投稿日 2023/03/08

ノースフェイスのキャンプ特化型店舗。お客さん中心の 「地動説」 でいこう


今回のテーマは顧客視点です。お客さん中心の 「地動説」 でいこう話です (地動説の意味は後ほど詳しくご説明します) 。

おもしろいと思ったノースフェイスの新業態のお店を取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。

✓ この記事でわかること
  • ノースフェイスのキャンプ特化型店舗
  • 他社のキャンプ用品も扱う狙い
  • 売り手と買い手のギャップ
  • マーケティングでは 「天動説」 より 「地動説」 が正解

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ノースフェイスの新業態店舗



キャンプに特化した店舗


以下は日経新聞の記事からの引用です。

スポーツアパレル大手のゴールドウインが、東京の恵比寿ガーデンプレイスにキャンプ特化型の新業態 「THE NORTH FACE CAMP (ザ・ノース・フェイス・キャンプ) 」 など3業態の複合店を開いた。

同社の関東の店舗としては最大規模の300坪 (1坪は3.3平方メートル) で展開する。テント設営の体験や、筋力アップなどのトレーニングサービスを提供。体験型店舗を前面に出し来店動機の拡大を狙う。

同施設内の 「センタープラザ」 の1階入り口を入るとすぐ、キャンプ場のようにテントやいすが配置された売り場が視界に広がる。

 (中略) 

ザ・ノースフェイスのキャンプ向け商品を着たマネキンも置き、キャンプへのイメージを思い浮かべやすくした。

他社商品も販売


興味深いのはノースフェイスのお店なのに他社のキャンプ用品も取り扱っていることです。

他社製の調理用具などを積極的に仕入れ、キャンプに必要な道具や服装をまとめてそろえられるようにした。

未経験者のハードルを下げる狙いで、同社が販売するテント 「Geodome4 (ジオドーム4) 」 (19万8000円) を1週間で1万4300円から借りられるサービスやテントの設営体験サービスも提供する。

他社の商品も販売しているのは今回の記事のポイントなので、後ほどまた触れます。


学べること


では、ノースフェイスの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

体験するきっかけを提供


ノースフェイスがやっていることはキャンプというテーマに絞り、お店の中でキャンプの疑似体験をする機会の提供です。

なるべくキャンプの本番に近いように他社商品も取りそろえ、キャンプの体験を再現しています。例えばキャンプに使うグッズが色々とあるのでテントを設営する体験や練習ができます。

ノースフェイスのキャンプ特化型店舗はキャンプの未経験者や初心者の来店を狙っています。

キャンプに興味はあるものの用具を何を買っていいかわからない人、テントを自分で組み立てることに不安のある人には、お店でキャンプ体験をすることでキャンプに行こうと思うハードルが下がります。結果としてノースフェイスは自社商品を買ってもらえるわけです。

売り手と買い手のギャップ


この記事の前半で触れたように、ノースフェイスのキャンプ特化型店舗の特徴は他社の商品も買えることです。

これは一般的な話としてですが、売り手は自社の商品が全てでさも中心にあるように捉えがちです。しかし、買い手であるお客さんの認識はそうではありません。色々な商品やサービスがある中でのあくまで1つで one of them にすぎないのです。

このように売り手と買い手にはギャップがあります。

天動説ではなく地動説で


たとえとして宇宙の話をするとマーケティングで大事なのは 「地動説」 であることです。

出典: Study-Z

お客さんと自社の見立てを、

  • お客さん = 太陽
  • 自社 = 地球

とした場合に、売り手が自社商品を中心に見てしまうと太陽 (お客さん) が地球 (自分たち) を中心にまわっている、つまり太陽が動くという 「天動説」 だと錯覚してしまいます。

あえて 「錯覚」 という表現をしたようにマーケティング視点で望ましいのは 「地動説」 です。

太陽というお客さんが中心にいて周りを地球 (自社) が回っているイメージです。太陽の周りを公転しているのは地球だけではなく、水星や金星など他の惑星もあります。お客さんにとって自分たちの商品は多くの中の選択肢の1つにすぎず、他社商品もあるわけです。

ノースフェイスのキャンプ特化型店舗は、お客視点での商品の取り扱いやキャンプ体験の提供をやっている事例でマーケティングに学びがあります。


まとめ


今回は、ノースフェイスのキャンプ特化型店舗 「THE NORTH FACE CAMP」 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 売り手と買い手のギャップを解消する顧客視点
  • 売り手は自社の商品が中心と捉えがち。一方の買い手は、色々な商品やサービスがある中でのあくまで選択肢の1つにすぎない
  • 売り手と買い手のギャップを埋めるには、売り手が顧客視点になることが大事
  • ターゲット顧客の行動と心理を理解し、お客さんの文脈に沿ったお客さん中心のマーケティングを展開しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。