投稿日 2023/03/05

原体験を有効活用する方法。2つの開発事例から学べること


今回は原体験から、マーケティングの企画アイデアや商品開発につなげた事例をご紹介します。

2つの事例から学べることとして原体験をマーケティングに活用する方法を掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • 受験生にしか見えない広告
  • AI が判定する脳の健康チェックフリーダイヤル
  • 2つの事例の共通点は 「原体験」 
  • 原体験をマーケティングに活用する方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

受験生にしか見えない広告


おもしろいと思った広告をご紹介します。

赤シートをかざすと見える


以下は ITmedia の記事からの引用です。

12月、東京の渋谷・池袋駅に掲示された、ある飲料商品の広告が話題を呼んだ。複数のカラーを重ね合わせたモザイク状のデザインで、一見したところ、メッセージらしきものは読み取れない。実は、あるものを広告にかざすことでメッセージが浮かび上がる、ユニークな仕掛けが施されていた。

サントリー食品インターナショナルが2019年に発売したエナジードリンク 「ZONe ENERGY」 (ゾーンエナジー) 。「無敵のゾーンへと導く」 と銘打つ同商品は、カフェインを豊富に含み、仕事や勉強、趣味の合間に飲んで眠気を覚ます商品として売り出している。

今回の広告は、来年1月14, 15日に実施される大学入学共通テストを控え、受験生に向けた応援メッセージを発信しようと企画した。どうすれば受験生にメッセージを届けられるか――。企画担当者が考えたのは、赤シートをかざすことでメッセージが読み取れる 「体験型広告」 だ。
出典: ITmedia

広告が生まれた背景


広告ができた背景について続けて記事から見ていきましょう。

 「電車の中で実際に赤シートを使って勉強している学生の姿を見かけたのが発案のきっかけです。多くの人がスマホを操作する中で、真剣な顔つきで勉強する学生の姿が目に留まり、応援してあげたいと考えました」 (企画担当者) 

モザイク状の広告に赤シートをかざすと、受験生に向けたメッセージが浮かび上がる。「小さな積み重ねが君の才能を開放する」 「これを見ている君に幸あれ」 ――。全6種類を作成し、うち3種類は著名なインフルエンサーにメッセージを作成してもらった。

担当者が電車で見かけた学生を 「応援したい」 という気持ちが、マーケティングのアイデアを生みました。


脳の健康チェックフリーダイヤル


次に2つ目の事例です。

音声によって AI が認知機能を測るサービスです。

話し方から AI が判定


以下は日経新聞の記事からの引用です。

NTT コミュニケーションズは音声認識 AI (人工知能) で認知機能の状態を測定する 「脳の健康チェックフリーダイヤル」 の無償トライアルを始めた。利用実績は9月のサービス開始から3カ月で42万件を超えた。携帯電話があれば誰でも手軽に利用でき、認知症の早期発見や予防につなげられる。

 (中略) 

フリーダイヤル (0120.468354) に電話をかけて日付と年齢を尋ねる質問に答えると、話し方の特徴や声の質から AI が認知機能の状態を判定する。測定は約20秒で完了。認知機能が正常か低下傾向にあるかを知ることができる。軽度の認知症の疑いがあるかどうかを 93% の確率でチェックできる。
出典: @Press

祖父との思い出から


脳の健康チェックフリーダイヤルの原点は開発担当者の祖父の記憶です。高校生の頃のことで、今も残っている家族を思う気持ちがサービス開発につながりました。

原点は武藤さん (引用者注: 法人向け営業を担当する武藤拓二さん) の高校生の頃の記憶にある。離れて暮らしていた祖父は、年を重ねるにつれ感情の起伏が激しくなったり急に若い頃の自分に戻ったように話したりするようになった。

当時は認知症という言葉すらなく、医療体制や予防策も整っていなかった。症状が悪化していく祖父を前に家族は不安を感じながら過ごすしかなく、武藤さんももどかしさを感じていた。

脳の健康チェックフリーダイヤルは祖父や家族への思いと社会に貢献したいという気持ち、商売道具の電話が結びつくことで生まれた。

学べること


では、2つの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

きっかけは原体験


共通するのは担当者の 「原体験」 が企画やサービス開発を生むきっかけになっていることです。それも仕事とは直接関係のない、個人的な出来事や思い出です。

赤シートをかざさないと見えない広告は電車で見た学生が勉強する様子、脳の健康チェックフリーダイヤルは高校生の時の祖父の記憶です。

原体験とは


原体験とは自分ならではの経験です。

心が動かされた原体験には自分の価値観や琴線に触れる何かがあったということです。

今回の2つの事例の原体験には 「応援したい」 「つらかった」 という気持ちが相まっていました。このような感情が結びついた原体験は解決したい問題となって心に残ります。

原体験はビジネスのアイデアの元になるだけではなく、人を巻き込んだり困難に立ち向かう原動力にもなるのです。

掘り下げと活用


もちろん原体験がないからといってだめなわけではありません。しかし原体験が自分の使命のように昇華されると、問題を解決したりお客さんや世の中に価値をもたらす源になります。

ポイントはちょっとしたことでも心を動かされたのなら、そこには何かがあるということです。原体験を掘り下げていくと自己理解やお客さんの理解につながります。


まとめ


今回は2つの事例から学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 原体験の有効活用
  • 原体験はビジネスのアイデアの着想や、人を巻き込んだり、困難に立ち向かう原動力にもなる
  • 心が動かされた原体験には、自分の価値観や琴線に触れる何かがあったということ。感情が結びついた原体験は、使命感や解決したい問題となる
  • 原体験を掘り下げ、自己理解やお客さんの理解につなげよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。