] セミプロに駆逐されるプロという構図|Nothing ventured, nothing gained.
【レポート】「ブログやメルマガで食える人は本当に増えるのか?」、もしドラ作家・岩崎氏とブロガー小飼弾氏が一触即発の舌戦 (1) 川上氏「日本で唯一成功しているワールドワイドなプラットフォームは任天堂」|マイナビニュース


MAKERS―21世紀の産業革命が始まる
クリス・アンダーソン
NHK出版
売り上げランキング: 76

Kindle版はこちら


投稿日 2012/12/22

重宝しているGunosyから考えるネットの本質と課題

情報収集のツールは色々とありますが、その中でこれはオススメというのがGunosy(グノシー)です。ネット上のニュースやブログ記事を対象としたキュレーションツールで、気づけばほぼ毎日使ってます。

■Gunosyとは

Gunosyの特徴は以下の3つと思っています。
  • シンプルな仕組み:アカウントをつくるとユーザーそれぞれに最適化されたニュース記事を配信してくれます。アカウント登録はTwitter、Facebook、はてなブックマークのどれかでログイン。ピックアップしてくれるニュース記事等の閲覧方法は、GunosyのWebページを開くか、1日1回のメール配信の設定の2通り。Webページとメールには記事タイトルと本文見出しがリンク付で表示され、毎日更新されます。
  • 毎日のメール配信:メール配信というプッシュ型の通知が意外に便利だったりします。いつの間にかGunosyからのメールチェックが毎日の日課になりました。大抵のメール配信は来ること自体が面倒に感じるんですが、Gunosyはそれが全然ないんですよね。メール配信の設定は2つあって、何時に送ってもらうかの配信時刻と1回あたり何個記事を表示させるかの記事数を決めることができます。今のところは、朝5時配信で、10個記事と設定しています。欲を言えば朝のメール配信は3時とか4時も可能にしてほしいところ。
  • とにかく精度が高い:キュレーションツールの肝はどれだけユーザーごとに最適化できるか。Gunosyの精度は良いです。メールで10個の記事が送られてきますが、ほぼ1つ以上は気になる記事がありクリックしています。だいたい10個中、1~3個くらい。RSSに比べると打率はかなり高いし、良好な精度だからこそ毎日のメール配信も嫌じゃない。

■なぜGunosyの精度は高いのか

Gunosyを使っていての感触として、最適記事を抽出するのに活用されているのは、
  • 人気記事や話題性のあるもの:はてブ、ツイート、いいね!がたくさん付いているものなど、よくクリックされている記事がピックアップされる傾向がある
  • Twitterなどのログインツール内情報の利用:ツイッターであればユーザーのツイート内容などユーザー情報を参考に最適記事を選んでいる
  • Gunosyでの行動履歴:どの記事をユーザーがクリックしたかの情報が蓄積される。ユーザーがGunosyを使えば使うほどユーザーに最適化された記事が配信される仕組み
で、特に2点目と3点目のバランスが良く、結果的に高い精度が実現できていると感じます。

Gunosyを開発・立ち上げた東大大学院生3人へのインタビュー記事を見ると、「他のキュレーションサービスのほとんどは自分のSNSタイムライン上で『つながりのある人の間で話題になっている情報』を配信するものが多いのに対し、Gunosyはユーザーのソーシャルグラフではなく、あくまで自分自身の過去のポストやソーシャル上のアクティビティを分析対象として記事を選ぶ仕組み」というようなことが書かれています。(参考:「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype

自分のアクティビティが分析対象とは、Gunosy配信の中から気になる記事をクリックするほど精度が高くなっていくのがまさにそれです。クリックする=その話題に興味があると判断され、次回以降のニュース記事ピックアップに活かされる。使えば使うほどユーザーに最適化された仕組みになっていく。

以前のエントリーでキュレーションアプリのZiteについて取り上げましたが、Ziteも同じような感じです。こっちは配信記事が英語のサイトなので、英語の勉強にもなります。(参考:重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記

■フィルターバブルと転職サービスへの挑戦

上のインタビュー記事の中にあったことで注目したのが、Gunosyでは「フィルターバブル」についても考慮、課題設定としている点です。

フィルターバブルというのは、情報の偏りすぎることでユーザーに不利益をもたらすのではという懸念です。過度にキュレーションすることで、ユーザーの興味や嗜好に合致しない情報は全部排除されてしまいかねません。

でも、実は除かれた情報の中にはユーザーにとって有益な内容もあり得るわけで、あまりに選定しすぎるのは良くないのではという問題意識。イメージはユーザーが自分の興味関心だけの泡の中に閉じこもり、未知の外の世界を知る機会がなくなる感じでしょうか。(参考:情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記

だから時々そのバブルの外にも注目すべきと思うのですが、Gunosyではこの問題にどう対処するかはこれからの課題。要はキュレーションするのをどこまで絞るといいかのバランスで、ここは個人的にも注目しておきたい取り組みです。

もう1つ、Gunosyのサービスはニュース記事配信以外にもGunosy Careerという転職サービスもあります(正確には13年春のローンチを目標)。ニュース記事抽出/配信のデータマイニングやレコメンド技術を転職サービスに応用しようというもの。Gunosyの特徴である登録・設定・使い勝手のシンプルさや、高いマッチング精度を転職市場でも実現できるか。期待したいです。

■ネットの本質から考える今の「ネット上のバランスの悪さ」

何かと何かをマッチングさせる領域は、まだまだこれから発展するのではと思っています。マッチングとは単純化すればAとBの異なる要素をつなげることです。Gunosyでは、A:ネット上の情報、B:ユーザーをマッチングさせる仕組みだし、転職サービスのGunosy CareerはA:企業とB:人をマッチングさせようというもの。人と人をつなげるサービスはFacebookやLinkedinとかLineがあったり、情報と人を結ぶのはGoogleの検索サービスもそうですよね。

これらのマッチングの仕組みで共通しているのはネット上でつながっていること。インターネットが当たり前のように普及したことでネット上の情報量が爆発的に増えたけど、一方で増加する情報に追い付けていないのはマッチングだと思っています。必要な情報や人を探したり、つながるための仕組み。確かに何か知りたい時はグーグルの検索があるし、フェイスブックやラインで気軽に人とコミュニケーションが取れますが、まだ十分ではないように思います。

何が言いたいかと言うと、ネットは人やモノの情報が文字通り網の目のように入り組んだ世界ですが、ネットを構成する一つ一つのつながりが少ないor最適化されていなく、増える情報量に対してマッチングが不十分ということです。インターネットの本質って、人やモノという「個の情報発信」と「双方向性」なのではと思います。前者の情報発信はネットで実現できているけど、後者の双方向性、つまりマッチングとかつながりはこれからの領域。今はまだ情報量とマッチングのバランスが悪い状態です。だからこそ、Gunosyのようなテクノロジーでこれを解決するプレイヤーには期待したいです。

人や企業にはいろんなニーズがあり、中身は千差万別です。それらをどうつなげるか。ネットが進化してもう1つ上のレベルになるための課題と思っています。


※参考情報

Gunosy(グノシー)
「精度高すぎ」と話題のニュースキュレーション『Gunosy』は、どんな設計思想で作られているのか?|エンジニアtype
Gunosyが会社になりました。|Gunosy blog
あなたに最適化したニュースを届ける「Gunosy」が会社化|Itmediaニュース
重宝してるアプリziteをヒントに4層で考えるTVのパーソナライズ化|思考の整理日記
情報社会の未来:私たちはネットの世界に知らない間に閉じこもってしまうのか|思考の整理日記
Gunosy Career


投稿日 2012/11/10

Suica が実現した 「未来の当たり前」 というイノベーション




イノベーションとは何でしょうか?


イノベーションは未来の当たり前をつくること


現在はない 「未来の当たり前」 をつくることです。現時点やその時にはないものでも、イノベーションを起こす人には見えている 「未来」 や 「あるべき姿」 で、かつ人々はまだ気づいていないことを実現することです。

2012年現在、過去10年程度で人々の当たり前になった1つは、IC 乗車カードのスイカがあります。首都圏の朝の通勤時間帯では、ほぼ 100% に近い人が IC カードのスイカもしくはパスモを使って改札機を通っています。

ピッ、ピッ、と通勤客が滞りなく改札機を通過する当たり前になった通勤ラッシュの風景です。しかし、10~15年前は磁気式の定期券を、改札機に入れることが普通でした。


Suica はどのように開発されたのか


15年前にはなかったスイカは、その後に未来の当たり前になりました。

スイカはどのように開発されたのでしょうか。今回のエントリーでは、Suica が世界を変える - JR 東日本が起こす生活革命 という本から、スイカの開発秘話をご紹介します。
投稿日 2012/09/29

Google が 「自動運転車は5年以内に一般の人が利用できる」 との見通し (2012年9月) 。自動運転車は普及するのか?


グーグルの自動運転車


グーグルは2012年9月25日、研究を進めている自動運転車について 「5年以内に一般の人が利用できるようになる」 との見通しを示しました。


グーグルの見通し


以下は、日経産業新聞の記事からの引用です (2012年9月27日) 。

グーグルは2010年に自動走行車の開発に着手。これまでに30万マイル (約48万キロメートル) の走行試験を実施した。

この計画を担当するブリン氏は 「視覚障害者など自動車の恩恵に浴していない人の生活を改善できる」 と指摘。交通事故の減少や渋滞緩和にも効果があると説明した。

実用化に関連しては 「センサーの性能向上などが課題となる」 という。自社製造ではなく、自動車メーカーへの技術供与を検討している。
投稿日 2012/09/02

reCAPTCHA:認証の裏にある秀逸なアイデア




reCAPTCHA (リキャプチャ) というユーザー認証サービスがあります。このサービスの裏にあるアイデアが素晴らしいのでご紹介します。


reCAPTCHA の2つの役割


ウェブサービスへの登録時やブログにコメントする時に、以下のような認証画面が表示されます。reCAPTHA はスパムプログラムと人間を見分けるためのものです。

実際の認証画面は以下のイメージです。一度は使ったことがある方も多いでしょう。
投稿日 2012/08/25

Leap:優れたユーザーインターフェイスの1つの未来




今回のエントリーでは Leap (リープ) をご紹介します。

米 Leap Motion が開発した小型のモーションコントローラーです。百聞は一見なので、こちらの動画をご覧ください。


Introducing the Leap|YouTube


Leap の特徴と価格


Leap の特徴は、キーボードやマウスを一切使わずに、指先や手の動きでコンピュータを操作できることです。

空間上での操作がそのままディスプレイに反映されます。地図の拡大や縮小、画像の回転、指先やペンを使って細かい入力もできます。Leap Motion の About ページには、精度は既存のものより200倍、100分の1ミリの動きをも認識するとあります。 (2017年8月追記:リンク先が削除されていたので、こちらも削除しました)

技術的とともに驚いたのは Leap の価格でした。

Leap のサイトには70ドルとあります (2012年8月現在) 。今のドル円換算で5,500円程度です。

一般的に新しい技術が使われた端末は価格が高く、特に量産効果が期待できないリリース直後はなおさらです。しかし5,500円という価格設定は、イノベーターやアーリーアダプター層以外でも試してみたいと思わせる印象です。


資料作成と操作性


先ほどご紹介した Leap の紹介動画を見ると、可能性は色々と広がると思います。何かを操作する時に、どれだけ使いやすいかのユーザーインターフェイスは重要だからです。

例えば、プレゼン資料を作成する場合、最終的にはパワーポイントやキーノートを使います。

あらためて考えるとパワーポイントの操作性は非効率です。特に図解などのチャートを入れる時に、パワーポイント上で描くのと、紙やホワイトボードで描くのとでは効率が違います。

同じマトリクス図でもノートなら10秒でできるものも、パソコンでそれを作ろうとすると1分以上、細かい図の調整までやってしまうと5分や10分はすぐに経過します。

普段は当たり前のようにパワーポイントで作っていますが、このような無駄な時間は積みあがると結構な時間です。

なぜこのようなことが起こるかと言うと、ユーザーインターフェイスが悪いからです。パワーポイントの操作性やマウスとキーボードを使うという今のパソコンの主流である操作設計がそもそもよくないのです。資料作成のボトルネックです。

ちなみに、パワーポイントで企画書や報告書、プレゼン資料を作る時は、全体の構成を一度紙に書き、全体像のイメージを把握してからパワーポイントに入るようにしています。

いきなりパソコンに向かってパワーポイント作業から入ってしまうと、全体ストーリー構成よりも枝葉ばかりの作り込みに目が行ってしまいます。

もし、ノートに書くくらいの手軽さで、かつ手書きよりも洗練された図がパソコン上に作れ、調整してくれるような新しいインターフェイスがあればどうでしょうか。資料作成に使っていた 「作業」 時間が減り、その分を構成やストーリー・結論や提案を考えたりと 「思考」 時間にできるのです。


二次元操作のタッチパネル、三次元操作の Leap


モバイルの世界では、ボタンがたくさんあった従来型の携帯電話 (フィーチャーフォン) から、タッチパネル操作を前提とするスマートフォンが少しずつ主流になっています。2012年8月時点で、スマホの日本の普及率は5割程度です。

タッチパネルは直観的操作の代表的な例ですが、それでもまだ本当の直感的なレベルには達していません。タッチパネルという名前の通り、画面に触れて操作ができますが、画面は二次元なので操作も二次元の範囲を超えることはありません。

一部にシェイクしたり傾ける操作はありますが、タッチパネル操作は二次元です。それに比べて普段の私たちの動作は三次元なので、二次元と三次元の差の分だけタッチパネルの操作性は直感的ではありません。

今回ご紹介している Leap は、画面にタッチは必要なく空間上の動作をデバイスが高精度で認識します。つまり三次元の操作が反映されるのです。動画を見ただけで実際に Leap を使ったことはありませんが、より直感的な操作ができる印象です。

タッチパネルと違って、Leap は画面に触れる必要がないメリットはまだあります。画面を触れるということは、それだけ面上は不衛生になりがちです。空間上の動作だけでよいので、例えば医療現場では重宝されるのではないでしょうか。


優れたユーザーインターフェイスに見る 「おもてなしの心」


ユーザーインターフェイス (UI) というのは、人とデバイスをつなぐものです。

UI が使いやすいデザインになっているかどうかが、そのままボトルネックになります。何かを操作する時に、直感的な操作とはなるべくユーザーに使い方を考えさせないことです。重要なのは、UI の作り手側がユーザーへの 「おもてなしの心」 をいかに考え、提供できるかです。

Leap は手や指の動作からの入力、他にも音声認識があります。今後は表情認識からの入力もできるようになるかもしれません。

いかに人間の自然な動作がユーザーインターフェイスになるかです。今後のテクノロジー発展に期待しています。


※ 参考情報

Leap Motion
LEAP (About) (2017年8月追記:リンク先が削除されていたので、こちらも削除しました)
小型モーションコントローラー 「リープ」 、米ベンチャーが発表|日本経済新聞 (2012.5.22)
Introducing the Leap|YouTube
Controlling Computers With Hand Motion|WSJ Live

投稿日 2012/08/11

便利すぎるルンバ 780 を買って実感した 「ルンバの提供価値と新しい競争軸」


購入したルンバ 780 


先日、引越しをしました (2012年7月) 。


ルンバを購入


引越しを機に気になっていたルンバを買いました。

家庭用お掃除ロボットと言えばルンバという印象があります。先日の日経新聞記事にはルンバは国内で 70% 近いシェアとのことです (金額か個数かの何ベースかやデータソースは書いてませんでした) 。

参考:ロボット掃除機―アイロボット、シャープ (新製品バトル) |日本経済新聞 2012.8.9


買ったのはシリーズの最新で最高モデルのルンバ 780 でした (上記画像) 。公式サイトでは79,800円 (税込) ですが、ネットで調べてみたら45,000円くらいで売っていました。

翌日送られてきて早速使ってみました。まだ数回しかルンバで掃除していませんが、買ってよかったと実感できるほど便利です。
投稿日 2012/05/19

Withings Body Scale:かっこいいクラウド体重計の3つの価値

ここ最近はあまりモノを買わなくなったのですが、久々に満足したのが先月(2012年4月)に買った新しい体重計です。


クラウド体重計を購入


Withings Body scale です。Wi-Fi 機能を内蔵しているクラウド型体重計です。




体重や体脂肪量が測れるだけではなく、体重計から Wi-Fi 経由で測定データが自動的にクラウドへアップロードされます。データはグラフ化され、iPhone などのスマホアプリやパソコンからウェブブラウザで見られます。



投稿日 2010/11/03

宇宙の3つの常識がくつがえった

自分の中で今までは当たり前だと思っていた宇宙についての常識がありました。例えば、(1)宇宙にあって多くを占めるのは星や銀河、(2)宇宙の始まりを説明するのはビックバン理論、(3)銀河や地球など全てものがこの宇宙内に存在する、といった内容です。

しかし、宇宙についての本を読んでこれらの常識が自分の中で覆えりました。そこで今回のエントリーでは主に2冊の本、「宇宙は何でできているか」(村山斉 幻冬舎新書)、「インフレーション宇宙論」(佐藤勝彦 講談社)から、自分の常識がどう覆されたかを中心に書いてみます。



■この宇宙の96%を占めるもの

宇宙にある大部分の質量は地球や銀河などによるものだと思っていました。今回知ったこととしては、星と銀河の質量は宇宙のわずか0.5%にすぎないということです。では残りは何で占められるのか。宇宙の質量は以下のような構成となっているようです(図1)。

 宇宙の質量構成比

特に今回初めてその存在を知ったのは、23%を占める暗黒物質(ダークマター)と73%の暗黒エネルギー(ダークエネルギー)でした。

暗黒物質とは、我々地球を含む銀河を銀河たらしめるもの、すなわち、もし暗黒物質が存在しなければ銀河が今の形を構成できずバラバラになると考えられています。また、暗黒エネルギーとは、宇宙を加速膨張をさせているエネルギー。実は宇宙は現在も膨張し続けており、さらに言うとその膨張する加速度は大きくなり続けているようです。詳しい話は省略しますが、宇宙の加速膨張を理論的に説明するために考えられているのが暗黒エネルギーの存在なのです。



■宇宙のはじまりを説明するインフレーション理論

これまで信じていたことに、宇宙のはじまりはビックバンという現象の発生があります。ビックバン理論の概要は、宇宙の最初は「火の玉」であり、その後に膨張していく過程で次第に温度が下がりガスが固まって星が生まれます。そこから銀河が形成され現在に至るというものです。

しかし、実はビックバン理論では説明できないことがあります。「インフレーション宇宙論」の著者である佐藤勝彦氏によれば、例えば「なぜ火の玉からなのか?」や、「火の玉の前はどのような状態だったのか?」などであり、ビックバン理論では、特異点という「神の一撃」の存在を許すことにもなるようです。つまり特異点から始まった宇宙がなぜ火の玉になったかが説明できません。余談ですが、著者は物理学者として、神の存在を用いることなく物理法則だけで宇宙の創造を語りたいものだ、としています。

ここでインフレーション理論の登場です。まずインフレーション理論はビックバン理論を補完する理論です。インフレーション理論を簡単に説明すると以下のようになります。

インフレーション理論では、宇宙は真空のエネルギーが高い状態で誕生し、このエネルギーによって急激な膨張が起こりました。これは宇宙誕生直後の10のマイナス36乗秒後から10のマイナス34乗秒後までの極めて短い時間。宇宙が最初から火の玉として生まれてそのエネルギーで膨張したわけではなく、真空のエネルギーが宇宙を急激に膨張させることで相転移により熱エネルギーに変わる、この時点でようやく「火の玉」になったのです。

■宇宙はユニバースではなくマルチバース?

最も驚かされたのがこれです。宇宙は英語でユニバース、つまり、1つのという意味のユニ(uni)が使われていますが、宇宙は1つではなく多数存在するマルチバース(multiverse)という考え方です。

マルチバースの考え方では、今私たちが存在する宇宙は数ある宇宙の中のone of themでしかないということになります。マルチバースのイメージは下図のようになり、たくさんある1つ1つの球体のようなものがそれぞれ宇宙を表しています(図2)。


マルチバースのイメージ

マルチバースの考え方は、前述のインフレーション理論から説明されており、インフレーションの発生の順番で、親宇宙、子宇宙、孫宇宙、・・・、というように宇宙が次々できるとしています。無から生まれる宇宙は、私たちが存在する宇宙だけとは限らずいくらでも別の宇宙ができる可能性があるということです。

ただ、現在のところマルチバースというのは理論的に予言されているだけにすぎず、実際に科学的に証明されたわけではなく、あるいは観測されたものではありません。ましてや仮にその存在が証明されたとしても、この宇宙から抜け出し別の宇宙に行くことがどうやってできるのか、宇宙は膨張しているのでいずれ2つの宇宙が衝突するのか(あるいは重なるのか)、などと考え出すとなんともわけがわからなくなってしまいます。

■考えさせられたこと

「宇宙は何でできているのか」および「インフレーション宇宙論」を読んでいて感じたこととして、フロンティアというものはどれだけでも広がるということがあります。読み進めていく中で、1つ新しい理論ができれば新しい矛盾が生まれる状況が多くありました。何か新しいことを知れば次の疑問が生まれ、それにより自分には知らないことがまたでてくる、ということだと思います。

これは何も物理学者などの科学者だけによらないと思っています。例えば、何か新しいことを学んで知れば、それに関連する新しいことをさらに知りたくなる、という感じです。仕事も然りで、何か新しいことに挑戦すれば、次はもっと難しいことにチャレンジしたくなります。こういった知的好奇心やチャレンジ欲はいつまでも持ち続けたいものだなとあらためて思いました。


宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
村山 斉
幻冬舎
売り上げランキング: 21


インフレーション宇宙論 (ブルーバックス)
佐藤 勝彦
講談社
売り上げランキング: 5536


投稿日 2010/09/16

世界で増加する「遺伝子組み換え作物」と日本の食料安保

9月14日付の日経新聞朝刊一面に、非遺伝子組み換え作物についての記事がありました。


■全農が米国で非組み換えトウモロコシを安定調達へ

タイトルは、「非組み換えトウモロコシ安定調達 全農、米で契約栽培」。この記事では、全国農業協同組合連合会(全農)が遺伝子を組み換えないトウモロコシを米国で契約栽培し、安定調達につなげると報じています。

なぜ全農は非組み換えトウモロコシを調達する必要があるのでしょうか。同記事ではその理由を、米国では遺伝子組み換え品の作付けが急増しており、非組み換え品の調達難に陥りかねないと判断した、と書いています。その背景として、米国ではガソリンに混ぜるバイオ燃料用のトウモロコシ需要が急拡大しており、農家は栽培に手間がかからず多くの収穫を見込める遺伝子組み換え品に移行していると指摘。ちなみに、米国のトウモロコシ作付面積に占める非組み換え品比率は約1割とのこと。逆に言えば、全農がわざわざ一定量を確保するために調達を図らなければいけないほど、米国では非組み換え作物の栽培が減少していると言えそうです。


■増え続ける遺伝子組み換え作物

遺伝子組み換え作物(Genetically Modified Organism 以下GM作物)については、日経ビジネス2010.7.19の特集記事「食料がなくなる日」でも取り上げられていました。日本にいるとあまり実感はありませんが、世界的に見ると、GM作物の作付けは増加し続けており(図1)、2010年現在で世界25ヶ国、1億3400万ヘクタールとなり、1996年と比較し約80倍に拡大しているようです。

GM作物の作付け面積の推移

出所:国際アグリバイオ事業団(ISAAA)

では一体なぜ、これほどまでに増加しているのでしょうか。さらに言えば、消費者や環境活動家らの反対運動が続くにもかかわらずです。日経ビジネスの記事では、その理由をGM作物により農家の負担が軽減することと、収穫量の増加を挙げています。農家の負担というのは、例えば害虫に耐性のあるGM作物であれば農薬をまく回数が減り、その分の作業負担やコストも低減できます。また、枯れにくいGM作物であれば収穫増も期待できます。それ以外にも、気候変動の影響を受けにくい点も挙げています。このように、なぜGM作物を作るかについて、記事で取材したアメリカのある農家のコメントがそれを象徴しています。「儲かるからだよ」。


■GM作物をめぐる論争

一方で、前述のようにGM作物に対しては、健康や環境に悪影響があるのではないかという意見もあり、こと日本においては遺伝子組み換え食品への意見はこれが主流であるように思います。スーパーで売られている豆腐などは、ほぼ全て「遺伝子組み換えではありません」と記載されています。

GM作物についてWikipediaを参照すると、その論点となっているのは次ようなものがあるようです。「生態系などへの影響」、「経済問題」、「倫理面」、「食品としての安全性」など。そもそもとして、特定の遺伝子組換え作物の安全性を指摘するのではなく遺伝子組換え操作自体が食品としての安全性を損なっているという主張も見られます。


■食料安保と遺伝子組み換え作物

農水省のHPには食料安全保障について、次のような言及がなされています。「食料安全保障とは、予想できない要因によって食料の供給が影響を受けるような場合のために、食料供給を確保するための対策や、その機動的な発動のあり方を検討し、いざというときのために日ごろから準備をしておくことです。」

個人的には、この食料安保を実現するためには、食糧の入手先の多様化だと思っています。つまり、農水省が食料安保と結びつける自給率向上ではなく、輸入も含めた国内外からの食料の担保です。そもそも自給率などという指標を国の政策に採用しているのは日本だけであり、現在カロリーベースで40%ですが、例えば家畜用の飼料を国産のものに切り替えれば数値自体はすぐに上がるような指標です。40%だけ聞くと低いように感じますが、生産額ベースでは70%であり、自給率向上は自国だけで国民の食料をまかなうという考え方で、うがった見方をすれば食料政策において自国さえよければという鎖国をするようなものだと思います。

話を食料安保に戻すと、そのためにはGM作物も論点に入ってしかるべきだと思っています。農水省のGM作物の取組みを見てみると安全性評価を続けていますが(管轄は農水省以外にも環境省や厚生労働省など複数の省庁が絡んでいる)、国民の関心はあまり高くないように感じます。

農水省が表明するように、海外で生産された飼料用のトウモロコシや油糧用のダイズ・ナタネなどの遺伝子組み換え農作物はすでに輸入され利用されているのが現状です。世界ではGM作物が増加している中、本当に日本は今後も遺伝子組み換え作物=Noというままでいいのか。国民も含めた議論がもっとあってもいいように思います。


※参考情報

記者が見た米国農家の今 「人が食べる遺伝子組み換え作物を植え始めた」 (日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100716/215463/

遺伝子組み換え作物、事実上の勝利 安全性への懸念をよそに栽培農家は世界中で急増 (日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071214/143127/

遺伝子組み換え作物 (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E7%B5%84%E3%81%BF%E6%8F%9B%E3%81%88%E4%BD%9C%E7%89%A9#.E8.AB.96.E4.BA.89

食料自給率の部屋 (農林水産省)
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/index.html

「遺伝子組換え農作物」について pdf (農林水産省)
http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/information/pdf/gm_siryo.pdf


投稿日 2010/09/04

「性」による「生」のための「死」

書籍「ヒトはどうして死ぬのか -死の遺伝子の謎-」(田沼靖一 幻冬舎新書)には、次のような言葉が書いてありました。「性」による「生」の連続性を担保するためには「死」が必要である(p.147)

この本はアポトーシスという細胞の死亡プログラムの説明に始まり、「人はなぜ死ぬのか」という問いを生物学的に、そして哲学的に考察されていました。予想以上におもしろかったです。


■「性」による「生」

有性生物は、父親と母親から一組ずつの遺伝子をそれぞれ受け継ぎます。よって、子の遺伝子は父親のそれとも母親のそれとも異なる新しい遺伝子の組み合わせとなります。このメカニズムは別の見方をすると、「性」によって遺伝子のシャッフルが行われていると捉えることもできます。

このような有性生殖によって、子孫が新しい遺伝子組成を持つことのメリットはどのようなものでしょうか。それは多様性です。つまり、子孫の多様性により、ある子孫は環境の変化に適応でき、また、ウイルス等の外敵に対する抵抗力を持つことを意味します。これが、私たち人間を含む有性生物の「『性』による『生』の連続性を担保する」という戦略ではないでしょうか。


■「性」による「生」のための「死」

では、「生」のための「死」とはどういうことでしょうか。生きるために死ぬと言われると、一見すると矛盾しているようにも聞こえますが、書籍「ヒトはどうして死ぬのか」を読むとその意味がわかります。ここで言う「死」とは、細胞の死を指していて、「生」のための「死」が意味するのは、人間が生きるためには時として細胞は自ら「死」を選んでいるというものです。

今回取り上げている書籍「ヒトはどうして死ぬのか」によれば、我々の細胞の死は3つのパターンがあると説明されています。3つとは、アポトーシス、アポビオーシス、ネクローシス。簡単にまとめると下表のようになります(表1)。


このうち、アポトーシスとアポビオーシスは、遺伝子に支配された細胞の死としています。そして、「生」のための「死」を考える上では、アポトーシスがポイントとなります。またアポトーシスは本書のキーワードでもあります。

アポトーシスとは、細胞の自殺であると著者は言います。ではなぜ細胞は自ら死の道を選択するのでしょうか。本書では、アポトーシスには「生体制御」と「生体防御」という2つの役割があるとされています。

生体制御とは、個体(例えば人間)の完全性を保つ役割です。どういうことかと言うと、もし細胞が無限に増殖すれば私たちの身体は無限に大きくなりますが、そうならないのは個々の細胞が個体全体を認識し不要な細胞が自ら死ぬことで、人間としての個体を保っているのです。

もう1つの役割である生体防御では、例えばウイルスやガン細胞などの内外の敵が現れた場合、敵による異常をきたした細胞がアポトーシスによりその細胞を消去することで、個体全体を守る機能を果たしています。

ちなみに、私たち人間の成人の身体は約60兆個の細胞でできているそうです。うち、1日で死ぬ細胞数は3000億~4000億個ほどで、重さにして約200gとのことです。これにより、老化した細胞や発ガン性物質により異常となった細胞が消去されます。こうして私たちの身体では日々新しい細胞へと入れ替わっており生きているのです。つまり、人間の「生」のための細胞の「死」なのです。


■ヒトはどうして死ぬのか

ここまで、「死」を細胞のレベル、とりわけアポトーシスという細胞自らの死を見てきました。そこで、今度は「死を人としての死」を考えてみます。「ヒトはどうして死ぬのか」という本の特徴は、なぜ人は死ぬのかについて生物学的な側面と哲学的な側面の両方から書かれている点だと思います。

本書によると、動物の最大寿命と細胞上限分裂の回数は比例していると言い、それによると人間の最大寿命は120歳のようです。もちろんこれは理論上の数字であり、実際には紫外線・化学物質や暴飲暴食・ストレスなどの様々な後天的な環境・生活要因で、人間は最大寿命まで生きることができないのが現実です。

本書を読んで考えさせられたのは、「人はなぜ死ぬか」という命題についての哲学的考察でした。細胞のアポトーシスについてあらためて考えてみると、アポトーシスとは、ある細胞が自ら死を選択することで全体の細胞(例えば人間)が生きているという構図です。すなわち、個が利他的に振る舞うことで全体は利己的な存在でいられるのです。

では個を人間と捉えると、全体は何になるのでしょうか。それは人間の集合である人類と捉えることができると思います(なお、本書では全体を地球にしていますがこの記事の文脈上、全体を人類としました)。細胞はアポトーシスにより全体である人を生かしました。これと同じことが、人間と人類においても当てはまるのではないでしょうか。


■生きるとは何か

これは、自分の死生観とも言えることですが、生きることとは次の世代に何を残すかだと思っています。残すというのは、直接的には子孫を残すことであり、間接的には自分の経験や考え・意見、あるいは生き様を他人の心の中に残すことだと考えています。

子孫を残すことだけであれば、例えば産卵後すぐに死んでしまう鮭などと同様に生殖期間だけでその役割を果たすことができます。しかし、人間は生殖期を終えてもその後も何年も生きることができる動物です。この意味を考えたとき、前述の間接的な役割もまた大きいのではないでしょうか。これが、人間が社会の中で生きることの意味でもあるように思います。


ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)
田沼 靖一
幻冬舎
売り上げランキング: 2687


投稿日 2010/07/14

ソフトバンク孫社長の「300年ビジョン」から考えたこと

少し前の話になりますが、6月25日にソフトバンクの孫正義社長による「ソフトバンク新30年ビジョン発表会」が実施されました。

発表会はユーストリームでも中継され、多数のブログでも関連記事がエントリーされています。発表内容は、孫さん自身が「僕の人生の中で、おそらく今日が一番大切なスピーチ」「30年に一度の大ぼら」と発言したこともあり、なかなかおもしろかったです。今回の記事では、発表内容の気になった部分や考えたことを書いてみます。



■「新30年ビジョン」の概要

発表の目的は、この先30年のビジョンを示すことで、「ソフトバンクをどんな会社にしたいのか」「どういう思いで事業を行っていきたいのか」の発信および共有だと思います。

アジェンダはソフトバンクの、①理念(何のために・どんなことのために事業を行っているのか)、②ビジョン(この30年先の人々のライフスタイル展望と、それに対する取り組み)、③戦略(成し遂げたいことをどのように行うか)でした。



■おもしろかった300年ビジョン

「新30年ビジョン」の発表の中に、この先の300年に対するビジョンがありました。個人的にもおもしろかったなと思う部分です。ちなみに、発表会の主題は「30年ビジョン」なのに、なぜ300年ビジョンも取り上げているかというと、孫さん曰く「30年というのは300年の中での1つのステップに過ぎない」という位置づけで、まずは300年という大きな方向性を定めてから30年を考えるという趣旨だからです。発表資料スライドには、「迷ったときほど遠くを見よ」とも書かれていました。

300年ビジョンの中で興味深かったのは、次の項目です。
・ コンピューターが人間の脳を超える
・ 脳型コンピューターについて
・ その他の技術進歩 (クローン、人体間通信(テレパシー)など)

以下、それぞれについて簡単に記しておきます。


○コンピューターが人間の脳を超える

コンピューターでの計算には二進法が用いられています。コンピューターがトランジスタ化され、このトランジスタがくっつく・離れるという原理です。一方、脳細胞にあるシナプスでは、シナプスがくっつく・離れるというこれも二進法と捉えることができます。つまり、コンピューターと脳細胞は二進法という同じメカニズムを持っているのです。

我々人間の大脳には約300億個のシナプスがあると言われています。コンピューターのワンチップの中に入っているトランジスタの数は増加し続けており、いつかはこの300億という数字を超えます。ソフトバンクの試算では、それが2018年に起こると言います。ここでは、2018年という時期は大きな意味はなく、いずれトランジスタの数が人間の脳が持つ300億のシナプスの数を超えるということが重要だと思います。つまり、コンピューターのワンチップが、人間の脳細胞の能力を超える能力を持つ可能性があるのです。



○脳型コンピューターについて

孫さんは脳の定義を、「データとアルゴリズムを自動的に獲得するシステム」としました。ここでいうデータとアルゴリズムはそれぞれ、知識と知恵を指しています。そして、人間の脳の働きとしては、知識(データ)、知恵(アルゴリズム)、感情(ゴール)の3つがあると説明しました。孫さんは、300年以内にこの脳の働きをするコンピューター、つまり脳型コンピューターが出現すると言います。


○その他の技術進歩 (クローン、人体間通信(テレパシー)など)

300年ビジョンで紹介された技術にはクローンがありました。これ以外にも、テレパシーのような人体間通信についても言及しています。脳と通信するチップを持ち、そのチップが他人の持つチップと無線で通信する仕組みです。すなわち、チップが媒体となり脳と脳が結ばれるようになります。



■300年ビジョンから考えたこと

目の前の仕事など普段とは全く異なる、ちょっと大きな視点で考えることは結構楽しかったりします。


○人間を超える脳型コンピューターと人類の存在意義

知識、知恵、感情の3つのうち、人間が現在のコンピューターに勝っているのは知恵、感情の部分だと思っています。知識、すなわち保存できるデータ量や、計算速度はもはやコンピューターには絶対に勝てません。しかし、知識と知識を紐づけたり、情報の体系化、仮説立案、新たな発想・アイデアの考案など、この領域はコンピューターに対する人間の脳の強みと言っていいものです。

しかし、仮に孫さんの言うように、コンピューターが知識、知恵、感情を持ち、その能力で人間を超えた時、果たして、人間の強みは何になるのでしょうか?

人間は地球上ではあらゆる生物の頂点に立っている存在です。高度に発達した知能とそれに基づく科学技術によるところが大きいと思います。しかし、「脳型コンピューター > 人間の脳」ということになれば、これまでの人間が頂点にいるという図式が変わってしまうのではないでしょうか(脳型コンピューターを持つロボットが人間などと同様の「生物」として扱っていいかどうかの議論はさておき)。

もしこのような状況になったとすると、これこそが「人類史上最大のパラダイムシフト」だと思わずにはいられません。少し大げさかもしれませんが、これまで当たり前のように君臨していた頂点を譲る時、人類の存在意義があらためて問われるような気がします。


○クローンとテレポーテーション

技術的には例えば髪の毛一本から人間の複製ができてしまうと言います。孫さんがクローンについて触れた時にふと思ったのが、クローン技術を応用すれば人や動物の移動手段に使えそうだなということです。例えば、A地点からB地点に移動したい場合に、
・ A地点で採取したDNA情報をB地点へデータ送信
・ そのDNAデータからB地点でクローンを瞬時に作製
・ クローンの作製が確認できれば、A地点のクローン元を消去する
という感じで、ほぼ瞬間移動の完了です。要はPCの中でやっているファイルとかの「カット(切り取り)&ペースト」を、クローン技術を使って現実世界で行なうイメージです。

もちろん、現在各国の政府が人間のクローンだけは禁止していることからも、それ以上にこの話は全くの非現実的な考えです。何かの不備で移動に失敗すれば怖すぎる話ですし、PC内でファイルが壊れるのとは訳が違います(でもたぶん、DNA情報が残っているので、クローンでの復元ができそうですが)。



■最後に

科学技術はともすればもろ刃の剣だと思います。人や動物を殺す道具にもなり、地球を破壊してしまう力も持ちます。一方で、現在の我々には解決できないであろう大地震などの自然災害、未知のウイルス、テロ、隕石、など、科学技術はこれらのものを解決する可能性も持ちえます。孫さんの言う「情報革命」により、もっと便利な世の中になるかもしれません。

変化の激しい世の中ですが、時々は上記の30年・300年のような大きい視点で考える機会を持ちたいなと思います。



※参考資料

ソフトバンク孫正義社長による「新30年ビジョン」書き起こし Part1
http://kokumaijp.blog70.fc2.com/blog-entry-87.html

ソフトバンク孫正義社長による「新30年ビジョン」書き起こし Part2
http://kokumaijp.blog70.fc2.com/blog-entry-88.html

「新30年ビジョン」プレゼン資料 (PDF)
http://webcast.softbank.co.jp/ja/press/20100625/pdf/next_30-year_vision.pdf

動画&プレゼン資料 (ソフトバンクHP)
http://webcast.softbank.co.jp/ja/press/20100625/index.html

USTREAMでの動画アーカイブ
http://www.ustream.tv/recorded/7882795


最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。