出典: MarkeZine
今回のテーマはリプランディングです。
おもしろいと思ったリゾート施設のリブランディング事例から、差異化から勝ち筋をつくる方法を見ていきましょう。
✓ わかること
- 奄美大島のリゾート施設のリブランディング
- ヨガで号泣したお客さんがヒントに
- バリュープロポジション
- 差異化から勝ち筋をつくる方法
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
ウェルネスリゾート THE SCENE
奄美大島の豊かな自然に囲まれたリゾート施設 「THE SCENE」 (出典: MarkeZine)
ご紹介したいのは2015年より運営してきた奄美大島のリゾート施設 「THE SCENE」 の事例です。
ウェルネスとリゾートを組み合わせたリブランディングによって赤字経営からの V 字回復を果たしたという話です。
開設当初は苦戦
リゾート施設の運営を始めた当初は赤字経営でした。
以下は、nobitel のトラベル・ホテル事業部執行役員で 「THE SCENE」 支配人の小林良輔氏へのインタビュー内容からの引用です。
── 開始当初はかなり苦戦されたと伺っていますが、どういった点に課題を感じていましたか。
小林: リゾート業界は有名なリゾートホテルさんや歴史のあるホテルや旅館など競合が多く、レッドオーシャンな業界です。当時は、本物のプライベートと自然空間を強みとして打ち出していましたが、差別化する要素が少なかったことが課題でした。
リゾート施設でチェックされるポイントは、サービス力やハードの面なのですが、大手さんと比べると限られた資金の中、同じ指標を用いて差別化していくことに限界を感じていました。
リブランディング
V 字回復できたのはリブランディングからの差異化が成果を出したからでした。
── こうした状況をどのように打開したのでしょうか。
小林: リゾートや高級ではなく、健康領域に特化するリブランディングを行った点です。当社の事業の軸であり得意領域の健康とホテルを組み合わせることで、ブルーオーシャンにもっていけたのが大きかったです。
── リブランディングのきっかけを教えてください。
小林: 2015年の9月にオープンしたのですが、すぐに赤字が1億円に膨らんでしまい、何か打開策がないかと思って探していました。
毎朝ガーデンでヨガを行っているのですが、ある日ヨガの終了後に号泣している女性がいまして。泣いている理由を尋ねたところ、「大自然の中でヨガができて思わず心が浄化されました」 という言葉をいただいたんですね。それがきっかけで、自然のパワーを感じながら心と体を元気にするウェネルネスリゾート施設にしようと決めました。
── そこでウェルネスリゾートに転換したのですね。
小林: はい。2016年にコンセプトの変更を行いました。まず 「ネイチャークレンズ」 というプログラムを立ち上げ、ヨガやストレッチ、リラクゼーションなど様々なアクティビティを開発していきました。
学べること
では今回の事例から学べることを掘り下げていきましょう。
リゾート施設 THE SCENE のリブランディングには 「差異化から勝ち筋をつくる方法」 に学びがあります。
補助線としてご紹介したいのが 「バリュープロポジション」 です。
バリュープロポジション
バリュープロポジションとは、3つが重なるところでの自分たちならではの価値提案です。
出典: lifehacker
✓ バリュープロポジション
- お客さんが望んでいること
- 自社ができること
- 競合にはできないこと
3つが成立すれば強みを発揮でき、お客さんにとって他にはない価値となります。
THE SCENE に当てはめると次のようになります。
✓ THE SCENE のバリュープロポジション
- 心身ともに健康になりたいという人間の根源的な望み
- 大自然に囲まれたリゾート施設を保有。ヘルスケアサービスを展開してきた自社のケイパビリティ
- リゾート × ウェルネスという組み合わせたことで、他社には簡単にはまねできないものに
かつては資本のある大手と同じ土俵で戦っていましたが、バリュープロポジションによるリブランディングで差異化を図り、THE SCENE にしかない価値をお客さんに提供しています。
差異化から勝ち筋をつくる方法
マーケティングの観点で注目したいのは、ウェルネスリゾートへ舵を切ったリブランディングのきっかけが 「お客さんとのちょっとしたやり取りだったこと」 です。
毎朝のプログラムで提供している大自然の中でのヨガでした。あるお客さんがヨガの後に号泣していて、その理由がリブランディングの元になったのです。
ヨガに参加して泣いてくれるほど良かったと感動エピソードで終わらせなかったんですよね。リゾート施設を運営する nobitel は、Dr.stretch というストレッチ専門店を国内外合わせて219店舗 (2022年12月時点) を運営しているヘルスケアやウェルネスの会社です。
自分たちが今まで健康の領域でやってきた知見や想いを掛け合わせたことで、THE SCENE にしかできないウェルネスリゾートというコンセプトをつくれたわけです。
バリュープロポジションをつくると聞くと、何かすごく高度なことをやるイメージに思えるかもしれません。しかし解像度を上げていくとビジネスのヒントはお客さんとの現場にあったりします。
お客さんとの 1 シーンの意味合いを掘り下げ、既存のものとかけ合わせたり時には再解釈を入れることで差異化からの勝ち筋につながります。
まとめ
今回は奄美大島のリゾート施設 THE SCENE のリブランディング事例を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 差異化から勝ち筋をつくる方法
- バリュープロポジションを成立させると差異化された価値提供ができる
- ① お客さんが望んでいること、② 自社ができること、③ 競合にはできないこと
- ヒントはお客さんとの現場にある。ちょっとしたことを見逃さず意味合いを掘り下げ、既存のものとかけ合わせたり時には再解釈を入れ 「勝ち筋」 をつくろう
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