投稿日 2025/06/17

コンセプトが企画を変える! 「コンセプト・センス」 に学ぶ新しい提案のつくり方

#マーケティング #コンセプト #本

なんとなく今の仕事や企画の中身に満足できない…。
新しいアイデアを出したいけれど、いつも似たような内容になってしまう…。

そんなモヤモヤを感じたことはありませんか?

実はその違和感こそが、新しい方向性を見つけるきっかけになります。そこで大切なのが 「コンセプト」 という概念です。


こちらの書籍、 「コンセプト・センス - 正解のない時代の答えのつくりかた (吉田将英 (まさひで) ) 」 は、コンセプトとは何か、どうやってつくればいいか、コンセプトによって理想の未来へとつなげる独自の方法を解説しています。

ぜひ一緒にコンセプトのつくり方を学んでいきませんか?

本書の概要



こちらの本 「コンセプト・センス (吉田将英) 」 は、企画に関わる人にとって役に立つ内容です。

著者は電通での豊富な経験をもとに、コンセプトづくりの実践的な手法を分かりやすく解説しています。 広告やマーケティング業界はもちろん、組織のリーダーや経営者、自営業やフリーランスなどの方に向けて、企画の土台となる 「コンセプト」 をどうやって構築していくのかを明らかにしてくれます。

解説されるコンセプトをつくりあげる手法は、新商品の企画、新規事業の立ち上げ、組織でのチームビルディングといったさまざまなビジネスシーンだけでなく、キャリア設計、個人のプライベートでの計画 (例: 旅行プランなど) 、さらには人生設計にも活用できます。

 「何か違う」 「現状を変えたい」 というモヤモヤ感を抱えている方に、新しい方向性を見出すためのガイドとなる一冊です。

コンセプトとは


本書によれば、コンセプトとは 「企画という提案の方向性を示すもの」 です。

詳しく言うと、コンセプトは 「社会の既存の "当たり前" によって見落とされきた、人々がまだ自覚できていない満たされていない欲求を満たし、理想の社会に今より近づくための "提案の方向性"」 のことです。

例えば、まだインターネットが一般的ではなかった時代に 「世界中の情報をクリックひとつで検索できる社会」 を想像したとしましょう。

多くの人は 「インターネットは面倒そう」 とか 「こんなに多くの情報なんて必要?」 といった、インターネットを知る前は当たり前としてこんな感覚をもっていたかもしれません (バイアス) 。

しかしそこに 「実は人々はすぐに答えを知りたい」 という潜在的な望みが隠れていて (インサイト) 、「もし誰もが気軽に世界中の情報にいつでも気軽にアクセスできるとしたら?」 という将来像を描くことで (ビジョン) 、検索エンジンという 「コンセプト」 が生まれたわけです。

これは 「検索エンジンをつくる」 にとどまらず、「世の中に今の現状の延長線上にはない、こういう新しい良さを生み出し、便利な社会を実現する」 という提案の方向性があります。新しい方向性というコンセプトがあるからこそ、サービスのデザインや機能の開発、ユーザーとのコミュニケーションのあり方など、あらゆる意思決定がコンセプトに沿って一貫性を伴って進んでいくわけです。

このように、コンセプトはただ名前をつけることやキャッチコピーを考えることではありません。

今までとは違う新しい目指す場所 (ここではないどこかというビジョン) 、実現したい世界観にするために現実を捉え直し (インサイトの発掘) 、とらわれている常識から抜け出し (バイアスからの脱却) 、コンセプトは世の中の流れを角度を1度でも変えうる 「企て」 の骨子として機能するのです。

コンセプトがもたらす5つの効果


この本では、良いコンセプトがあることによって、企画やプロジェクトに与える効果を5つの点かち整理し、提示しています。

✓ コンセプトがもたらす効果
  1. 定まる
  2. 閃く
  3. 際立つ
  4. 集まる
  5. 続く


順番に見ていきましょう。

定まる

コンセプトがあることによって 「決め方の軸」 が明確になります。

どんなに新規性のあるプロジェクトでも、意思決定には迷いや衝突がつきものです。しかし、はじめに 「このプロジェクトはどんなバイアスのもとで満たられていなかったインサイトに応え、どんな未来をめざすのか」 というコンセプトをしっかり定めておくと、その後の判断の根拠が、このコンセプトを実現するために何が最適かに移り、無用な混乱や衝突が生じにくくなります。

閃く

コンセプトがあると、既存の思考の延長線上にないアイデアが生まれやすくなります。

たとえばカフェの新サービスを考える際に、「時間に追われ忙しい人にすばやく提供できるメニュー」 という "従来の延長線上" という尺度だけで考えると、ありきたりの案しか思い浮かばないかもしれません。

ところが、「日常の雑踏から離れ、一杯のコーヒーやお茶でその時だけは時計の針をゆっくりと進める場所を提供する」 というコンセプトを据えると、店舗の内装、メニュー、接客スタイルなどにおいて、アイデアが閃き発想の幅が広がります。

際立つ

コンセプトを中心に企画が形作られることによって、その企画ならではの 「これじゃないとダメ」 という感覚が生まれ、メンバー間での認識がそろいます。結果として多くの参加者が熱量をもって取り組みやすくなります。

デザインや発信のトンマナにも統一感が出るため、受け手にとってもコンセプトに共感しやすく、他とは違う際立った存在として知ってもらいやすくなります。

集まる

明確なコンセプトがあれば、コンセプトに共鳴する人や資源、資金が自然と集まりやすくなります。

たとえばスタートアップのピッチ (短時間での紹介やアピールへのプレゼンの場) などで、限られた時間で投資家の心をつかむためのに必要なのは 「ビジネスとしてどう優れているか」 だけではありません。

 「自分たちはこういう問題意識をもっていて、社会をこう変えていきたい (今の延長ではない "ここに行きたい" ) 」 というコンセプトを語ることにより、協力者や資金といった支援を呼び込む力が強まります。

続く

たとえプロジェクトの発案者が入れ替わっても、さらに時代が進んだで変わったとしても、コンセプトがしっかりしていれば取り組みや企画の人格が失わることはありません。

コンセプトという1本の軸が中心にあることで、一過性のブームで終わらず、「こういう世界を目指している企てである」 というコンセプトの意義を共有し続けることによって、長期的に価値をもたらし続ける基盤ができます。

コンセプトをつくる3つの要素


この本が定義するコンセプトは、バイアス、インサイト、ビジョンの3つの要素でできあがります。

バイアス, インサイト, ビジョン


  • Bias バイアス: バイアスとは、社会や業界の 「これが常識だ」 「こうするのが当たり前」 という思い込み。ここに疑問をもたずにいてはイノベーションは起こらない

  • Iisight インサイト: インサイトはまだ満たされていない隠れた欲求。「本当はこうしたいのに、世の中はまだ気づいていない」 や 「どこかでモヤモヤしている」 といった潜在的な望みなどの感情が発見されるとき、コンセプトの軸が見えてくる

  • Vision ビジョン: ビジョンは、隠れたインサイトを満たすことで、どんな理想の社会を実現したいのかという目指す世界観


バイアス、インサイト、ビジョンの3つの要素でつくられるのがコンセプトです。

コンセプトの例

では、コンセプトがどうなるかを、続けて民泊ビジネスを例にしてみます。先ほどのバイアスから整理をすると、

  • バイアス: 旅先での宿泊はホテルなどの企業が提供する宿泊施設を利用するのが当たり前

  • インサイト: 旅をより "その地域の日常" に近い形で楽しみたい。安く泊まりたいが、ただ安いだけではなく地元の文化や生活感を味わいたい

  • ビジョン: 旅行者が世界各地で現地の暮らしを体験し、受け入れる側 (ホスト) も地域の良さを提案でき、さらに旅行者との交流を通して新しい魅力を再発見する社会。「人々が世界中を旅しながら気軽に現地の暮らしを体験できるようになったらいいよね」 という世の中についての将来像

  • コンセプト: バイアス・インサイト・ビジョンの3つが結びつき、「個人の家や空き部屋を活用して、旅行者と地域住民がつながる宿泊サービスを提供する」 という提案の方向性が確立する


このように、既存の枠組みでは 「ホテルに泊まる」 という常識 (バイアス) に人々が縛られていたところに、実は旅行の本当の楽しみ方は "地元の人たちとの交流や生活体験" にあるのではないか (インサイト) を見出します。

実現したい未来像から世界観を描くことで (ビジョン) 、企画における提案の方向性、すなわち、バイアスに縛られた状態からの既存の延長ではなく意図的に角度を変えたコンセプトから、新たな宿泊ビジネスが立ち上がるというわけです。

まとめ


今回は、書籍 「コンセプト・センス - 正解のない時代の答えのつくりかた (吉田将英) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • コンセプトとは、社会の既存の 「当たり前」 によって見落としている欲求を満たし、理想の社会に近づくための 「提案の方向性」 であり、企画の核となるもの。新しい価値基準を提示し、常識にとらわれず、現実を少しでの変えていく 「企て」 の骨子

  • コンセプトをつくる3つの要素は、バイアス (社会の常識や思い込み) 、インサイト (まだ満たされていない隠れた欲求) 、ビジョン (実現したい理想の社会像) 。3つの要素が結びつき、新しい提案の方向性となるコンセプトが生まれる

  • 何も企てなければバイアスのある方向 (既存の延長線上) に進むところを、インサイトを起点にした別方向のビジョンに向かうよう、進む方向の角度を変えるのがコンセプト


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。