投稿日 2024/11/26

お客さんの "意図" をとらえる。Google 検索広告 「インテントマッチ」 に学ぶ、顧客文脈まで理解することの重要性

#マーケティング #顧客文脈 #意図

Google が検索広告の 「部分一致」 の日本語名称を、「インテントマッチ」 に変えました。

インテントマッチと改称したのは、単なる名称変更ではありません。そこには、マーケティングの本質に迫る示唆が隠されています。

今回は、Google の決断から学べるマーケティングの真髄と、それを実践するためのヒントをお届けします。お客さんの心の奥深くまで迫るマーケティングについて、ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

Google 検索広告の 「部分一致」 が 「インテントマッチ」 に変更


Google は検索広告の 「部分一致」 を 「インテント マッチ」 に改称しました。名称変更は2024年7月に実施されました (参考記事) 。

インテントマッチに変えた背景は、Google AI や言語モデルの進化により、検索広告の精度が飛躍的に向上したことに加え、部分一致という名称が現状の機能を正確に表していないためです。

部分一致と完全一致

検索広告では、広告をした人が入力する検索キーワードにもとづいて広告が表示されます。

検索キーワードをいかに捉えるかが肝になりますが、検索ワードをどこまで捉えるかには、「部分一致 (今後はインテントマッチ) 」 の他に、「完全一致」 や 「フレーズ一致」 の3つがあります。

たとえば Google 検索広告で、「一人旅 温泉」 というキーワードを設定したとします。


インテントマッチでは、AI が検索する人のインテント (意図) を予想し、設定キーワード (一人旅 温泉) とは一致していない検索だとしても、たとえば 「湯治の旅」 や 「大宮から電車で行ける温泉」 に対しても、同じ意図があるとみなして広告を配信します。

これに対し、完全一致では 「一人旅 温泉」 のみの検索に広告を表示します。

フレーズ一致では、指定した 「一人旅 温泉」 に加えて、「ひとり旅 温泉 おすすめ」 など指定キーワードに単語を追加した検索に対しても広告が出ます。

インテントマッチ、完全一致、フレーズ一致をまとめると、配信範囲が広い順にインテントマッチ、フレーズ一致、完全一致です。

完全一致は指定キーワードだけをピンポイントに狙う、インテントマッチは検索した人の意図を読み取り、指定したキーワード以外にも同じ検索の意図があると推測できれば広告を配信します。

Google のリブランディングから得られる学び


Google が検索広告の 「部分一致」 を、新しく 「インテントマッチ」 と名称変更をするのは、Google 検索サービスのリブランディングと見ることができます。

Google のリブランディングの狙いは、BtoB 領域での検索広告における 「生活者の意図をとらえる重要性を示すこと」 です。このように読み解くと、この事例からはマーケティングへの示唆が得られます。

インテントマッチを使う意味

インテントとは、英語で 「意図」 を意味します。

検索広告において 「完全一致」 とは先ほど見たように、設定した検索キーワードと完全に一致する検索キーワード (検索クエリ) に対して広告を表示する手法でした。一方の 「インテントマッチ」 では、検索キーワード自体に完全に一致しなくても、その背景にある検索した人の意図にもとづいて広告を表示することできます。

先ほどの例をもう一度使うと、「一人旅 温泉」 という検索キーワードを設定した場合、完全一致では 「一人旅 温泉」 というキーワードでの検索結果画面にのみ広告が表示されます。

インテントマッチでは、「大宮から電車で行ける温泉」 や 「リフレッシュ旅行」 、「デトックスできる温泉」 など、もともとの設定キーワード (一人旅 温泉) とは異なるものの、検索意図が共通していると推測できる検索結果画面にも広告が出ます。

検索で情報を手に入れたい人が 「一人旅 温泉」 と検索する背景には、ただ温泉に行きたいというニーズだけでなく、リフレッシュしたい、ストレスを解消したいというもう一段深い意図が隠れていることでしょう。このように、表面的なキーワードの裏にある検索者の本当の意図を理解することで、より的確な広告配信が可能になります。

インテントマッチは、より広い検索ニーズをカバーし、潜在的な見込み顧客にも広告を出せる手法なのです。

顧客文脈の理解

インテントという検索した人の意図を把握するということは、検索キーワードの表面的な意味にとどまらず、背後にある顧客文脈も理解することです。

マーケティングには 「お客さんが欲しくて買ったのはドリルではなく、本当に欲しいのは穴を開けることである」 という有名な格言があります。お客さんが表面的に求めているもの (ドリル) ではなく、その背後にある真の欲求 (穴を開けたい) を理解する重要性を示す言葉です。

インテントを捉えるとは、ドリルと検索した人が望んでいることとして 「穴を開けたい」 まで読み取り、奥にある隠れたニーズを満たそうとすることなのです。

奥にある本当の望みまで理解する

Google の検索広告のリブランディングから得られる学びを汎用化すると、顧客理解の重要性です。

表面的な顧客ニーズだけにとどまらず、背景となっている顧客文脈を深く理解することが大事です。これは検索広告に限らず、すべてのマーケティング活動において当てはまります。顧客文脈を捉え、お客さんの本当の欲求に応えることが大切なのです。

たとえば、あるビジネスパーソンが 「おすすめのビジネス書」 と検索する場合、その背後には単にビジネスの知識を得たいという意図だけでなく、キャリアアップを目指したい、新しいスキルを身につけて自分を成長させたいという意図が隠れていたります。

他の例では、消費者が 「プロテイン 食品」 と検索する場合、筋肉をつけたいという思いだけでなく、より健康的なライフスタイルにしたい、スリムになってワンサイズダウンした服を着たい意図があるかもしれません。

このように、Google のリブランディングから学べるのは、顧客理解の深さをどこまでいけるかです。

お客さんの本当の意図を捉えることで、より効果的なマーケティングができ、顧客満足度の向上につながります。

まとめ


今回は Google が検索広告の部分一致を 「インテントマッチ」 に名称変更をしたという話から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 部分一致をインテントマッチと呼び方を変えた Google の検索広告リブランディングから学べるのは、お客さんの意図などの 「顧客文脈」 を深く理解する重要性

  • 「お客さんが欲しいのはドリルではなく穴を開けることである」 という格言が示すように、お客さんの表面的なニーズだけでなく、その背後にある本当の欲求を理解することが大事


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。