今回は商品戦略のポイントは 「定番商品」 という話です。
定番商品を 「」 でくくったのは色々と意味合いを含んでいるからですが、詳しく解説していきます。
✓ わかること
- ファミマの商品戦略がおもしろい
- 定番商品と限定商品のバランス
- Google のプロジェクトマネジメント手法
- ファミマと Google に学べること
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
ファミマの商品戦略
こちらの記事を読みました。
マクドナルド V 字回復の立役者 - ファミマ足立光 CMO に聞く 「ヒット商品を連発する極意」|ITmedia
ファミマの CMO の足立さんへのインタビュー記事です。
インタビューの最初はコラボ商品についての話でした。具体的には完全会員制の高級和牛レストラン 「WAGYUMAFIA」 が監修した 「ポテトチップス ULTRA GARLIC」 と 「ULTRA HIGHBALL」 です。
コラボ商品の話もおもしろかったのですが、それ以上に興味深かったのは 「定番商品」 を重視しているというファミマの商品戦略についてでした。
定番商品を重視
いつも売られている定番商品を重視するのは、新商品ばかりを強化してしまうことにはリスクが高くなるなどの弊害もあるからとのことです。
インタビュー記事から該当箇所を引用します。
―― 話題化を狙うという戦略は理解しました。一方で、話題化しても売れないことも指摘していました。ファミマの中で新商品の売り上げはどれくらい重要なのでしょうか?
新商品はどこのコンビニやスーパーでもやってらっしゃることなので、それはそれでもちろん重要なんです。ただ、そういった 「期間限定商品」 も大事なんですが、実は私が意識してやっていることは、定番を強化することなんです。
商品は大体、三層ぐらいに分けられるんですね。定番は一年間、常に置いてあるもので、実は売り上げの大部分がここなので、とても大事なんです。
次に季節の定番がありまして、例えば春の苺、秋でしたら芋や栗などですね。季節ごとに毎年必ず出てくるものですから、こちらも大事です。
そして最後に、スポットとして期間限定または売り切れ後免で発売する、とても話題になるような商品があるわけです。今回の、「ポテトチップス ULTRA GARLIC」 や 「ULTRA HIGHBALL」 がまさにそうですね。
―― つまり、新商品の優先順位が一番低いということなのでしょうか?
新商品ばかりを強化してしまうと、いわゆる定番商品の層が薄くなってしまい、安定的に売れるものが薄くなってしまいますし、お客さま的には 「いつもの」 商品が棚に無かったら失望してしまいます。また新商品は売ってみないと、どれくらい売れるのか分からない点もあり、リスクが高くなります。
売り上げの大部分が定番なのに、これでは本末転倒ですよね。なので、定番を十分に太く強くした上で、季節の定番を増やしていき、かつ話題性がある商品も展開してお客さまにご来店いただかなければいけません。
コンビニという業態は新鮮さも大事ですが、安定性もすごく大事だと思うので、定番や季節の定番を強化しながら、新鮮さや話題性がある新商品も出していく。そのバランスが重要だと思います。
定番商品と限定商品のバランス
ファミマは商品を大きく3つに分類しています。
✓ 商品の3つの分類
- 定番商品 (売上の大半を占める)
- 季節ごとの商品
- 売り切れ御免の短期間での限定商品
新鮮味や話題性を出しやすいのは限定商品です。
限定商品に力を入れたくなりますが、ファミマは定番商品を重視しています。全体の売上に占める貢献が高いからです。
限定商品に注力するのは前提として定番商品の力を強くしてからという考え方です。定番商品を強化し、新鮮さや話題性がある新商品も出していくというバランスが重要であると。
では、定番商品と限定商品はどのくらいのバランスがいいのでしょうか?
この話とつながるのは Google のマネジメント方法です。
Google のプロジェクトマネジメント
Google には経験則から導かれたプロジェクトへのリソース配分があります。
次のように3つに分ける方法です。
✓ Google のリソース配分
- コアビジネス: 70%
- 成長プロダクト: 20%
- 新規プロジェクト: 10%
この Google のプロジェクトマネジメント手法の理解を深めるために、How Google Works - 私たちの働き方とマネジメント という本に書かれていた内容が参考になるので引用します。
2002年の時点で、グーグルはまだプロジェクトを重要な順に並べた 「トップ100リスト」 をもとに、リソースの配分やプロジェクトのポートフォリオを決めていた。
だが成長にともなって、このシンプルな仕組みではスケールすることが難しいという懸念が強まった。忌まわしき 「ノー」 の文化 (引用者注: 新しい挑戦に保守的になり No を言う社風) がじわじわと広がるのではないかという不安もあった。
そこである日の午後、セルゲイ (引用者注: Google の共同創業者のセルゲイ・ブリン氏) はトップ100リストを見直し、プロジェクトを三つのグループに振り分けた。
プロジェクトのほぼ 70% はコアビジネスである検索と検索連動型広告に関するもので、約 20% が成功の兆しが見えはじめた成長プロジェクト、残りの約 10% が失敗のリスクは高いが、成功すれば大きなリターンが見込めるまったく新しい取り組みだった。
それを叩き台に長い議論を重ねた結果、「70対20対10」 をリソース配分のルールにするという結論に達した。リソースの 70% をコアビジネスに、20% を成長プロダクトに、10% を新規プロジェクトに充てるのである。
Google のプロジェクトマネジメントをより一般化すると次のように捉えることができます。
✓ Google のプロジェクトマネジメントの一般化
- 70% は今までやってきたメインの活動 [コアビジネス]
- 20% は少しずらした新しいこと (既存活動に関連するもの) [成長プロダクト]
- 10% は全く新しいこと [新規プロジェクト]
学べること
では、ファミマと Google の話をまとめて学べることを掘り下げていきましょう。
「定番商品」 への配分
Google のマネジメントでのリソース配分はコアビジネスに 70% を使うというものでした。
コアビジネスとは 「定番商品」 とみなせます。
ファミマの事例とつなげると、定番商品と限定商品の割合を次のようにするというのが Google からの示唆です。
✓ 定番と限定のバランス
- 定番商品: 70% [コアビジネス]
- 季節ごとの商品: 20% [成長プロダクト]
- 短期間での限定商品: 10% [新規プロジェクト]
定番商品の強化
さらに着想を広げると個人のレベルでも学びがあります。
自分の専門スキルや能力において 「定番商品に当てはまるものは何か」 という視点です。あるいは、今やっている仕事や持っているタスクの中で 「コアビジネスはどれか」 です。
ファミマが限定商品以上に定番商品を重視しているように、Google がリソース配分で 70% をコアビジネスに充てているように、「自分にとっての定番商品」 に注力できているかを棚卸ししてみるといいです。キャリアや取り組む仕事で新しい視点が得られるはずです。
自分の 「定番商品」 には意識して時間やエネルギーを注ぎ、力を高めておくことの重要性を最後にメッセージとして残しておきます。
まとめ
今回はファミマと Google の話から学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 定番商品と限定商品のバランス
- 新鮮味や話題性を出しやすいのは限定商品だが、売上の大半は定番商品から
- 定番と限定の配分は例えば、定番商品: 70%、季節ごとの商品: 20%、短期間での限定商品: 10%
- 限定商品に注力するのは定番商品の力を強くしてからでいい。「自分にとっての定番商品」 には意識して時間やエネルギーを使おう
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