#マーケティング #ジョブ理論 #本
今回は書評です。
こちらの本の 「ジョブ理論」 完全理解読本 - ビジネスに活かすクリステンセン最新理論 (津田真吾, INDEEJapan) から、ジョブ理論を解説します。
ジョブ理論を活用すれば、お客さんの隠れたニーズを発見でき、ビジネスに新たな視点をもたらします。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
本書の概要
こちらの本はクレイトン・クリステンセンの書籍 「ジョブ理論」 を、実践的にわかりやすく解説した本です。
事例に QB ハウスを使うなど、日本人にとっても馴染みのある内容とし、実際のビジネスに使えるように書かれています。
本書の著者の津田真吾さんと INDEE Japan はクリステンセンの設立したイノサイト社と提携するパートナーです。クリステンセンの 「ジョブ理論」 の本の解説も担当しました。
ジョブ理論
提唱したのはクリステンセンで、もともとの英語では "Jobs to Be Done (JTBD) " といいます。日本語に直訳すれば 「片付けたい用事」 や 「済ませたい仕事」 という意味です。
ジョブの定義
ジョブの定義は、「ある特定の状況で人が遂げたい進歩 (progress) 」 です。
クリステンセンはジョブを次のように表現しました。
the progress that the customer is trying to make in a given circumstance — what the customer hopes to accomplish. This is what we’ve come to call the job to be done.
ある状況において顧客が行おうとしている進歩、つまり顧客が達成したいと考えていること。これが、私たちが 「やるべき仕事 (job to be done) 」 と呼ぶようになったものだ。
ジョブにもう少し意訳を入れると、ジョブという進歩とは、人が置かれた状況において達成したい目的、解決したい問題、対処したい課題を指します。
ジョブ理論で特徴的なのは、商品やサービスのことをジョブを済ませるために 「雇うもの」 ととらえることにあります。人 (雇用者) が商品を 「被雇用者」 として雇い、働いてもらうことでジョブが完了し、状況が進歩するという考え方です。
ジョブ理論の概要についてまとめると、次のように整理できます。
- 顧客にはやるべきジョブがあり、それを解決しようとしたときに特定の商品やサービスを消費する
- 顧客の置かれた 「状況」 が何を消費 (雇用) するかを左右する
- ジョブには機能的な側面だけでなく、感情的、社会的側面がある
- やるべきジョブが不十分にしか解決されておらず、よりよい解決策が提示されて、初めて新しい解決策を採用しようとする
- 売り手の目的は商品やサービスを売ることだが、顧客の目的は商品を雇ってジョブを済ませること
ジョブの機能的・感情的・社会的な要素
機能、感情、社会というジョブの3つの要素は、ジョブの目的に応じた分類です。
機能的ジョブは 「どのように遂げるか」 という観点でお客さんから評価されるものです。感情的ジョブは 「どう感じるか」 、社会的ジョブは 「どう見られるか」 で評価されます。
3つ目の社会的ジョブについてのもう少し補足です。
人間は社会的な動物であり、誰しも他人の目が気になってしまうものです。人は他人から 「成功している」 や 「センスがよい」 と誰しも思われたいという気持ちを持っています。
このようにして生じる 「~ に見られたい」 という社会的な側面がジョブには含まれます。たとえば、私たちが身につけているものの多くは、他人にどう見られたいかという観点で選ばれているものです。
ジョブ理論の実践
ジョブの見出し方
お客さんのジョブを把握するには、お客さんとの対話や観察を通じて 「状況」 と 「行動」 、そのときの 「心理」 までを深く理解することが大事です。
ジョブを見出すために、次の5つの問いを意識して投げかけてみるといいでしょう。
- その人がなし遂げようとしている進歩は何か。求めている進歩の機能的、感情的、社会的な側面はどのようなものか
- 困っていたり、苦労している、不満に思っている 「状況」 は何か
- 進歩をなし遂げることを阻む障害物は何か
- 不完全な解決策で我慢し、間に合わせの行動をとっていないか
- その人にとって、より良い解決策となる品質の定義や基準は何か。また、その解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か
本書では、ジョブをより理解するために4つの要素に分解してとらえます。
ジョブ (Job) 、目的 (Objective) 、障害 (Barriers) 、代替解決策 (Solutions) です。4つの頭文字をとると JOBS となるので覚えやすいですね。
ジョブから解決策 (ジョブスペック) へ
お客さんの状況を理解しジョブをとらえ、遂げようとしている進歩に共感した後は、お客さんが実際にやっていることを客観的に観察し、「違和感」 を探します。
ここで言う違和感とは、状況とジョブを見たときに、現状のジョブを完了させるための解決策 (すでに雇用されているもの) への疑問やモヤモヤ感です。こうした違和感を持てるかどうかが、その先で価値あるビジネス機会を発見できるかどうかを左右します。
ジョブを完了するためのポイントになるのが 「ジョブスペック」 です。
ジョブスペックは製品のスペックとは異なり、ジョブを解決する際にお客さんが重視する要素です。言い換えると、ジョブを片づける際にお客さんがどのような体験を望んでいるのかを示すのがジョブスペックとなります。
アーリーアダプターとアーリーマジョリティ
アーリーアダプターは切実なジョブを持っているため、積極的に解決策を探しています。アーリーアダプターは抱えているジョブを解決するために、さまざまな解決策を試し、代替策を取っているわけです。
積極的に探しているということは、知名度がそれほどない企業がつくった試作品のような新商品であっても採用する可能性があり、その試作品に対して建設的な意見をしてくれることも期待できます。アーリーアダプターに出会えれば、有意義なフィードバックを得られるだけでなく、初期のユーザーとなってくれることもあります。
逆にアーリーアダプターに受け入れられなければ、その後に続くとされる市場の大半を占めるアーリーマジョリティとレイトマジョリティを攻略することは難しいでしょう。というのは、アーリーマジョリティは同じジョブを抱えていても、実績のある解決策を選ぶからです (一方のアーリーアダプターは実績をそこまで重視しない) 。
アーリーアダプターは新しいものも積極的に使い問題解決へとつなげるため、アーリーマジョリティへの影響力があります。アーリーマジョリティはアーリーアダプターが、いわば 「毒味」 をしたものしか食べないグループなのです。
ジョブへの解決策をつくるという観点では、アーリーアダプターのジョブと求めるジョブスペックを把握することが 「お客さんの声を聞く」 ことの目指すところになります。
まとめ
今回は、書籍 「ジョブ理論」 完全理解読本 - ビジネスに活かすクリステンセン最新理論 (津田真吾, INDEEJapan) を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ジョブとは、特定の状況で人が遂げたい進歩 (progress) 。英語では 「Jobs to Be Done (JTBD) 」 と言う。商品やサービスはお客さんのジョブを片付けるために 「雇われるもの」 と捉える。お客さんは求める進歩を達成するために特定の商品やサービスを選ぶ
- ジョブの見出し方は、お客さんとの対話や観察を通じて行う。お客さんの状況と行動を客観的に観察し、現状の解決策との 「違和感」 を探ることから始まる。この違和感こそが新たなビジネス機会につながる
- ジョブを完了するための解決策には 「ジョブスペック」 がポイント。ジョブスペックは、製品のスペックとは異なり、ジョブを解決するときにお客さんが重視する要素や望む体験
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