今回は書評です。
ご紹介したい本は ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 (楠木建) です。
✓ わかること
- 競争戦略の本質とは?
- 神髄は 「違いをつくって、つなげる」 にあり
- ストーリーとは構造化と時間の流れ
- 戦力をおもしろくするクリティカルコア
戦略にストーリーがあるおもしろさを見ていきましょう。よかったら最後までぜひ読んでみてください。
競争戦略の本質
ストーリーとしての競争戦略 は買って以来から何度も読み返している本です。
この本では競争戦略の本質は 「違いをつくって、つなげること」 と一言で表現しています。特に 「つなげる」 に重心を載せていて、美しくつながった戦略ストーリーの話をおもしろく読める本です。
本の帯に 「戦略の神髄は思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある」 とありますが、読むと思わず人に紹介したくなります。
ストーリーとは
戦略ストーリーの位置づけ
この本では、全体像の中で戦略ストーリーを以下の図のように位置づけています。
出典: マーケティング図書館
これを前提に、戦略ストーリーの捉え方として静止画ではなく 「動画」 という考え方が印象的でした。
動画とは 「ここがこうなって、次にこうなる。そうするとこのように連動し、こうなって、ああなって、最終的にこうなる」 という物語として語れる奥行きのあるストーリーです。
構造化
戦略の各要素をただ並べるだけではストーリーにはなりません。
パワーポイントやドキュメントの資料で見かける箇条書きの状態では、物語のストーリーを見出しにくいです。ストーリーにするためにはつながりを構造化することが必要です。点と点を線で結び面にし、そして立体の構造にするのがストーリー化です。
時間の流れ
ストーリーでもう1つ重要なのは時間軸です。時間の流れが入っているかです。
構造化され例えば左から右へ、上から下へストーリーが展開していく時に時間の長短の要素が加わるとストーリーの解像度が高くなります。
以上のようにストーリーには 「構造化」 と 「時間の流れ」 があるかがポイントです。
クリティカルコア
この本で最も 「おもしろい」 と思う考え方はクリティカルコアです。
一見すると非合理、全体では合理
クリティカルコアとは戦略のストーリーを他にはないユニークなものにし、思わず人に話したくなる物語をつくる肝になる部分です。
クリティカルコアは差異化の源泉です。クリティカルコアによって他から簡単にはマネされず、戦略が中長期で持続可能になります。
この本で印象的だった表現は 「クリティカルコアは “賢者の盲点“ を突く」 というものです。
クリティカルコアは、「一見すると非合理、全体では合理」 です。なぜそれをやるのかが外部の人にはわからないことですが、戦略ストーリー全体ではカギとなります。
クリティカルコアがあるから戦略ストーリーは成立し、競合他社はマネできず、あるいはそもそも気づかなかったり、知っていても非合理なので意図的に避けようとするわけです。
スタバのクリティカルコア
クリティカルコアの具体的な事例はこの本にいくつか出てきますが、1つご紹介するとスターバックスです。
下の図の左の 「直営方式」 がスタバのクリティカルコアです。
出典: Twitter
一般的にスタバのようなコーヒーショップに限らず、チェーン店を展開する多くの会社は 「フランチャイズ方式」 です。しかしスタバは 「直営店方式」 にこだわります。
本書ではクリティカルコアはサッカーにたとえて 「キラーパス」 と表現されます。スタバの競争戦略は直営店方式というキラーパスから 「店舗の雰囲気」 「出店と立地」 「スタッフ」 「メニュー」 とつながっています。これらがスタバの揺るぎないコンセプトである 「第3の場所 (サードプレイス) 」 を実現するわけです。
直営店方式がスタバの競争優位をつくる源泉であり、戦略のストーリーをおもしろくする肝にあたるのです。
クリティカルコアを学べる価値
ちなみに、クリティカルコアは自分が仕事でもクライアントの戦略やマーケティングをつくる時には必ずと言っていいほど考えるようにしています。クリティカルコアの概念を学べただけでもこの本は一読の価値があります。
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まとめ
今回は書籍 ストーリーとしての競争戦略 - 優れた戦略の条件 (楠木建) をご紹介しました。
最後にポイントをまとめておきます。
✓ ストーリーとしての競争戦略
- 競争戦略の本質は 「違いをつくって、つなげること」 。ストーリーでは 「つなげる」 が大事
- 戦略ストーリーは静止画ではなく動画。構造化と時間の流れがあると奥行きのあるストーリーになる
- ストーリーのクリティカルコアは 「一見すると非合理、全体では合理」 で、戦略ストーリーをおもしろくする肝の部分。クリティカルコアが持続可能な差異化をつくる
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