投稿日 2010/11/23

欧州最大の LCC ライアンエアーに見る戦略ストーリー


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今週の日経ビジネス2010.11.22の特集記事はアップルを取り上げています ( 「アップルの真実 ジョブズの天下はいつまで続くのか?」 ) 。

個人的に興味深かったのは、このアップルの次に掲載されていた欧州最大の航空会社であるライアンエアーについての記事でした。タイトルは 「『究極の目標は運賃ゼロ』 異端経営で圧倒的安さを実現」 。今回のエントリーではライアンエアーの戦略ストーリーについて考えてみます。
投稿日 2010/11/20

ネットテレビが変えるもの

2010年5月にグーグルはテレビとネットの機能を併せ持つグーグルTVの構想を発表しました。そして10月下旬、グーグルとソニーによる「ソニーインターネットTV」がアメリカで発売されました。

「Android」OSを使ったグーグルTVの特徴は、テレビ画面に表示される検索窓にキーワードを入力することでテレビ番組、ネット上の動画、Webサイトなどを横断的に検索し、その映像を再生することができる点にあります。

■視聴を180度変える

このようにネットテレビはテレビ+パソコンの両方の要素を兼ね備えていますが、単純に1+1=2となるかと言うと個人的にはそれ以上のインパクトがあると思っています。なぜならば、私たちの視聴を180度異なるものにする可能性があると考えているからです。

従来のテレビ視聴は、テレビ局が番組をどの曜日のどの時間に放送するかを決めていました。よって視聴者は見たい番組が放送される時間に合わせてテレビをつけます。もちろん、DVDなどでの録画で見るパターンもありますが、基本的な構図はテレビ局が番組放送をコントロールしています。

一方のネットテレビ。上記のような番組放送も依然として残ると思いますが、前述のグーグルTVの特徴のようにネット上の動画に加え、オンデマンドでの視聴も増えていくはずです(現時点でも一部オンデマンドはありますが)。このように視聴者自らがYouTubeなどの動画やオンデマンドの番組を見るようになるわけで、ネットテレビにおいては視聴者が映像コンテンツを見ることに対して主導権を握ることになります。先ほど視聴を180度変えると表現したのは、主従関係が変わるこの状況を指してのことです(図1)。




ネット上にはYouTubeなどの動画サイトがあり、あるいはおそらく今後はネット上での映画配信や番組のオンデマンドサービスの充実など、ユーザーはテレビ番組放送だけではなく、様々なコンテンツを楽しむことができるようになります。

ところが多くのコンテンツが選択肢になるほど、放送されるTV番組は相対的に今よりも見られなくなるということが起こってくるはずです。良質な番組は今後も視聴者からは支持されるでしょうが、そうでない番組は見てもらえなくなる。ネットテレビによって自分の見たい番組を簡単に探すことができ、オンデマンドで用意されているので、好きな時間に自分の見たいコンテンツを自由に見る楽しさ、つまりコントロールできることをユーザーは覚えてしまうのではないでしょうか。


投稿日 2010/11/13

ソーシャルはユニバースかマルチバースか

11月4日にソフトバンクモバイルとミクシィは、「ソーシャルフォン」サービスの提供を開始すると発表しました。

■ソーシャルがモバイルのベースに

発表内容を見ると、「ソーシャルフォン」サービスは、mixiのさまざまな機能とスマートフォンの機能を連動させることで、友人・知人とのコミュニケーションを、より便利に楽しんでいただけるスマートフォン向けのアプリケーションサービスです、とあり、2011年2月より開始するようです。スマートフォンの電話帳とmixiの友人データが自動的に同期するなど、これまでの「スマートフォン+SNSアプリ」とは異なり、注目に値すると思っています。(とはいえ、買うことはないかと思いますが)

SNS世界最大手のFacebookは、世界でユーザーが5億人を突破し現在も増え続けているようです。CEOのZuckerberg氏はFacebookケータイについてあるインタビューで次のように語っています。(出所:TechCrunch) Our whole strategy is not to build any specific device or integration or anything like that. (中略) Our strategy is very horizontal. We’re trying to build a social layer for everything. (中略) So I guess, we view it primarily as a platform. Our role is to be a platform for making all of these apps more social,  英語部分をすごく簡単に言ってしまえば、Facebookケータイではなくプラットフォームをつくりたいとのこと。

また、別の記事(Scobleizer)によれば、Facebookがソーシャルフォンそのものを開発しないであろう理由として、以下を挙げています。 Facebook is so powerful that mobile companies are forced to build their own Facebook apps, after all, who would buy a phone that doesn’t have Facebook today?  すでにたくさんのケータイにはフェースブックのアプリが入っており、故に、フェースブック自身がケータイを開発する必要がないことを示唆しています(記事ではこれ以外にも開発しない理由が書かれています)。

ソーシャルケータイをリリースするmixi、自らは開発しないと説明するFacebook。どちらの戦略が正しいかは現時点ではわかりませんが、いずれにしてもSNSなどのソーシャルグラフ(人間関係)をモバイルであたかも身に着けるような方向性に進んでいるように思います。上記のmixiフォンではついに、SNSのデータが電話帳に同期します。これまでは、モバイル機能の1つでしかなかったソーシャルが、ソーシャルをベースとしたモバイルの登場です(図1)。



■ソーシャルは1つになるのか?

さて、私たちは複数の人間関係を持っています。家族、彼氏・彼女、友人、バイト仲間、仕事関係、などなどです。ここで、いくつかの人間関係を下図のようなマトリクスで整理してみます(図2)。



リアル世界では、これまでは自分の持つ人間関係は別々に存在していました。しかしSNSなどの登場により人間関係がSNS上でつながり、自分に関係ある人たちがフラットに並びつつあるような気がします。今後ますます多くの人がSNSを利用した場合、そこには仕事の同僚もいれば、幼馴染もいたりとか、1つの大きな人間関係がソーシャル上に存在することになっていくことも考えられます(図3)。いや、もしかしたら、ビジネスライクなSNS、友達用のカジュアルなSNS、などと、複数のソーシャルを持つのかもしれません(図4)。

ユニバース型SNS




マルチバース型SNS



人間は社会的な動物です。人とつながりたいという気持ちは普遍的な感情だと思います。これは何もSNSができたからでは決してなく、大昔からずっとそうだったはずです。人間の三大欲求には含まれませんが、人間の本能に近い欲求なのではないでしょうか。ソーシャルというキーワードはますますいろんなところに入り込んでいきそうです。


※参考情報

「ソーシャルフォン®」サービスを提供開始 (ソフトバンクモバイル株式会社)
http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2010/20101104_03/index.html

Interview With Mark Zuckerberg On The “Facebook Phone” (TechCrunch)
http://techcrunch.com/2010/09/22/zuckerberg-interview-facebook-phone/

Why Mark Zuckerberg would be an idiot to announce a hardware device today (scobleizer)
http://scobleizer.com/2010/11/03/why-mark-zuckerberg-would-be-an-idiot-to-announce-a-hardware-device-today/


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。