投稿日 2023/03/10

I-ne 流 「アイデアの尖らせ方」 。キャズムを超えるヒット商品のつくり方


今回のテーマはアイデアの磨き方です。キャズムを超えるヒット商品のつくり方という話です。

おもしろいと思った I-ne の社長へのインタビュー記事から、学べることを掘り下げていきましょう。

✓ わかること
  • I-ne のキャズムを超えるアイデアの磨き方
  • イノベーター理論に見る尖ったアイデア
  • キャズムを超えるヒット商品のつくり方

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

I-ne のアイデアのつくり方


植物由来のシャンプーの 「ボタニスト」 を販売する I-ne 社長 (大西洋平さん / 2007年に株式会社 I-ne を設立) へのインタビュー記事を読みました。

I-ne はボタニスト以外にも去年2022年に夜間美容ヘアケアブランドの 「YOLU (ヨル) 」 をヒットさせました。

インタビューで語られていた 「尖った企画から、適切な丸みを作る」 という話が興味深かったです。

―― ヨルもボタニストも市場の空白を攻めました。空白はどのように見つけるのですか。

 「まず尖 (とが) ったアイデアを企画します。あくまでも例え話です。ビタミン C 配合のオールインワンゲルはどこも出しているので漢方はどうかと。これだとニッチすぎるのでちょっとずつ尖りを丸めていきます。これぐらいならマスに流し、キャズム (アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間にあると言われている深い溝) を超えられる地点に到達します」 

 「もっとも E コマースだけではキャズムを超えられません。僕らは適切な丸みを作り、E コマースと店頭流通で戦ってきました。僕らの中では、こうすれば勝てるという勝ち筋はできあがってきています」 

まずは尖ったアイデアを企画し、その後に丸めていくというアプローチです。尖りを丸めていくのはキャズムを超えるくらいにするとのことです。


学べること


I-ne のやり方から学べることを掘り下げていきます。

まずは 「キャズム」 に関係する 「イノベーター理論」 から見ていきましょう。

イノベーター理論


キャズムは 「溝」 を意味しますが、もともとはイノベーター理論からきています。

イノベーター理論とは人々を大きく5つに区分し、新しい技術や商品・サービスが普及する時の浸透度合いを理論化したものです。


5つの区分を平たく言えば、

  1. 新しいものに真っ先に飛びつく人 [イノベーター]
  2. 流行に敏感でオピニオンリーダーのような人 [アーリーアダプター]
  3. 取り残されないように後から追いかける人 [アーリーマジョリティ]
  4. 保守的でなかなか取り入れない人 [レイトマジョリティ]
  5. 最後まで決して動かない人 [ラガード]

このような順番で新しいものが普及していくという考え方がイノベーター理論です。

尖ったアイデア


イノベーター理論を補助線にするとアイデアをどの程度まで尖らせばいいかが見えてきます。

  • 10人いて1人にドンピシャで刺さるかどうかでは、イノベーター理論の 「イノベーター」 というオタク気質なマニアックな人にか響かない
  • 10人のうち 2, 3 人くらいになると、新しいもの好きな人やインフルエンサー・オピニオンリーダー的な人に届く
  • 5人以上になると尖りはなくなるが新しいものに保守的な人にも到達する

どこまでを目指すかに唯一の答えはありませんが、普及のゴールイメージから逆算して尖り具合を見極めるといいでしょう。

アイデアの磨き方


I-ne のアプローチは思いついたアイデアを磨いていく方法で参考になります。

まずは自分の中でアイデアを考え企画します。他人がどう思うかはいったん気にせず、自分の内側の創造性からです。

その後で少しずつ広げていきます。身近な人からでもいいので伝えフィードバックをもらい、10人中の 2, 3 人くらいに賛同や共感してもらえるアイデアにしていきます。この過程でアイデアは尖りが徐々になくなっていきます。

この時にアイデアの丸まり具合、逆に言えば尖りをどのくらい削るの目安はイノベーター理論が参考になります。


まとめ


今回は I-ne のヒット商品のつくり方から学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ アイデアの磨き方
  • 自分の内側の創造性から。他人の評価は気にせず、まずはアイデアを考え企画してみる
  • 少しずつ広げフィードバックをもらい、10人中の 2, 3 人から賛同や共感されるアイデアにする
  • さらに5人以上など過半数を超えるくらいにするかは、どこまでアイデアを普及させたいかで判断するといい


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。