#マーケティング #報告書 #マーケティングリサーチ
ビジネスの現場では、日報や外部イベント参加の報告書を書く機会は多いものです。
実は、「読み手 (上司など) に喜ばれる報告書」 と 「読むとフラストレーションがたまる報告書」 には、明確な違いがあります。良い報告書には共通点があります。
では、どうすれば読み手にとって良い報告書が書けるのでしょうか?
今回は、誰もが陥りやすい 「わかりにくい報告書」 になってしまう落とし穴と、それを避け良い報告書をつくる方法を例とともに解説します。
わかりやすい日報とは
私は仕事絡みで普段からよく、ビジネスでの報告書、たとえばマーケティングリサーチのレポートや、展示会などの外部イベントへの参加レポートを読む機会があります。
いろいろな方の記載内容を見比べると、良い報告書には共通点があることに気づきます。
良い報告書
ちなみにここで言う良い報告書とは、読み手 (例: 上司) からすると、次のことが一度読んだだけでスッと入ってくる報告書です。
- どういう背景や状況、目的のもとで
- その人が何をやり
- 何が成果としてうまくいき、何がうまくいかなかったのか (問題は何か)
- 次のアクションは何か、(問題があれば) どのように困難を乗り越えようとしているか
- それによって、次にどんなことを期待できるか、どのような成果を出そうとしているか (期日も入っている)
これらが手に取るようにわかるので、必要に応じてフィードバックもしやすくなります。
わかりにくい日報、良い日報
ではわかりにいく日報と、良い日報には、それぞれどういった共通点があるのでしょうか?
具体例で見ていくと、たとえば日報では 「わかりにくい報告」 と 「良い報告」 には次のようなものがあります。
- 抽象的な内容
- 自分がやった仕事内容のみの記述
- 過去の出来事だけの "報告" しかない
✓ 良い日報の特徴
- 抽象論で終わらず、具体的な内容まで落とし込まれている
- やった仕事から達成した成果が書かれている
- 過去と現在だけではなく、今後の対応まで踏み込んでいる
具体的な日報例
わかりにくい日報、良い日報のそれぞれの特徴を反映した例を見てみましょう。
わかりにくい日報の例
たとえばこんな感じです。
- 顧客対応を行いました
- 資料作成に取り組みました
- データ入力作業を実施しました
- 今月の売上目標達成は前月より改善し、まもなく達成見込み
本日の業務報告
以上です。
書いていることが具体的ではなく、やったことの成果がわからず、次に何をするかも不明な内容になってしまっています。
良い日報の例
それに対して良い日報は、たとえば次のような内容になります。
- 担当者と30分の商談を実施
- 当社のサービス Z の導入に関心を示す
- 具体的な導入コストの見積もりを要求される
- [Next] 明日中に見積書を作成し、提出予定
- 競合他社との比較表を完成 (全15項目)
- 自社製品の強みを3点に絞り込み、図解化
- 現在の完成率 80% (残りは導入事例の追加)
- [Next] 週明け火曜日の部内共有会までに完成させる
- 過去3ヶ月分の未入力データ (約200件) を全て入力完了
- データ分析の結果、リピート率が前年同期比 5% 向上していることが判明
- [Next] 来週の営業戦略会議で報告予定
- 今月の売上目標達成率は 95% (前月比+10%)
- 新規問い合わせ数は15件 (目標20件)
- [Next] 問い合わせ数増加に向けて、広告投入の計画を立案し来週中に提出する
- A社 向け見積書作成と提出
- 新製品プレゼン資料の完成
- 広告計画の立案
■ 本日の業務報告
1. A 社の新規顧客獲得
2. 新製品プレゼン資料作成
3. 顧客データベースの更新
4. 売上目標への達成状況
■ 明日の主要タスク
以上です。
良い日報の例では、各業務について具体的な内容、達成した成果、そして今後の対応までもが記載されています。上記の例には入れませんでしたが、問題があれば事象と原因、対策やアクションプランまで書かれているものです。
読み手である上司や同僚が状況を把握しやすく、次のアクションへの助言や連携してのサポートにも動きやすい情報が含まれています。
マーケティングリサーチ報告書への応用
ここまでの日報の話は、汎用化するとさまざまなビジネスでの報告書をつくるビジネスシーンに応用できます。
それでは後半のパートでは、マーケティングリサーチの報告書に当てはめてみます。
前半パートの3つのポイントは、次のとおりでした。
- 抽象的で終わらず、具体的な内容まで落とし込む
- プロセスだけではなく、成果や結果、結論まで導く
- 過去の事象だけではなく、未来への洞察まで入れる
では順番に、具体的な調査の例と併せて見ていきましょう。
抽象的で終わらず、具体的な内容まで落とし込む
マーケティングリサーチの報告では、抽象的な意見や感想だけで終わらず、具体的なデータや事実にもとづいた内容で書くことが大切です。
たとえば、インタビューで対象者が 「この商品は使いやすい」 と述べた場合、さらにもう少し具体的に 「どう使いやすいのか」 までを対象者が発言していたのについて、詳しく記載するといいでしょう。
[記載例 1]
インタビュー対象者の発言は 「この新しい掃除機はとても使いやすいです」 だった。
新しい掃除機は、軽量で持ち運びやすく、特に階段を掃除する際に便利だという声が得られた。対象者は 「階段を掃除するときに、掃除機を持ったままで掃除をしても、掃除機が軽いので疲れることはなく、以前よりも掃除が楽になった」 と述べた。
他の例もあげておきますね。
[記載例 2]
20代女性へのアンケート結果の報告
✕ 悪い例: 商品 A は使いやすいという意見が多かった。
◯ 良い例: 商品 A について、20代女性の8割が 「ワンプッシュで適量が出るので使いやすい」 と評価。特に、忙しい朝の時間帯に重宝するという声が6割を占めた。
プロセスだけではなく、成果や結果、結論まで導く
調査から得られた成果や結果、そして結論までを明確に示すことがマーケティングリサーチの報告書では大事です。これにより、報告書の読み手は調査からの示唆、今後の方向性を理解しやすくなります。
[記載例 3]
インタビュー対象者の発言は 「新しい広告キャンペーンは目に留まりやすく、親しみやすいです」 だった。
新しい広告キャンペーンについて、ポジティブな反応の要因は、明るい色使いやキャッチフレーズ。たとえば調査対象者 B さんは 「広告を見た瞬間に興味を引かれ、すぐに商品の詳細を調べました」 と発言。今回の広告キャンペーンは認知度向上に寄与できると期待できる。
[記載例 4]
新商品のパッケージデザインに関するグループインタビューの報告
✕ 悪い例: 3つのデザイン案を提示し、お客さんの反応を見た。案 B の評価が高かった
◯ 良い例: 3つのデザイン案のうち案 B が最も高評価。理由として 「シンプルでわかりやすい」 「商品の特徴が一目でパッと入ってくる」 という点が挙げられた。よって、案 B をベースに、案 C の評価ポイントだった文字サイズへのフィードバックを取り入れ、案 B の文字を 1.2 倍程度に少し大きくする修正を加えることで、より多くのお客さんに訴求できる。
過去の事象だけではなく、未来への洞察まで入れる
収集したデータや事象という過去だけにとどまらず、その情報をもとに考察した未来の展望への提言まで言及することが大切です。
調査報告書が、戦略的な意思決定への参考情報への意味合いまで持つようになります。
[記載例 5]
イベントで自社ブースに来訪した参加者の発言は 「次回もこのイベントに参加したいです」 だった。
来訪者へのアンケートからも、今回のイベントに参加した方の 85% が、次回の参加も希望。ある方の自由記述には 「今回のイベントは有意義で、新たな製品情報を得られた。社内に持ち帰って検討したい。次回もイベントにぜひ参加したい」 。
この結果を踏まえ、次回イベントのブースでは、規模拡大や内容の充実をはかることでより多くの見込み客の獲得が期待できる。
[記載例 6]
既存顧客へのサービス満足度調査の報告
✕ 悪い例: 現在のサービスに対する満足度は 70%
◯ 良い例: 現在のサービスに対する満足度は 70% 、特に高評価だったのは 「スタッフの対応の丁寧さ」 で、90% のユーザーが回答。一方 「予約システムの使いにくさ」 に不満を持つお客さんが 30% いた。いくらスタッフの対応が丁寧でも、その後の予約プロセスでユーザーの不満を生んでいるため改善が必要。今後はオンライン予約システムの使いやすさを優先的に対応し、さらなる顧客満足度を目指したい (目標 80% 以上) 。具体的には、スマートフォンからでも使いやすい予約システムとし、LINE 連携機能の追加が効果的と考えられる。
以上のポイントを押さえることで、マーケティングリサーチの報告書は、単なるデータや情報の羅列ではなく、具体的で実用的な情報源となります。
読み手は調査結果から得られた洞察を理解しやすくなり、次のアクションプランを立てやすくなります。また、将来の戦略立案にも役立つ報告書となるでしょう。
まとめ
今回は報告書について考察しました。前半では日報、後半はマーケティングリサーチの報告書を取り上げました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 抽象的な内容
- 自分がやった仕事内容のみの記述
- 過去の出来事だけの報告しかない
✓ 良い報告書の特徴 (以下が明確に書かれている)
- どういう背景や状況、目的のもとで
- その人が何をやったか
- 何が成果としてうまくいき、何がうまくいかなかったのか (問題は何か)
- 次のアクションは何か、(問題があれば) どのように困難を乗り越えようとしているか
- それによって、次にどんなことが期待できるか、成果を出そうとしているか (期日を入れる)
✓ 良い報告書にするために
- 抽象的で終わらず、具体的な内容まで落とし込まれている
- プロセスだけではなく、成果や結果、結論まで導いている
- 過去の事象だけではなく、未来への洞察まで入れる
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