投稿日 2024/04/14

ブランディングへの誤解、ブランドの本質、ブランドのつくり方

#マーケティング #ブランディング

ブランドとは何か、そして成功するブランディングとはどのようなものでしょうか?

ブランディングは誤解も見られる概念です。

そこで今回は、自社商品やサービスの価値をどのようにお客さんに伝え、心に響く長期的な関係を築くことができるのか、お客さんから愛されるブランドをつくるための秘訣を紐解きます。

ブランディングへの誤解


まずはブランディングへの誤解について見ていきましょう。

かっこいいことをやればいいわけではない


一般的に、斬新な広告やかっこいい・かわいいデザインを取り入れることがブランディングだと思われていたりします。

しかし、それはちょっと違っていて、ブランドとは、商品を他と区別するための 「識別子」 です。ただ目立つデザインやロゴを作るだけでは、本当のブランディングにはならないわけです。

企業ロゴを変えたり、最新のクリエイティブな手法を使ったりしても、ブランディングが成功するとは限りません。むしろ識別子が変わることでお客さんが商品を見分けるのが難しくなり、選ばれなくなるという逆効果が起こり得ます。

因果関係への誤解


ブランディングへの因果関係への誤解も見られます。

商品やサービスへの好感度、他には信頼度や親近感などが上がったから商品を買うという考え方が一般的ですが、逆の流れもあります。すなわち、商品やサービスを買って使い、利用体験から具体的なベネフィットと独自性に人は価値を感じて、好感度や信頼度が高くなるという因果関係です。


ブランドの本質


ここまでの内容から、あらためてブランドとは何かを言語化してみましょう。

ブランドとは


結論から言うと、ブランドとは 「お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス、または企業」 です。

好ましい感情とは、好き、共感、満足、誇り、憧れ、応援したい気持ちです。商品やサービスに対して深い好ましい感情になっているほど強いブランドです。

ブランディングとは、お客さんから好ましい感情を商品・サービスに持ってもらうための 「働きかけ」 になります。

そしてブランドが生まれるプロセスは、良いユーザー体験からです。体験をしたときに好ましい感情移入が起こり、お客さんの頭や心の中で価値イメージが形成されることで、特別な存在へと昇華されます。

長期的なブランディング戦略を


一時的な変更やユニークなアイデアで、短期的に注目を集めることはできるかもしれません。でも、それをブランディングの成功とみなすのは、ちょっと危険です。

お客さんにとって他に代わるものがないような商品・サービスの価値を伝え、顧客価値を実現していく働きかけがブランディングです。

本当のブランディングとは、商品が持つ本質的な価値や特徴にもとづいて、長期的な戦略を立て実行していくことです。ブランディングの成功は、一時的な好評価や信用を得るのではなく、長い目で見た LTV (顧客生涯価値) で測るといいでしょう。


ブランドのつくり方


では、ブランドはどのようにつくられるのでしょうか?

ブランドができる流れ


ブランドができるのは、体験によって独自価値がもたらされることによってです。

実際にブランドとして確立されていく場合、まず上がっていくのはお客さんからの 「購買頻度」 と 「継続購買率」 です。買う回数が増え、継続して買ってもらえるというリピート購入がされるようになります。

継続購買というリピート率が高まると 「平均購入単価」 も上がる傾向が見られます。そして継続的に商品やサービスを利用することで、それに応じて好感度や信頼度、親近感といった指標が二次的に高まっていくのです。

このようにして商品やサービスがお客さんの生活の一部になります。そのお客さんにとって代替するベネフィットを持つ商品・サービスがなくなり、買って使っている商品でしか得られない価値を感じている状態です。こうなるとブランドになっています。

そして、その良い体験や価値イメージと商品との結びつきを忘れられないようにする働きかけが 「ブランディング」 です。

ブランディングとは、お客さんが商品の持つ特別な便益や独自性をしっかり理解してもらい、自然とその商品を選ぶように導く活動のことです。商品・サービスの顧客価値を伝え、お客さんの生活の中で習慣化され、固定客を増やしていくことを目指します。

優れた価値と独自性の追求


ラグジュアリーブランドや大手ブランドが成功した理由は、ただブランディングにお金をかけたからだけではありません。

優れた価値と独自性のある商品をずっと提供し続けてきたからです。表面だけのデザインを真似ても、本当にお客さんの心をつかむことはできないでしょう。

お客さんに合わせた価値を提供する


ブランディングでポイントになるのは、ブランド側がお客さんに合わせて価値を提供するというスタンスです。

お客さんの文脈に対して最適な角度でブランドを切り出すことが重要です。逆に言えば、本来はお客さんにとって価値になり得る商品でも、切り出し方が間違っていれば興味を持ってもらえないということです。

 ”鍵穴” と “鍵” のたとえ


このイメージを 「鍵穴と鍵のたとえ」 で考えると理解しやすいです。

お客さんの状況や求めることなどの顧客文脈を 「鍵穴」 、ブランドからのベネフィットの切り出し方を 「鍵」 に見立てるという考え方です。

 「お客さんの文脈 (鍵穴) 」 と 「ベネフィット (鍵) 」 が合致している状況が、価値が成立している状態です。お客さんの心のドアが開いて、商品やサービスを欲しいと思ってもらえます。

相手が魅力に思えるように再解釈する


ブランドのことをお客さんの文脈で再解釈し、お客さんに魅力的になるように訴求することについて、このイメージを深めるために 「子どもにとってのお風呂の話」 でのたとえで説明します。

これは、書籍 "未" 顧客理解 - なぜ、「買ってくれる人 = 顧客」 しか見ないのか? (芹澤連) に書かれていたことです。


保育園での園児と保育士のやりとりに見る、ブランドの再解釈のたとえです。

子どもたちにとってお風呂に入ることは、当初は 「それまでやっていた遊びを中断することになり、楽しかった遊びの時間を終わらせてしまう行為」 でした。しかし、お風呂のことを 「水遊びをする場所」 として再解釈し、意味合いを捉えなおすことで、お風呂が嫌いな子どもの興味を引くことができるわけです。

このたとえでは、お風呂が嫌いな子どもたちを 「顧客」 、お風呂を 「ブランド」 、保育士を 「マーケター」 と見立てるとブランディングに示唆的です。

お風呂の機能 (体をきれいにすること) を伝えるのではなく、子どもの欲求 (遊びたい) を満たすように、お風呂の特徴 (水がたくさんあること) を活かした水遊びができる時間にしようと、保育士は子どもたちに提案しています。具体的には、「お庭で土遊びをしたら、次は、お風呂で水遊びしよう」 「泡で変身しよう」 といった子どもたちへの声掛けです。

これが相手 (顧客) の文脈を理解し、顧客文脈という鍵穴に子どもたちの鍵 (欲求) がフィットするために、魅力的に思えるようにブランドを再解釈するということです。


まとめ


今回はブランディングについて考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ブランドとは 「お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス、または企業」 。ブランディングでは、商品が持つ本質的な価値や特徴にもとづいて、長期的な戦略を立てることが大事

  • ブランディングは、お客さんが商品の持つ特別な便益や独自性をしっかり理解してもらい、ブランド体験を通じて商品を選んでもらえるように導く活動。ブランディングは商品・サービスの価値を伝え、お客さんの生活やビジネスの中で習慣化させて、固定客を増やしていくことを目指す

  • ブランド側がお客さんに合わせて価値を提供するというスタンスが大事。お客さんの文脈を理解し、顧客文脈に沿ってブランド再解釈し捉え直し、お客さんが魅力に思えるように訴求し提案する


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。