今回のテーマは 「新しいビジネスのつくり方」 です。灯台の下に光を当ててビジネスに変える方法という話です。
おもしろいと思ったパン製造メーカーの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
✓ わかること
- パン製造メーカーが生産管理システムの外販に成功
- 「他社も同じ課題があるのでは?」 という発想から
- 灯台の下に光を当てる新規事業開発
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
パンメーカーの生産管理システム
ご紹介したいのは福井のパン製造メーカーの事例です。
パン製造のオーカワパン (福井県坂井市) は自社向けに独自開発した製造管理システムの外販を始めた。
現場の作業者が工程ごとにかかった時間や原材料を入力し、人件費を含めた製品の粗利を 「見える化」 する。自社内で利益率向上などの効果が確認できたため。すでに大手食品メーカーなどに導入されており、2024年度にも事業部を子会社化し本格展開する。
管理システムのプロダクト名は 「Aralead (アラリード) 」 といいます。
Aralead
Aralead の特徴はというと、
同社が21年までに開発した 「Aralead (アラリード) 」 は、現場の作業者が手元のタブレット端末を使い、作業の開始、終了時間や原材料の使用量、不良品の個数などを随時入力する仕組み。
入力端末には作業時のチェックリストも表示されるほか、写真を撮って出来栄えの記録も簡単にできる。トラブル発生時にはボタン一つで各所に警告が出せる。
作業の進捗はリアルタイムで現場のモニターにも掲示され、現場も経営層も製造が予定通り進んでいるか一目で確認できる。生産量やかかった人員から製品ごとの粗利益が自動で計算されるため、経営層はデータを製品の改廃や新規開発、繁忙期の労働資源の配分などに生かせる。
自社での成果をビジネスに発展
注目したいのは外販を始めたという Aralead を売りモノにまで発展させたことです。2024年度を目処に事業部を子会社にして独立させるほどです。
ここまで至った経緯を見てみましょう。
当初、生産管理などは手書きの票に書き込む方式で、データ化もされていなかった。経営指標も売上高が中心で、薄利多売の商品が増える要因となっていた。
新システム導入で、各部門間でのデータ共有が容易になったほか、1袋あたりの原価が分かるため、営業や開発に力を入れるべき商品の選択がしやすくなった。オーカワパンでは同システム導入後、利益率が19年比 4% 、売上高を総労働時間で割った労働生産性が 15% 改善した。
同様の課題を抱える食品事業者が多いと見込み、システム自体の外販も始めることにした。あんパンで有名な老舗の木村屋総本店 (東京・江東) を含め、4社ですでに使われている。現在は 「アラリード事業部」 で4人が開発と販売を担当しているが、24年度にもシステム販売専門の子会社を立ち上げて本格展開する。
学べること
Aralead の事例は新規事業を立ち上げるアプローチの1つとして学びがあります。
自社の問題解決という実績
Aralead はもともとは自社内で使われていたパンの製造管理システムでした。
この時点ではお客さんへの売りモノとしては想定していなかったはずで、社内の非効率な生産管理のやり方を改善しコストを下げて利益率を上げることを目指していました。
新しいシステムの導入により各部門間の情報共有がスムーズになり、原価データから注力すべき商品が選びやすくなる効果もでました。さらに労働生産性や利益率が向上するという実績が生まれたのです。
売りモノにできるという着想
オーカワパンは自分たちと似た状況で同じ課題を抱えている会社は他にもあると考えました。
ここに今回の記事でお伝えしたいポイントがあります。自社でやっていること、持っているものは 「売りモノにできないか」 という発想です。
自社で使われているとはマーケティングの視点で捉えれば、「お客さん」 は社内メンバーだということです。お客さんを社外の別の会社という人にシフトし、同じように価値を提供できれば売りモノになるわけです。
灯台の下に光を当てる
自分たちが当たり前のようにやっていること、使っているものは、実は世の中全体で見れば先進的なことかもしれません。
ビジネスの種は意外に社内に眠っていたりします。オーカワパンのようにすでに実績があれば説得力のあるビジネスになる可能性を秘めています。
灯台下暗しになっていないかという視点で灯台の下に光を当ててみるといいです。
まとめ
今回は、パン製造メーカー (オーカワパン) の製造管理システム 「Aralead」 の外販の事例から、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 自社の実績をビジネスに変える方法
- 自分たちが当たり前のように社内でやっている・使っているものは、実は世の中全体で見れば先進的なことかもしれない
- ビジネスの種は社内に眠っていて、灯台下暗しだったりする
- 自社の仕組みや実績を 「売りモノにできないか」 と発想してみよう。同じように価値を提供できれば売りモノになり新しいビジネスを展開できる
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