投稿日 2023/03/23

決済サービス stera pack 。お客さんマニアになるのがベネフィットを見出す方法

#マーケティング #顧客理解 #ベネフィット


今回はベネフィットを見出す方法です。お客さんマニアになってお客さんに響くベネフィットを見出そうという話です。

キャッシュレス決済サービスのマーケティング事例から、学べることを掘り下げまていきましょう。

✓ わかること
  • キャッシュレス決済サービス stera pack
  • 機能訴求からベネフィット訴求へ
  • ベネフィットを見出す方法

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

キャッシュレス決済サービス stera pack


こちらの記事を読みました。

顧客に響くメッセージ開発に貢献した 「パーセプションフロー・モデル」 の力|宣伝会議

キャッシュレス決済サービスの 「stera pack」 のマーケティングを、担当者へのインタビューで紹介する記事です。

stera pack は2021年4月に SMBC GMO PAYMENT からリリースされました。オールインワン端末やアプリなどをパッケージで利用できるサブスク型サービスです。

以下は記事のリード文です。

オールインワン決済端末 「stera terminal (ステラターミナル) 」 を初期費用無料で導入できるキャッシュレス決済サービス 「stera pack (ステラパック) 」 が店舗で広がっている。特に2022年2月の Web サイトリニューアル以降、コンバージョン率が飛躍的に向上したという。

以前の課題感


stera pack にはマーケティングにおいて以前は課題がありました。サービスの機能を訴求するだけでは競合商品との差異化につながっていないという状況でした。

消費税増税をきっかけに2019年10月から2020年6月まで実施された経済産業省の 「キャッシュレス・ポイント還元事業」 によって、中小事業者によるキャッシュレスサービスの導入が進んでおり、市場はある程度成熟していました。

後発で参入した当社が 「オールインワンの高性能端末」 、「決済手数料が業界最安水準の 2.80% ~」 などの機能訴求だけで競合他社との違いを打ち出しても、市場の反応も鈍く獲得に苦戦していました。特に 「月額3300円の固定費」 に見合う価値をどう伝えればいいのか、最適なメッセージを検討する必要性を感じていました。

お客さんが本当に望んでいたこと


stera pack の担当者は問題解決のために、あらためてお客さんに向き合うことからはじめました。お客さんが本当に望んでいたことを理解し、自社商品の価値を再解釈しました。

機能訴求から脱することができず、なかなかうまくいきませんでした。

そこで視点を変えるために導入いただいたお店のインタビュー記事から、導入に至った過程をパーセプションフロー・モデルに当てはめることから始めたところ、共通の考え方があることに気づきました。

それは、導入店舗の経営者は、こだわりのサービスを通じてお客さまに満足してもらいたいと思っているなかで、お店において最後の体験である会計時の印象で提供サービスの満足感が下がっていることに課題を持っていることでした。

その課題を解決することが、stera pack が提供している本来の価値であると気づき、パーセプションフロー・モデルの 「ブランドのベネフィット」 と書かれている部分に 「お店のゆとり」 をあてはめて、再度モデル化を進めました。

すると、stera pack を導入することで会計業務にゆとりが生まれ、最終的には店舗の雰囲気が良くなり、顧客満足度も高まってリピート率も上がるというストーリーが見え、これなら新たな市場価値を創造できそうだと感じました。
マーケティング活動の全体設計図 「パーセプションフロー・モデル」 (出典: 宣伝会議

複数のお客さんの共通点から、お客さんが本当に望んでいることを見出しました。真の望みとは、店舗の経営者は顧客満足度を高めることです。

しかし、サービスの最後のところの会計で顧客体験が良くなく、顧客満足度が低下につながってる状況を何とかしたいと思っていたわけです。

ここを自分たちが解決したい問題だと捉え、解決のためにできあがったコンセプトが 「お店にゆとりをもたらす決済サービス」 でした。

機能ではなくベネフィットの訴求へ


お客さんの本当の望みを理解したことで、マーケティング施策も見直しました。

Web 用の動画を制作するとともに、ランディングページ (LP) を大幅に改修しました。動画は現状打破を目的に、課題想起と魅力の打ち出しを意識しました。LP はまずベネフィットを伝えて、その先に機能訴求をするようにしています。

 (中略) 

 「あなたのお店にゆとりを」 というキャッチフレーズもつくることができました。

それまでは広告会社から提案されたコピーを使っていて、媒体ごとに統一もされていませんでしたが、リニューアルを機会にキャッチフレーズも統一でき、社内的にも 「ゆとり」 という言葉が stera pack の価値を表現するという共通認識が生まれました。
 「ゆとり」 をキーワードにしたランディングページ (出典: 宣伝会議


学べること


ではキャッシュレス決済サービス stera pack の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

機能とベネフィットの違い


結論から先に言うと、学びはお客さんを主語にしてベネフィットを見出し、お客さん目線でベネフィットを訴求する重要性です。

ベネフィットの理解を深めるために 「商品の機能」 と 「商品のベネフィット」 を比べてみましょう。

機能はあくまで商品の特徴にすぎず主語は商品です。stera pack の例で言えば 「オールインワンの高性能端末」 が機能です。

一方のベネフィットはお客さんが得る便益や価値です。主語はお客さんになります。stera pack で言えばスムーズな会計にすることで来店顧客の満足度を高め、stera pack の導入クライアントがより良い店舗運営ができること。これがベネフィットなのです。

ベネフィットを見出す方法


ベネフィットの主語がお客さんだということは、ベネフィットを見出すためにはそれだけお客さんを解像度高く理解することが必要になります。

置かれた状況、困っていることやニーズ、行動、時にはお客さん自身も気づいていない心理までを幅広く深く捉え顧客を構造的に理解します

また、同じお客さんでも常にお客さんは変わるので顧客理解を止めずやり続けることも大事です。

以上のような解像度の高い顧客理解から、いわば 「お客さんマニア」 と言えるほどのレベルになることがベネフィットを見出す方法です。


まとめ


今回はキャッシュレス決済サービスの 「stera pack」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ ベネフィットを見出す顧客理解
  • ベネフィットはお客さんが得る便益や価値
  • 主語はお客さんなのでベネフィットを見出すためには 「お客さんマニア」 になる
  • お客さんが置かれた状況、困りごとやニーズ、行動、時には本人も気づいていない心理までを幅広く深く捉え、顧客を構造的に理解し続けよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。