投稿日 2024/04/02

松本洋紙店のサンプル有料化。入口を狭めての効率的な優良見込み客の獲得

#マーケティング #顧客獲得

今回のテーマは 「新規顧客の獲得」 です。

いかに購入意欲の高い見込み客を効果的に見極め、新しいお客さんを獲得する方法を考えます。

ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

松本洋紙店のサンプル品の送付


業務用のプリンター用紙をネット販売する 「松本洋紙店」 は、ビジネスの現場で役に立つ紙を多数取りそろえています。

取り扱う紙はユニークで、たとえば、氷点下でも劣化しない冷凍食品用のシール用紙や、屋外の雨風に耐えられる張り紙用の耐水用紙などです。

そのユニークさゆえに、2005年の創業当初からサンプルを希望する人が後を絶ちませんでした。中には 「今すぐ見たい」 「全色送って」 とむちゃな要望をする企業も少なくなく、用紙の種類や量によって、無料で送ったり有料にしたり、対応が煩雑になっていたとのことです (参考記事) 。

そこで松本洋紙店は、サンプル送付の対応を2021年から全て有料化に変えました。

顧客データを検証したところ、有料でサンプルを送った企業のほうが、本発注につながるケースが多いことが判明。21年からは300円を中心に有料に切り替えた。中にはサンプル自体は0円の用紙もあるが、送料は一律350円が発生する。

 「次回から使用できるクーポン券も同時に発行しているので、そこまでお客様の負担は大きくありません。でも、有料化にしたことで、お金を払ってでもうちの会社の用紙が欲しいという人だけに、サンプルを届けることができるようになりました」 (松本社長) 。現在、有料のサンプルの注文のうち、約 40% が本発注につながっているという。良質な取引先が増えてリピート率も向上、売り上げは右肩上がりで増え続けている。

サンプルを無料配布すると、購入意識の低いお客も取り込んでしまう。あえて有料とした方が、売り手側の手間とストレスが省かれて、効率よく良質なお客を獲得することができる。

優良な見込み客の獲得方法


松本洋紙店の事例から学べるのは、優良なお客さんをどうやって獲得するかです。

新規での顧客獲得において、多くのお客さんを取り込むよりも、つまり量よりも質を重視し、実際に購入意欲のある見込み客をいかに見極めるかに学びがあります。このアプローチは、独自性のある商品やサービスを提供する際に有効です。

松本洋紙店のアプローチ


松本洋紙店は、全サンプルの有料化を行いました。サンプル提供を無料ではなく有料にたケースのほうが本発注につながるケースが多かったことが判明しての変更です。

サンプル品の中には0円のものもありますが、送料を一律350円としています。次回の購入に使えるクーポン券を付けることで、お客さんの心理的負担を減らしつつ、実際にお金を払ってでも欲しいと考えるお客さんだけにサンプルを届けることを可能にしました。

あえて入口を狭める


サンプルの有料化というフィルターを設けることで、購入意識の低いお客さんには気軽にはできないハードルとなります。この 「入口を狭める」 というアプローチは、一度入り口をくぐればその後は 「通りやすくする」 という効果を生み出します。

松本洋紙店の場合、有料サンプルを対応した中の約 40% が本発注につながり、良質な取引先の増加やリピート率の向上に寄与しています。

優良見込み客を増やす仕組み化


サンプルの有料化は、単に経済的な負担をお客さんに求めることで自社の対応コストを賄うだけではありません。

有料というフィルターを通過するお客さんは、本当にその商品に関心を持っているという証明にもなります。特定のアクションを求めることで、優良な見込み客を効率よく獲得する仕組みをつくっているのです。


まとめ


今回は松本洋紙店の事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 松本洋紙店のサンプル有料化は、質を重視し本当に購入意欲のある見込み客を見極めるフィルターの役割を果たしている

  • 有料によって関心や購入意向の高いお客さんのみを通す 「入口を狭める」 戦略。一度入ればその後は通りやすくなる

  • 購入の前に特定のアクションをやってもらうことで、優良な見込み客の見極めと獲得につながる仕組みをつくってみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。