投稿日 2024/04/17

これからの AI 時代は、「本質直観」 がマーケティングの必須スキル

#マーケティング #本質直観

あなたは自分の直観に、確固たる自信を持っているでしょうか?直観に対して疑問を投げかけることはあるでしょうか?

今回は、AI 時代における人の直観にフォーカスします。

そのカギとも言える 「本質直観」 をキーワードに掘り下げ、マーケティングに活かせるスキルを紐解きます。

本質直観


今回のキーワードは 「本質直観」 です。

その根拠を自分自身に問い直す


本質直観とは、自分が何かを思ったことについて、その根拠や理由を自分自身に問い直す行為です。

本質直観は、直感的に感じたことの根っこにある答えを他者に頼るのではなく、なぜ生じたのかを自問するアプローチです。

詳しくは、「本質直観」 のすすめ。- 普通の人が、平凡な環境で、人と違う結果を出す (水越康介) という本にあります。


本質直観の 「ちょっかん」 には直観という字が用いられていますが、日常的な言葉である直感 (instinct) ではなく、直観 (intuition) を使います。

本質直観は、自分の中で 「本質を捉えた」 と確信していることについて、それをゴールではなくきっかけとなるスタートにして、その根拠を疑い、問い直していきます。自分の確信がどのようにして成り立っているのかを確認していく思考プロセスです。

ちなみに、本質直観と逆のやり方は、自分が思ったことが正しいかどうかを、他人も同じように思うかを確認することです。これに対して本質直観では、自分が何かを思ったことについて、そう思った理由や背景への掘り下げを、自分自身に対して行います。


本質直観のビジネスへの応用


本質直観では自分が驚いたり違和感を感じたことに対して、その原因や意味を自分自身の中から答えを見出していきます。

本質直観はビジネスにも応用が可能です。本質直観をうまく使えれば、自分のアイデアや仮説をより鋭く磨くことができます。

応用範囲は、マーケティング、マーケティングリサーチ、データ分析などです。

マーケティングリサーチと本質直観


たとえば、本質直観とマーケティングリサーチの組み合わせを考えてみましょう。

本質直観というアプローチをとることで、マーケティングリサーチの位置づけは一般的な方法とは逆になります。

通常、リサーチでは、仮説という自分たちがそうであろうと考えることの検証を、ターゲット顧客も同じように思うかどうかという視点で行ないます。答えは調査対象者が持っているというスタンスをとります。

一方の本質直観をマーケティングリサーチに適用すれば、自分たちが仮説として持っていること、まだ仮説にまでなっていないアイデアや発想、何かに違和感を感じたり驚いたことを、「なぜそう思ったか」 や 「その根拠は何か」 を他人ではなく、自分自身に問い直すことになります。

自分が感じたことを、他人に訊いて確認するのではありません。アンケート調査結果や、顧客インタビューで発見した洞察、得られたアイデアについて、なぜそれらが自分の中で生まれたのか、自分が驚いたのはなぜなのかを自分自身に問うのです。

もし 「答え」 があるとしても、その答えをお客さんや他者には求めることはしません。答えは自分の中にあり、調査結果を起点に本質直観を行い、まだ気づいていない何かを掘り起こすというやり方です。

データ分析への応用


この考え方はマーケティングリサーチだけにとどまらず、データ分析にも示唆があります。

データ分析から得られた情報に対する自分の考えや仮説、データ結果から自分が驚いたことを、自分自身の中で問い直します。なぜ自分はそう思うのか、そのように反応したのかです。

そのプロセスを通じて、データ分析から得られる示唆は磨かれます。


本質直観の方法


では、本質直観を行うためには、どうすればいいかを見ていきましょう。

本質直観のステップ


本質直観の方法を整理すると、具体的には次のステップで進めていきます。

  • 直観に気づく: 取り扱うテーマや課題に対して自分がふと感じたこと、ちょっとした違和感や気付きを見逃さず言語化する

  • その直観を問い直す: 自分はなぜそのように感じたのか、その感覚はどこから来たのかを自問自答する。思考や感情の背後にある潜在意識や価値観、ものの見方や思考 (メンタルモデル, バイアス) を探っていく

  • 新たな視点を見つける: 最初の直観を入り口に自分の感覚・思考を深く掘り下げることで、新たな視点やアイデアを見つける

本質直観を使ったマーケティング企画をつくる方法


本質直観の3つのステップを具体的なビジネスシーンに当てはめてみましょう。

田中さんは、ある中堅企業のマーケティング部門のリーダーを務めています。彼女は新商品のキャンペーン企画を考え実行する責任者でもあります。

しかし、これまで出てきたアイデアは従来のキャンペーンと代わり映えせず、新しいアイデアを求めていました。

ある日、彼女は本質直観のステップを試すことにします。

  • 直観に気づく: キャンペーンで扱う商品に関する自分の第一印象や初見での違和感への感覚を探り、小さな気づきや感情を言葉にする

  • その直観を問い直す: 商品に対して自分はなぜそう感じたのか、その感覚の根源を自分に問い直す。田中さんは、消費者の視点を忘れていたことに気づく

  • 新たな視点を見つける: 自身の心の深い部分に触れることで、彼女は消費者が本当に求めるものに目を向けるようになる。売り手発想から離れ、消費者やお客さんの立場になったことで、新しいキャンペーンの切り口とアイデアをつくった

本質直観のプロセスをたどることで、田中さんは従来にはなかった斬新なキャンペーンへの視点を得て、新しい企画を立案していきました。本質直観の力で、彼女とチームはマーケティングに新しい息吹をもたらすことでしょう。

* * *

ここまで本質直観について見てきました。

それでは最後のパートでは、「本質直観は AI 時代のマーケティングの必須スキルになるのでは」 という話をしていきます。


本質直観は AI 時代のマーケティング必須スキル


ChatGPT などの AI が普及することで、AI が人の仕事を奪うのではないかという、ともすると過度な悲観論を見聞きします。AI が多くの業務タスクを自動化し効率性を高める一方で、特定の職種やスキルが不要になるという懸念からです。

この文脈で考えてみたときに、人が伸ばすべき能力の1つが 「本質直観」 なのではというのがここからの話です。

本質直観の重要性


本質直観は、他者ではなく、自分自身に対して直観や感覚への根拠を深く掘り下げ、新しい洞察を得る行為です。

AI は論理的な分析やパターン認識に優れていますが、人間特有の直観や感性、創造力を持ち合わせていません。このため、本質直観は AI には真似できない人間のスキルとなるでしょう。

たとえば、マーケティングやプロダクトデザインの分野では、データにもとづく分析だけでなく、消費者の感情や生活者背景などの顧客文脈を理解し、それにもとづいて新しいアイデアを生み出すことが重要です。本質直観が有効なアプローチとなります。

AI と人間の共存


AI 時代における成功は、人がテクノロジーの発展に適応し、人間独自の能力を伸ばすことにかかっています。

AI の普及は、人間がより創造的で本質的な問題に集中する機会を提供します。たとえば、AI がルーチンワークを引き受け自動化することで、人はより創造的なタスクに集中できるようになります。

本質直観はこの過程で中心的な役割を果たし、AI との補完的な関係を築きます。人と AI が共存する中で、人は本質直観のような人間が得意とする能力を駆使して、AI では到達できない創造的なアイデアやソリューションをつくることができるでしょう。

本質直観は、人 と AI が協調する環境において、新しい価値を生み出すためのカギとなる能力となるのです。

本質直観の力を伸ばすことによって、AI の進化がもたらす変化に対応し、新しい機会をつかむことが可能になるでしょう。


まとめ


今回は本質直観を取り上げ、AI 時代での必須スキルという立ち位置で考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ 本質直観とは
  • 自分が何かを思ったことについて、その根拠や理由を他者ではなく自分自身に問い直す行為
  • 自分の中で 「本質を捉えた」 と確信したときに、ここをゴールではなくきっかけにすることで、その根拠を疑い、問い直していく
  • 本質直観は AI と人間の共存のカギを握る。人は本質直観のような人間が得意とする能力を駆使して、AI ではまだ到達できない創造的なアイデアをつくることができる

✓ 本質直観のステップ
  • 直観に気づく: 取り扱うテーマや課題に対して自分がふと感じたこと、ちょっとした違和感や気付きを見逃さず言語化する
  • その直観を問い直す: 自分はなぜそのように感じたのか、その感覚はどこから来たのかを自問自答する。思考や感情の背後にある潜在意識や価値観、ものの見方や思考を探っていく
  • 新たな視点を見つける: 最初の直観を入り口に自分の感覚や思考を深く掘り下げることで、新たな視点やアイデアをつくる




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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。