投稿日 2024/11/09

推し活居酒屋 ○○の会。未充足ニーズに特化した専用ソリューションの創出

#マーケティング #未充足ニーズ #専用ソリューション

お客さんが本当に求めていることに、気づけていますか?

日々の業務で、商品やサービスをお客さんにどう届けるかを考えることに目が向きすぎるあまり、もしかするとその背後にある潜在的なニーズを見逃しているかもしれません。

ご紹介したい 「推し活居酒屋 ○○の会」 は、そんな隠れたニーズに応えたおもしろい事例です。ぜひ一緒に事例からの学びを深めていきましょう。

推し活居酒屋 ○○の会



推し活に特化した居酒屋が 「推し活居酒屋 ○○の会」 です。

東京・池袋にあるこの居酒屋は、2024年2月にオープンし、アイドルなどの推し活を楽しむ場所として人気を博しています。特に土曜日は盛況のようです。

推し活居酒屋の各部屋は、入り口がのれんで仕切られた半個室です。2人まで入れるコンパクトルーム、4人まで利用できるスタンダードルーム、5 ~ 8人で利用可能なパーティールームが用意されています。


店内の特徴は、推し色に合わせて部屋の照明を変えられ、食器も同じ色で揃えることができ、他には壁に推しグッズを飾れるなど、半個室を好きなように推しの空間にできます。そして、高精細な 4K モニターで推しの映像を思う存分楽しめるような環境になっています。

 「推し活居酒屋 ○○の会」 の人気の理由を整理すると、次のようになります。

  • 気兼ねなく推し活に没頭できる専用店舗
  • 半個室による適度な開放感と一体感
  • 自宅のように好きなように推しグッズを飾れる環境
  • 推し仲間と安全に交流できる場所


学べること


では 「推し活居酒屋 ○○の会」 から、学べることを掘り下げていきましょう。

この事例では、「推し活」 への未充足ニーズに焦点を当てた事例として学びがあります。

顧客の未充足ニーズ

従来、推し活を楽しむ人々は自宅以外で自由に活動できる場所が限られていました。多くの場合、カラオケルームやホテルの部屋など、本来は別の用途で設計されたスペースを使って活動せざるを得ない状況です。

これは明らかに、推し活を楽しむ人々のニーズが十分に満たされていないという 「未充足ニーズ」 が存在していたということです。

推し活居酒屋の解決策

 「推し活居酒屋 ○○の会」 は、このニーズに直接応える形で誕生しました。

推し活に特化した設備やサービスを提供することで、従来の推し活で使っていたサービスや場所では満たせなかった人たちのニーズを的確に捉えています。例えば、壁面にマグネットで押しのグッズを貼れるようにしたり、お皿やドリンク、照明まで推し色に合わせられるサービスは、推し活を楽しむ人々の細かなニーズに応えるものです。

さらに、半個室という設計はプライバシーを確保しつつも、他の推し活仲間との交流の機会も提供するいい塩梅でのバランスを実現しています。SNS で知り合った推し活仲間と安全に交流したいという、現代の若者特有のニーズにも対応しています。

特化したソリューションにする

このように 「推し活居酒屋」 は、居酒屋として飲食サービスを提供するだけにとどまらず、推し活という文化を理解し、それに根ざした体験を提供することで、他では満たせなかったニーズに応えています。

提供している顧客価値を一言で言えば、自宅体以外で推し活を他人の目を気にすることなく、推し活仲間と一緒に思う存分楽しめる場所と時間です。

推し活居酒屋は、推し活をする人たちがこれまで直面していた、「自分の家以外では、カラオケなどの場所で人目を気にしながら、どこかひっそりと推し活をやっている」 という状況を問題だととらえ、解決するための専用空間を用意しました。表立ってあまり出てこない、しかし確実に存在する未充足ニーズに焦点を当て、既存の習慣や行動に潜む隠れたニーズを見逃しませんでした。

今回の事例から得られる汎用的な学びは、見込み客が抱える未充足のニーズに対して、他ではされていないなら、いっそのことそれ専用の受け皿をつくり、特化したサービスをつくることで、他にはない価値 (例: 自宅以外で一緒に仲間と推し活を思う存分楽しめる場所) をお客さんに提供できるという点です。

まとめ


今回は 「推し活居酒屋 ○○の会」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 「推し活居酒屋 ○○の会」 は、従来のサービスでは満たされていなかった推し活ファンの潜在的な不満や望みに着目した

  • 推しの色に合わせた照明や食器、グッズ展示用の壁面など、推し活のカルチャーを深く理解した上でのきめ細かなサービス設計が顧客満足度を高める

  • 自宅以外ではこれまでひっそりとやらざるをえなかった推し活を、思う存分楽しめる場所になることを目指している

  • 汎用化できる学びとして、見込み客が抱える未充足ニーズに対して、いっそのこと特化した受け皿をつくり専用サービスをつくることで、他にはない顧客価値が生まれる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。