出典: DAM
今回のキーワードは 「利用シーン」 です。利用シーンから提供価値を解像度高く理解しようという話です。
おもしろいと思ったヤマハの 「なりきりマイク」 から、マーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。
✓ わかること
- 誰でも ELT 持田香織さんのように歌えるマイク
- 開発の経緯
- 利用シーンから提供価値を解像度高く理解する方法
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
なりきりマイク
ご紹介したいのは、カラオケで誰でも Every Little Thing の持田香織さんのように歌えるヤマハの 「なりきりマイク」 です。
百聞は一見にしかずなので、どれくらい持田香織さんの歌声に変わるかは以下の動画を見てみてください。
SNS をざわつかせたマイク
以下は 「なりきりマイク」 を取り上げた日経新聞の記事からの引用です。
あなたもマイク1本であの歌手の歌声になれる――。まるでドラえもんが出す未来の道具のような体験をかなえるのがヤマハが開発した 「なりきりマイク」 だ。
2022年のヒット商品番付では同マイクを使ったカラオケ店のスペシャルルームが技能賞を獲得した。カラオケが苦手だった担当者が企画した人工知能 (AI) 歌声変換マイクはまだプロトタイプにもかかわらず、世間をざわつかせる。
「早くカラオケ機に実装してほしい」 「本当にあんなマイクがあるの?」 ――。今秋、あるテクノロジーが SNS (交流サイト) をにぎわわせた。ヤマハが研究中の歌声変換技術 「TransVox (トランスヴォックス) 」 を搭載したなりきりマイクだ。
AI が歌い手の抑揚や発音を一瞬で分析。事前に学習した特定の歌手などの歌い方でまねして歌い直すような仕組みで声を再合成する。製品化に向けた実証実験では人気音楽グループ 「Every Little Thing (ELT) 」 のボーカル、持田香織さんの歌声データをエイベックスに提供してもらい、歌い方の癖を AI に学習させた。
開発の経緯
なりきりマイクはどのようにして生まれたかについて、続けて同じ記事から見てみましょう。
開発には約2年を費やした。
(中略)
苦労したのはカラオケという特殊な環境下で使えるようにすることだ。「研究所で試していたときよりバックミュージックの音量がものすごく大きい。隣でタンバリンをたたくなど、歌っている人の声以外の音がガンガン入ってくる」 (なりきりマイクを企画したマーケティング統括部の倉光大樹氏) 。
開発チームがカラオケルームに通い詰め、歌声とそれ以外の音を AI が判別できるよう調整を続けた。
学べること
では 「なりきりマイク」 から学べることを掘り下げていきましょう。
カラオケルームに通っての開発
注目したいのは開発担当者がカラオケルームに通い、なりきりマイクが実際に使われる場面で開発を進めたことです。変換する歌声とそれ以外の音を AI が判別できるよう調整するためです。
普段の会社での研究所とカラオケルームでのカラオケ時では状況が違います。今回の事例では音の種類や大きさです。
なりきりマイクは歌っている人の音声を入力データとし、それ以外の音は変換に使わないことで持田香織さんのような特定の歌声に変えられるマイクです。
AI に学習させるためには実際の利用シーンで行わなければ適切な教師データを集めることはできません。文章にすると当たり前に見えるかもしれませんが、カラオケルームに通い詰めたことで歌声の変換精度が高まったのです。
利用シーンと提供価値の理解
今回の話からの学びを一般化すると、商品やサービスの利用場面に足を運んで、利用シーンと提供価値を解像度高く理解する重要性です。
商品・サービスはお客さんに利用してもらって初めて価値をもたらします。利用する状況において、誰が、何のために、いつ、どこで、誰と、何と一緒に、どのように使うかを理解してこそ、自分たちの商品がお客さんにとってどんな価値があるのかが見えてきます。
オフィスや自宅にいるだけでお客さんの利用シーンを直接見に行かなければ、お客さんのことや提供価値は肌感覚ではわかりません。理解の解像度は上がらないわけです。
物理的に直接行くことが難しければ、リモートでバーチャル上でもいいので利用シーンを直接知ることが大事です。ビジネスを成功させるカギはお客さんの利用シーンと提供価値を解像度高く理解できているかです。
まとめ
今回は ELT の持田香織さんのように歌えるヤマハの 「なりきりマイク」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 利用シーンと提供価値の解像度
- 商品やサービスは、お客さんに利用してもらって初めて価値をもたらす
- 商品の利用場面を見に行き、誰が、何のために、いつ、どこで、誰と、何と一緒に、どのように使うかを把握し、お客さんの利用シーンと提供価値を解像度高く理解しよう
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