#マーケティング #ユニクロ #本
今回は書評です。
時代を駆ける企業の哲学と戦略から、現代ビジネスにおけるヒントを導き出す一冊です。
本書 「ユニクロ (杉本貴司) 」 をもとに、ユニクロ創業者である柳井正氏とユニクロの歴史を紐解きながら、ユニクロの経営哲学と戦略を掘り下げていきます。
本書の概要
こちらの本は、日本を代表する世界的なアパレルブランドである 「ユニクロの歴史と経営哲学」 を深く掘り下げた内容です。
本書は、単なるユニクロの歴史書ではありません。著者の長年に渡ってのユニクロへの取材を通して、創業者である柳井正氏を中心にユニクロの歴史を臨場感と人間味にあふれる物語からたどることかできます。
創業時から現在に至るまで、ユニクロは 「常識」 に挑戦し続けてきました。原動力となったのは、柳井さんをはじめとする経営陣や社員たちの飽くなき探求心と向上心です。
この本では、ユニクロが辿ってきた数々の苦難と飛躍、そして柳井さんの経営哲学を紐解きながら、ユニクロが山口の洋服店から世界的なグローバル企業となった成功の要因を知ることができる貴重な一冊です。
ユニクロが大切にしてきたこと
ユニクロの歴史は、自分たちの 「存在意義」 をひたすら追求してきた歩みと言えます。
解なき問いに向き合う
ユニクロの成長過程で繰り返されてきた問いは、「ユニクロとは何か」 「服とは何か」 という根源的な投げかけでした。
ユニクロは本質的な問いと向き合い、自社の存在意義を深く内省し自問自答を続けながら、時代に合わせてユニクロを定義してきたのです。
その過程で生まれたのが、「LifeWear (ライフウェア) 」 や 「情報製造小売業」 というユニクロのユニークな概念です。
父の教え
柳井正さんは、幼い頃から父である柳井等さんから繰り返し教え込まれた言葉を大切にしてきました。
- 利は元にあり (まずよい品を仕入れること。できるだけ有利に適正な値で買い、そこから利益が生まれる)
- 一円を大事に
- カネ儲けは一枚一枚、お札を積むこと
- 商売人はカネがなくても、持っているように振る舞え
- カネがないのは首がないのと同じ
- 商売人は信用が第一
特に最後の 「信用が第一」 は、柳井さんにとって経営の羅針盤のようになり、ユニクロの基盤となっています。
できないことはしない
できないことはしない。できることに優先順位をつけてやる。柳井さんはシンプルに考えます。
解決できないことに時間を費やすのは無駄であり、まず解決できる問題や対処できる課題を洗い出し、順番に片付けていく。そうすれば、必ず出口が見えてくるという考え方です。
長所だけの人間になろうと考える必要はない。そもそも長所は他人に誇るようなものでもないし、短所だからといって劣等感にさいなまれる必要もない。ありのままの自分で良い。ありのままの自分でしかいられない。これらが柳井さんの考えです。
ユニクロが目指す姿
では、ユニクロは何を目指しているのかについても掘り下げて見ていきましょう。
現状の延長線上では描かず 「逆算思考」 をとる
逆算思考も注目したい柳井さんの考え方です。
まず先に描くのは大きな絵です。それも、「この人はアホじゃないか」 と思われるような非常識な目標です。柳井さんはこれがイノベーションのもとになると言います。
ユニクロに当てはめれば、(世間からすると) 非常識な目標とは、10年後に世界一の自動車メーカーにユニクロがなることです。そのために30万円ほどの 「LifeCar」 (今はユニクロは LifeWear を打ち出している) を開発し、世界で10億台販売すると。
自動車だけではなく、さらに世界のどんな人でも買える最新の住宅 「LifeHome」 を300万円ほどで10億軒販売する将来のユニクロの世界観も描いています。
スマホで住宅を注文すれば大型ドローンで資材が運ばれきて、一日で組み立てられ、屋根にはソーラーパネル、各部屋には最新家電が装備された住宅です。
こうした未来の目標から逆算して、今何を考えるべきか、何をやるべきかを見極めます。
ビジネスの経営では終わり (非常識な目標) から始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするという逆算思考です。
勇敢に、早く、違うことをやる
この本で印象的だった言葉が、"Be daring, be first, be different (勇敢に、誰よりも先に、人と違ったことを) " です。
ユニクロはこの言葉を体現しています。具体的には、小売のシステム化、SPA (製造小売業) 、LifeWear 、情報製造小売業です。ユニクロはその時々で常識を覆す決断をし、いち早く果敢に実行してきました。
つくったものを売るから、売れるものをつくる
ユニクロは1998年から 「ABC 改革」 を始めました。
ABC 改革の ABC とは All Better Change の略です。「すべてをより良く変える」 を掲げたのが ABC 改革です。
狙いは 「つくったものを売る商売」 から 「売れるものをつくる商売」 への転換でした。ABC 改革で、ユニクロは SPA というビジネスモデルを確立し、飛躍的な成長を遂げました。
それでも柳井さんはさらなる高みを目指します。情報革命という新たな時代において、ユニクロは 「情報製造小売業」 へと進化を遂げています。
学べること
では最後のパートでは、ユニクロや柳井さんからビジネスパーソンとして学べること考察します。
まずは戦略への学びから見ていきましょう。
できないことはしない
柳井さんには、「できないことはしない」 というシンプルな考え方があります。
言わんとしているのは、問題解決できないことに時間を費やすのは無駄であり、解決できる問題や対処できる課題を洗い出し、順番に片付けていくということです。
この考え方は、リソースの効率的な活用と明確な優先順位付けの重要性を教えてくれます。
ビジネスにおいて、すべての課題に同時に取り組むことは現実的ではありません。できないことや解決が困難な問題に時間をかけるよりも、実行可能なことに着手し、確実に成果を上げていくことが大事です。
逆算思考
逆算思考は、最終的な目標から逆算して現在の行動を決定するアプローチです。
現状の延長線上にない、一見すると非現実的とも思える目標を掲げることで、既存の枠組みを超えた (Out of the box という) 発想が生まれます。目標から逆算して今自分がやるべきは何か考えることで、具体的かつ効果的な行動をとることができます。
では、次にマーケティングの観点での学びも掘り下げてみます。
勇敢に、早く、違うことをやる
本書で印象的だった 「Be daring, Be first, Be different」 という言葉が示すように、ユニクロは常に勇敢に挑戦し、既存のやり方との差異化を図ってきました。
この 「勇敢に、早く、違うことをやる」 という方針は、まだ他にはされていないことにいち早く取り組み、先行者利益を得ることの重要性を教えてくれます。
競争の激しい市場で成功するためには、他社と同じことをしているだけでは十分とは言えません。勇気を持って果敢に新しいことに挑戦し、他社に先んじて独自性のある価値をお客さんにもたらすことが必要になります。
つくったものを売るから、売れるものをつくる
ユニクロは長い期間をかけて、「つくったものを売る」 から 「売れるものをつくる」 への転換を図りました。
これはつまり、顧客ニーズを常に察知し、売れるという確信にもとづいての製品開発から販売までを一気通貫で行うということです。顧客起点のマーケティングの本質を表しています。
また、この考え方は市場の変化や技術の進歩に合わせて常に自社の提供価値を見直し、進化させていく必要性も示唆しています。それがひいてはお客さんの満足度を高めることにつながります。
まとめ
今回は、書籍 「ユニクロ (杉本貴司) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- できないことはしない: リソースの効率的な活用と優先順位付けを意識する。ビジネスでは様々な課題に直面するが、全てに正面から取り組む必要はない。対処できる課題から優先的に取り組む。自分の強みや弱みを理解し、得意分野に注力することで、より大きな成果を上げることができる
- 逆算思考: 大胆な目標設定から現在のアクションを導き出すのが逆算思考。自分の中での "枷 (かせ) " を外し、常識を覆すような目標を掲げ、そこから逆算して現在すべきことを考える
- 勇敢に、早く、違うことをやる: 失敗を恐れず、勇気を持って積極的に行動することが大切。やろうと決めたことは早く取り組む。成功するまでには多くの失敗を伴うが、失敗から学び活かすことで、より良い結果を生み出せる
- つくったものを売るから、売れるものをつくる: 顧客目線に立って考えることが重要。お客さんの状況やニーズを深く理解し、顧客理解にもとづいた新しい商品やサービスを開発、マーケティングを展開していく
この本は、次のような方におすすめです。
- ビジネスで特に経営に興味がある人
- イノベーションや企業変革に関心がある人
- リーダーシップやマネジメントを学びたい人
- アパレル業界に携わる人や興味がある人
- ユニクロが好きな人 (ユニクロに興味のない方も新しい発見があると思います)
よかったらぜひ読んでみてください!
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。
ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから登録して、ぜひレターも読んでみてください!