投稿日 2024/11/28

既存サービスを活かした新規市場攻略。セブンイレブンに学ぶ、カテゴリーエントリーポイントを増やす宅配ピザ参入

#マーケティング #カテゴリーエントリーポイント #選ばれる理由

セブンイレブンが宅配ピザ市場に参入しました。なぜコンビニ業界の巨人がこの新たな挑戦をするのでしょうか?

今回はマーケティングの 「カテゴリーエントリーポイント」 という切り口で、セブンイレブンの狙いを紐解きます。

ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

セブンイレブンが宅配ピザを開始


セブン-イレブン・ジャパンが、2024年8月に全国200店舗で宅配ピザサービスを開始しました。

それまでは30店で試験的に提供していた宅配ピザサービスを全国に拡大させました。

ユーザーはセブンのデリバリーサービス 「7NOW (セブンナウ) 」 を使ってピザを注文します。注文から最短20分で焼きたてのピザを配達されます。

全国スタート時点で用意されたピザのメニューは 「マルゲリータ」 (税込780円) と 「照り焼きチキン」 (税込880円) の2種類で、いずれも1 ~ 2人向けの小サイズです。冷凍ピザを焼き上げてから配達する仕組みです。

セブンの狙い


セブンイレブンが宅配ピザ市場に参入する意図は、マーケティングの観点から見ると 「カテゴリーエントリーポイント」 を増やすことにあります。

カテゴリーエントリーポイントを増やす

カテゴリーエントリーポイントとは、お客さんが特定の商品やサービスを利用する際に思い出すシチュエーションや接点のことを指します。エントリーポイントという 「入口」 をつくり、カテゴリーに入ってきてもらうわけです。

セブン-イレブンは、デリバリーサービス 「7NOW」 において、今までよりもカテゴリーエントリーポイントを拡充することで、新規顧客の増加、既存顧客の利用頻度の増大、そして顧客単価の向上を目指しています。

現在、セブンイレブンは飲料や食品、日用品など約3000アイテムを宅配しており、これにピザを新たに加えることで、より多くのシチュエーションでセブンイレブンのデリバリーサービスを思い出してもらうことが期待できます。

具体的には、従来はコンビニやスーパーで売られてる食品や飲料の商品を自宅ですぐに受け取りたいときに、セブンイレブンからのデリバリーができる 7NOW が思い出されていました。今後は、ここに加えて熱々のピザをデリバリーしたいときにも、セブンイレブンの 7NOW が選ばれるようになることを狙うわけです。

期待される売上への貢献

ピザを新たなカテゴリーエントリーポイントとして導入することで、新規顧客の増加が見込まれます。

宅配ピザ市場はすでに競合サービスがいる競争が激しいマーケットです。今までは大手の宅配ビザデリバリーを使っていた人が、7NOW をはじめて使ってピザを注文してくれれば、セブンにとってのデリバリーサービスの新規顧客となります。

既存のピザデリバリーサービスのメニューは主にピザや揚げ物系、ドリンクですが、セブンイレブンはピザとともに幅広い種類の飲料や食品も一緒に届けることができるため、お客さんにとって一度の注文で多くのニーズを満たすことができるという利便性が高まります。

また、既存顧客の利用頻度が増えることも期待できます。

セブンイレブンの宅配サービスはすでに多くの固定客を持っていますが、ピザという新しい選択肢が加わることで、既存のお客さんが 7NOW のサービスを利用する機会が増えるでしょう。たとえば、晩ご飯を何にしようかと悩んでいる時に、飲み物やデザートと一緒にピザを注文することで、7NOW の利用頻度が自然と上がるという具合です。

さらに、顧客単価の向上も見込まれます。ピザは単価が比較的高い商品であり、さらに他の飲料や食品を組み合わせて注文することで、一度の注文あたりの売上が増加します。

このように、顧客獲得、利用頻度、単価向上からデリバリーサービスの収益が得られ、セブンイレブン全体の収益性向上に貢献することが期待されます。


そのときに 「選ばれる理由」 があるか


カテゴリーエントリーポイントを増やすことに加え、重要なのはお客さんに思い出してもらうシチュエーションにおいて 「自分たちが選ばれる理由」 があることです。

では 7NOW のピザが選ばれる理由はどこにあるのでしょうか?

品質と価格

セブンイレブンは、ピザの開発において徹底的なこだわりを見せています。

イタリア産のモッツァレラチーズやホールトマトを使用し、長時間熟成させた生地を手で伸ばして焼き上げるなど、専門店並みの品質を追求しています。

セブンイレブンはピザ専用のデリバリーバッグを開発し、ピザが冷めにくい工夫も施しています。

また、価格も他社と比較して競争力のある設定にしています。サイズを小さく1 ~ 2名向けとし、マルゲリータは税込780円、照り焼きチキンは税込880円というリーズナブルな価格設定です。品質と価格の両面でお客さんに満足してもらえる商品を提供しています。

最短20分のデリバリー

7NOW のピザのデリバリーは、最短20分で届けるスピーディーなサービスが特徴です。他の宅配ピザ大手3社が通常最短30分程度をうたうのに対し、差が10分とはいえ見逃せない利便性です。

このように、セブンイレブンはピザの品質、価格、スピードの三拍子をそろえることで、競争激しい宅配ピザ市場でのポジションを確立しようとしています。

まとめ


今回は、セブンイレブンが宅配ピザに参入したという話を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • セブンイレブンが宅配ピザ市場に参入する意図は、カテゴリーエントリーポイント (CEP) を増やし 「自分たちが選ばれる理由」 をつくること

  • 従来はセブンイレブンは飲料や食品、日用品など約3000アイテムを 7NOW から宅配していた。ピザという CEP を加えることで、より多くのシチュエーションでセブンイレブンのデリバリーサービスを思い出してもらうことが期待できる

  • ピザが新たな CEP になることで、新規顧客の増加が見込まれる。また、既存顧客の利用頻度の向上、ピザは単価が高く他の商品と組み合わせることで顧客単価も上がり、セブンイレブンの収益性が向上する


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。