投稿日 2023/03/07

モス創業者の教えに学ぶ、マーケティングの本質と顧客理解


今回はモスフードの創業者に学ぶ 「マーケティングで大切なこと」 という話です。マーケティングの本質と顧客理解について見ていきます。

✓ わかること
  • モス創業者の言葉
  • マーケティングとは
  • データからお客さんを理解する方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

モス創業者の教え


こちらの記事を読みました。

攻めるモス、マーケターが捲土重来 - 値下げの失敗で得た教訓|日経クロストレンド
※ 記事タイトル内の 「捲土重来 (けんどちょうらい) 」 とは一度失敗したり敗れた人が再び力を盛り返し、反撃に転じることです

以下は記事のリード文です。

2022年に創業50周年を迎えた 「モスバーガー」 が好調だ。展開するモスフードサービスの売上高は直近3期連続で前年を超え、22年3月期は過去最高の784億円を記録した。

近年の勢いをマーケティング面で支える千原一晃氏が語る。

この記事の中にあったモスフード創業者の言葉が興味深かったです。マーケティングとは何かです。

かつて、創業者の櫻田慧 (さくらださとし, 故人) に、「マーケティングとは何か」 と聞いたことがあります。「お客様に『また来るね』と言ってもらえるようにすること。でも複雑に受け止めてはいけない。お客様の立場になって考えればいいんだ」 。それが櫻田の答えでした。

一見、シンプルですが、とても難しい。実際、苦い記憶があります。02年に当社は創業30周年を記念して290円だったテリヤキバーガーを200円に値下げしました。

当時、マーケティングを担当していた私も、お客様のためにと自信を持っていたキャンペーンでしたが、「もっとおいしくなることにお金を使ってほしい」 「価格を見て、買うかどうかを決めているわけではない」 などと、多くのお叱りや落胆の声をいただく結果に。品質の高さが価値と考えるお客様の期待に背いてしまったのです。

 「お客様のために」 という言葉が口から出てくるのは対岸からの目線に立っているからで、本当の意味で考えられてはいないのではないかと気付かされました。

学べること


では、ここまでのモスバーガーの話から学べることを掘り下げていきましょう。

マーケティングの本質


モス創業者の言葉からはマーケティングで大切なことは何かに気づかされます。

もう一度引用すると、

お客様に『また来るね』と言ってもらえるようにすること。でも複雑に受け止めてはいけない。お客様の立場になって考えればいいんだ

お客さんからの 「また来るね」 とはリピートです。一回の来店で終わってしまうのではなく、二回、三回と来てもらう、つまり選ばれ続けている状態です。

どうすればお客さんから選んでもらえるのか、ただの偶然の一回だけではなく意図的に選ばれ続けるようにするのがマーケティングの役割です。

選ぶという行為の主体者はお客さんです。

だからこそ大事なのはお客さんの立場になってどういう気持ちで選ばれるかを見出すことです。

教訓の実践


モスの創業者の言葉の中に 「複雑に受け止めてはいけない。お客様の立場になって考えればいいんだ」 とありました。

先ほどの記事には、月見フォカッチャの事例でお客さん視点で企画されたマーケティングの話が紹介されていました。

アニメ 「美少女戦士セーラームーン」 をイメージキャラクターにしたテレビ CM です。


該当箇所を記事から引用します。

月見フォカッチャでは、当店のメイン顧客である30代、40代の女性に向けて、アニメ 「美少女戦士セーラームーン」 をイメージキャラクターに抜てきしています。

幼い頃に慣れ親しんだセーラームーンが名セリフになぞらえた 「月見にかわって、おいしいよ。」 とテレビ CM で訴求する戦略も的中。発売8日間で当初の販売目標の半分に当たる80万食を売り切り、販売を一時休止するほどの反響でした。

 (中略) 

お客様の立場になりきって考えることは難しいですが、自分の身近な人をお客様と仮定して、喜んでもらうためにはどうしたらいいかと 「n = 1 視点」 で考えることならできます。

セーラームーンの CM 起用も、30歳の娘が仕事で悩む様子を見て思いつきました。他に、プロモーション施策の立案は消費者モニターのインタビューも参考にしていて、10人ほどに絞り、「なぜそう思うのですか」 と深掘りするようにしています。

データ分析で見えてくる顧客像は最大公約数化されていて、かえって曖昧になる。そのため、定量データは傾向を見て自分の思い込みを正すものだと半ば割り切っています。

データからの顧客理解


引用した最後のところに 「お客さんをどうやって理解すればいいか」 への示唆があります。

定量データの位置づけは1人ひとりのお客さんに向き合うために、あくまで傾向を捉えるにとどめています。そして、数字のデータだけでは見えてこないこと・わからないことについては定性情報を活用し 「お客さんの心理」 を掘り下げているのです。

お客さんの立場になり 「なぜ買ってくれるのか」 や 「なぜ選んでもらえるのか」 を理解する。そして顧客理解から打ち手につなげていく。

マーケとは、顧客理解と価値提供。

これを忘れないようにしたいです。


まとめ


今回はモス創業者の言葉から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ マーケティングで大切なこと
  • マーケティングの役割はお客さんから選ばれる理由をつくること。価値を伝え、提供する
  • お客さんに 「また来るね」 と言ってもらえるか。お客さんの立場になって考えて実現する
  • 顧客視点で 「なぜ買ってくれるのか」 「なぜ選んでもらえるのか」 を理解する。顧客理解から打ち手につなげていこう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。