投稿日 2025/07/20

自分を "選ばれる商品" にする。マーケティング発想でキャリアの可能性を最大化する方法

#マーケティング #選ばれる理由 #ビジネスキャリア

仕事をがんばっているのに評価されない、なんとなく今の会社や働き方にモヤモヤしている、転職を考えているものの失敗したらどうしよう──。

もしあなたがそんな悩みを抱えているなら、マーケティングの視点を取り入れることで解決の糸口が見つかるかもしれません。

マーケティングは商売だけでなく、自分自身のキャリアにも応用できます。自分自身を 「商品」 と捉え、価値を高める戦略を立てることによって、より充実したキャリアを築くことができるのです。

では、具体的にどうすればいいのか?ぜひ一緒に考えていきましょう。

マーケティングの本質


あなたは 「マーケティング」 という言葉を聞いたときに、どんなイメージを持つでしょうか?

モノやサービスを売るためのテクニックや、広告や SNS を活用したマーケティングを思い浮かべるかもしれません。たしかにこれらもマーケティングですが、マーケティングの本質は 「お客さんから選ばれる理由をつくること」 にあります。

この考え方はマーケティングのことを広く捉えています。マーケティングはマーケティング部が専門的に行うのみならず、もっと広範囲の部署で、それこそ全社的に取り組む活動です。

そして、マーケティングを適用するのは企業の商品やサービスに限らず、自分自身のキャリア形成にも当てはまります。

マーケティングがキャリアに役立つ理由


では、なぜマーケティングがキャリア構築にも効果的なのでしょうか?

自分を必要とする "顧客" を意識できる

ビジネスでの商品・サービスのマーケティングでは、まず 「顧客は誰か」 を明確にすることが大事です。

これをキャリアに当てはめると、自分が働く上で "価値を感じてくれる相手" をどれだけ具体的にイメージできるかです。上司やクライアント、取引先、就活や転職では採用担当者など、自分にとっての "顧客" となる人が喜んでくれることは何かを考えることにより、自分の強みを活かす方向性が見えてきます。

それによって 「この仕事や活動は、誰に喜ばれているのか」 というマーケティング的な考え方に変わります。

自分の強みと独自性がはっきりする

マーケティングでは 「独自性の打ち出し」 も重要です。

似たような商品やサービスが乱立する中で、自社商品が選ばれるためには 「ここが他社とは違う強み」 という部分を磨き、お客さんにとって魅力的な価値につなげる必要があります。

キャリアでも同様です。「自分はこれが得意」 「誰にも負けないこの経験がある」 という訴求ポイントが大事です。マーケティングをキャリア構築にも取り入れることで 「自分にしか提供できない価値は何か」 を意識できるようになります。

継続的に PDCA を回せる

マーケティングの施策は、一度やったら終わりではなく、お客さんの反応をチェックしながら PDCA (Plan - Do - Check - Act) を回して改善していきます。

キャリアにおいても、上司のフィードバックや仕事の成果などを "顧客の反応" と捉えて、自分の働き方を調整し続けることが大切です。今の方向性・やり方でいいのか、もっと工夫できるところはないかを常に考え、行動をアップデートし続けることで、自分の強みも磨かれていきます。

自分を "選ばれる商品" に育てよう


それではもう少し具体的に、自分を 「相手から選ばれる商品」 と捉え、どのようにマーケティングをキャリア形成に活用するかの方法を見ていきましょう。

ステップは大きく6つです。

[Step 1] 働く意義 (Why) を言語化する

キャリアをマーケティングの視点で考える前に、そもそもとして 「自分はなぜ働くのか」 や 「どんなキャリアを築きたいのか」 という目的 (Why) を明確にすることが重要です。

これは、商品やサービスをマーケティングする際に 「なぜこの商品を提供するのか?」 という商品の存在意義を明らかにすることと同じです。キャリアにおいて自分のことを "選ばれる商品" に育てるためには、スキルを磨くだけにとどまらず、根底にある 「何のために働くのか」 という自分なりの軸を持つことが大切です。

たとえば、人の役に立つことで喜びを感じるから、新しい価値を生み出す仕事がしたいから、経済的な自立をしながら自分の得意なことを活かしたいからなど、働く理由は人それぞれです。Why を明確にすると、このあとに見ていく向き合う相手 (Who) 、提供する価値 (What) の方向性が定まり、マーケティングを活かしたキャリア形成につながります。

働く意義を考えずにスキルアップや転職活動をしてしまうと、一時的に選ばれることはあっても、長期的には自分の目指すキャリアはつくられません。だからこそ、まずは 「自分は何を大切にし、どのような仕事を通じて社会に貢献したいのか」 を言語化することが、キャリア形成におけるマーケティング活用の第一歩となるのです。

[Step 2] 注力顧客 (Who) を明確にする

働く意義となる Why を見出せたら、次に 「誰に選ばれたいのか」 を明確にします。"注力顧客" は、たとえば以下のように絞り込むとわかりやすいです。

  • 現在の会社の上司や同僚: 今の会社の仕事や部署で評価を高めたい, 信頼を得て昇進したい
  • 取引先やクライアント: お客様の課題を解決して 「この人に任せたい」 と思ってもらいたい
  • 転職先や採用担当者: 自分を新しい環境で活かしたい, 採用面接で好印象を与えたい


向き合う相手によって求められることや成果 (相手にとっての価値) は異なります。誰に向けて自分の価値を発揮するのかを決めれば、その次に何を磨くべきかという What が見えやすくなります。

[Step 3] 自分の提供価値 (What) を整理する

自分が相手に対してどんな価値を提供できるかを 「便益」 と 「独自性」 に分けて考えます。

  • 便益: 自分が具体的に相手に役立てること。たとえばデータ分析ができる、プレゼンが得意、コミュニケーションや調整能力があるなど

  • 独自性: 自分ならではの他の人との差異化要素。たとえばデータ分析ではチームを引っ張り数字を追える、営業での商談では相手の印象に残し気に入られるキャラクターなど。同じようなスキルでも自分だけのスタイルがあると独自性を打ち出せる


会社や世の中に自分が提供する価値を便益と独自性に分解して言語化し、具体的なこれまでの仕事での経験や実績 (例: プロジェクトの成功体験や失敗から学んだことなど) とセットで整理しておくといいでしょう。相手に伝えるときに説得力が増します。

[Step 4] 自分のブランドやポジショニングを考える

マーケティングでは 「STP (Segmentation, Targeting, Positioning) 」 というフレームワークが有名です。キャリアでも同じで、ターゲットが定まったら、次は自分のポジションをどう取りたいかを考えます。

  • 幅広く、そつなくこなすゼネラリスト
  • ある分野に特化して圧倒的な強みを発揮するスペシャリスト
  • 橋渡しや調整役としての柔軟さを発揮するバランサー


自分自身をブランドに見立て、自分のブランドコンセプトをつくります。

自分の強みや興味関心にも合った "自分ブランド" として設計し、注力顧客に 「この人 (あなた) と言えばこういう魅力がある」 とイメージしてもらえるようにするわけです。

[Step 5] 自分をアピールする仕組みをつくる (Promotion) 

どれだけすばらしいスキルを持っていたとしても、まわりに知ってもらえなければ選ばれることはありません。

マーケティングの 4P で言うプロモーションに当たる活動を意識して、社内外に自分の強みを発信していきます。

  • 社内外での発表や報告: プレゼンや部署やチームの会議で成果を定期的に共有し 「あの人はこういうことが得意なんだ」 と理解してもらう

  • SNS での情報発信: 業務知識のアウトプットや学習内容を発信することで (守秘義務の遵守に注意) 、外部の人にも自分の存在を知ってもらう

  • コミュニティへの参加・登壇: 興味のある分野の勉強会やセミナーに参加し、積極的に質問したり、登壇の機会があれば受けてみるのも良い


このように、自分の情報を発信し、見える化しておくことで、注力顧客となる人の目に留まりやすくなります。

[Step 6] フィードバックを得て改善する PDCA を回す

マーケティングと同じく、キャリアにおいても "顧客の反応" を観察して反映していくことが大事です。

上司や同僚からの評価、クライアントの声、転職活動での面接官からのフィードバックなどをもとに、どこを伸ばせばより評価されるのか、どんな改善が必要なのかを考えます。

  • 今のアピール方法は相手にはどう伝わっているか
  • 求められているスキルと現状にギャップはないか
  • 伝わりづらい部分はないか


これらを確認し、必要に応じて再度アピールポイントを見直します。

マーケティングを活かすポイント


では最後に、キャリアにマーケティングを活かすポイントを整理してみます。

  • 顧客目線を忘れない: 誰が、どんなときに、自分のどの部分を評価してくれるのかを意識する

  • 自分の強みを言語化する: 何が得意で他の人とどう違うのかを具体的なエピソードとともにまとめておくと、自己 PR に活用できる

  • 選ばれるための "ブランドコンセプト" を決める: 自分がどんなブランドとして見られたいのかを考え、その方向に合った方針をコンセプトにする。コンセプトを体現する行動を続けることで、一貫したブランドイメージをつくることができる

  • 実行し継続的に PDCA を回す: 行動に移し、成果を確認し、足りない部分を補い、次の行動につなげるというサイクルを回す


自分のキャリアにマーケティングの考え方や方法を取り入れると、「誰に選ばれたいのか (顧客は誰か) 」 と 「どんな価値をもたらすのか (価値実現) 」 を具体的に考える習慣が身につきます。あなたの 「自分らしさ」 を見極める手がかりにもなるでしょう。

自分のことを "商品" と見立て、顧客を定め、顧客ニーズを意識し、強みや独自性を磨き続けることが "選ばれる商品" への道を切り開きます。

まとめ


今回は、キャリア形成にマーケティングを取り入れることの意義や方法を考えました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • マーケティングの本質は選ばれる理由をつくること。企業の商品やサービスだけでなく、キャリア形成にも応用できる

  • キャリアにマーケティング思考を取り入れると、上司や同僚・クライアント・採用担当者などを "顧客" と捉えられる。お客さんに必要とされる価値を提供する姿勢が重要

  • 自分自身を 「選ばれる商品」 に育てるには、6つのステップがある
    Step 1: 働く意義 (Why) を言語化する
    Step 2: 注力顧客 (Who) を明確にする
    Step 3: 自分が顧客に提供する価値 (What) を整理する
    Step 4: 自分というブランドやポジショニングを考える
    Step 5: 自分をアピールする仕組みをつくる
    Step 6: PDCA から行動しフィードバックを得て改善する


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。