ビジネスではもちろん、ビジネス以外のあらゆる世界において、勝ち残るにはどの場所で戦うかの 「戦場」 が大事になります。
今回は、戦場をいかに選ぶか、そこでの勝ち筋の見出し方を考察します。マーケティングの成功への道筋をぜひ一緒に見つけていきましょう。
戦場を決める
ビジネスにおいて 「戦場」 を決めることは重要です。
自社の商品やサービスがどの市場で戦うか、つまり 「Where (どこで) 」 を特定することを意味します。戦場のニュアンスをマーケティングの文脈で捉えると、消費者やお客さんが思い浮かべる特定のカテゴリーや利用シーンを指します。
その戦場において、消費者が自社商品を思いつくかどうかが勝敗のカギを握ります。「〇〇 と言えば」 というフレーズの後に自社商品が続くかどうかです。
たとえば 「フライドチキンと言えばケンタッキー」 のように、あるカテゴリーですでに強い純粋想起 (何もヒントなしに思い出せること) を持っているブランドに、今から対抗していくのは簡単ではありません。しかし、市場を絞ることで勝機を見出すことができます。
具体的には 「フライドチキン」 という大きなカテゴリーの中において、「目黒駅から徒歩5分圏内で食べられるフライドチキン」 といった地域を限定することで、その小さな市場 (戦場) においてナンバー 1 を獲得することを目指すわけです。そして、一度その地域で成功を収めたら、徐々にカバー範囲を広げていく戦略をとります。
このように、自社の強みを活かせる戦場を選択することで、大きな企業ではない小さな企業や商品が生き残り、成長する道を見つけることができるのです。
ではどうすれば、自分たちの勝ち筋を発揮できる戦場を見極めることができるのでしょうか?
勝ち筋を見出す競合分析の方法
勝ち筋とは競合との相対的なものです。
そこで、「競合がされたら一番イヤなことを考える」 という発想をすると勝ち筋へのヒントや着想が得られるでしょう。
市場における自社のポジションを確立するために、単に競合が何をしているかを分析するのではなく、これをやられたら困ると競合に思われる戦略を特定していきます。
このときに 3C 分析 (Customer, Competitor, Company) が有効です。
最初に、カスタマー分析を通じて業界のトレンドや市場を把握し、さらに具体的なユーザーインタビューを実施してお客さんの具体的な行動、習慣、心理や求めるニーズ、何に価値を見出すかの価値観などの顧客文脈を理解します。
こうした顧客理解をもとに、競合分析に進みます。
競合が現在行っていることを把握する際に、競合が嫌がるであろうことは何かという視点を入れるといいでしょう。競合が手を出しにくい、あるいは手を出せない独自の市場領域を見出すのに有効です。
市場や顧客、競合の分析にもとづき自社の現状を再評価し、今後取るべき戦略をつくります。
3C 分析でのプロセスは、自社が市場でどのように競合と差異化し、何よりもお客さんにとっての独自の価値を提供できるかを明確にするために不可欠です。競合分析は競合の行動を模倣するためではなく、競合にとって不都合となる戦略を見つけ出し、市場での自分たちの勝ち筋を確立することに重点を置くべきです。
ノバセルの戦略
ここまでの内容を踏まえたときに、運用型テレビ CM サービスの 「ノバセル」 の戦略がおもしろかったです。
ノバセルは、戦略をつくり実行していくにあたって、戦場をどこにするかを重視しました (参考記事) 。
初期のノバセルが見出した戦場
ノバセルというサービスが立ち上がった当初、特定のニッチ市場を見つけたことが初期の成功につながりました。
ノバセルは、「マーケティングの民主化」 をミッションに掲げ 「大手広告代理店が手を出さない市場」 を見つけることから始めました。注目した市場は 「初めてのテレビ CM」 という領域でした。
初めてのテレビ CM での戦場は、大手広告代理店や大企業が力を入れてはいない、まだ未開拓の市場でした。当時はスタートアップ企業や中小企業がテレビ CM を放映することは珍しい状況であり、大手広告代理店はこの分野にリソースを割いてはいなかったのです。そこでノバセルはこの未開拓市場に可能性を見出し、積極的に進出しました。
初めてのテレビ CM という市場は、一見すると小さな市場に見えるかもしれませんが、当時のノバセルのような会社にとっては十分な規模と潜在的な成長可能性を持っていたわけです。
ノバセルは自社の規模や事業能力に見合った市場を見極め、そこで競争優位を築くことに成功しました。
顧客理解の深化からのポジショニングの変化
ノバセルはその後、注力する戦場を変えています。
当初のノバセルは 「初めてのテレビ CM」 という市場に焦点を当てていましたが、その後 「広告代理店マネジメント」 へと戦場を変更しました。
この変化の背景には、顧客ニーズと自社の提供価値への理解があります。
マーケティングにおいて大切なのは、「お客さんが本当に求めていること」 を常に把握し続けることです。
ノバセルがサービス事業を続ける中で理解したことは、提供していたテレビ CM の運用支援サービスは、単にテレビ CM の効果検証を可能にするだけではなく、顧客企業にとって重要度が高かったは 「マーケティング人材不足の解消」 というメリットでした。マーケティング人材の不足とは、顧客企業が直面するより根本的な課題です。
そこでノバセルは、テレビ CM 運用から一歩さらに進んで、広告代理店マネジメントというより幅広いサービスを展開していくことにしました。顧客企業の CMO (最高マーケティング責任者) としての役割を果たすべく、マーケティング戦略策定から実際のマーケティング作業をサポートすることで、顧客企業のマーケ人材不足の問題に対応していったのです。
こうしたサービス範囲を顧客起点で拡げる中で、顧客企業からのノバセルのポジショニングが再構築されました。
今回のノバセルの例からは、自分たちが注力する戦場は、顧客ニーズと競合の動向、そして自社の強みにもとづいて、柔軟に進化し続ける必要があることがわかります。
顧客ニーズは時間の経過とともに変わります。変化に応じて自社の戦場と戦場でのポジションを適応させることが、長期的な成功につながります。
まとめ
今回はノバセルの事例から、戦略について学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 市場特定の重要性: マーケティングでは、自社商品やサービスがどの市場 (Where) で戦うかを特定することが大事。戦場の選択が、消費者から自社商品を思い浮かべてもらえるかどうかのカギとなる
- 競合分析と勝ち筋の見極め: 競合分析では 「競合がこれをされると最も嫌がることは何か」 の視点を持つといい。3C分析 (Customer, Competitor, Company) を利用し、競合と顧客起点を入れた勝ち筋を見出していく
- 顧客ニーズの変化への適応: 変わり続ける顧客ニーズと競合動向を踏まえ、自社の強みを活かせる戦場も変えていく。顧客ニーズの変化に応じて提供価値を進化させることが長期的な成功につながる
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