お客さんが本当に求める気持ちやニーズを理解し、競合にはできない価値提供を実現するには、どうすればいいのでしょうか?
今回は、お客さん目線になっての競争優位をつくる方法を 3C から解説します。
3C からの顧客定義と価値定義
ビジネスでよく使われる 3C のフレームを使うと、顧客定義、競合優位性の見出し、価値の明確化までを順序立てて進めることができます。
ポイントは、3C の Customer, Competitor, Campany の中から2つをかけ合わせての当てはめていく順番です。
出典: MarkeZine
具体的には次のようになります。
① ユーザー × 商品
- まずはお客さんを決める
- お客さんが求めるニーズを理解する
- ニーズを満たす商品を用意する
3C を使う意味はユーザーと商品だけを考えて終わりにしない点にあります。この次から見ていく競合の要素を入れていきます。
② ユーザー × 競合
- お客さん目線での競合を設定する
- お客さんの頭の中の選択肢が競合になる
- 競合のレイヤーは複数ある。直接的な競合他社の商品やサービスだけではなく、間接的な競合も含む。間接競合とはたとえば、レストランであれば他の飲食店のみならず、コンビニ等の持ち帰り、Uber などのデリバリーなど
③ 商品 × 競合
- 競合に対して自社商品の優位性を見出す
- 新規性, 独自性, お客さんにとってのベネフィット
以上のように 3C の3つの視点を順番にかけ合わせて見ていき、お客さんに訴求する価値提案をつくっていきます。
具体的なビジネスへの当てはめ
それでは、ここまで見てきた 3C を使う方法について、より具体的に見ていきましょう。
マーケター向けの 「有料学習コンテンツの販売ビジネス」 という事例で考えてみます。
プロセスは先ほど見たように3つです。
✓ 3C からの価値創出
- ユーザー × 商品: ターゲット顧客が、その商品カテゴリーにおいて本当に求めることを理解する
- ユーザー × 競合: 想定するお客さんはどのように選んでいるか。どんな選択肢があるかを見極める (自社以外の選択肢が競合。直接的な競合もいれば間接的な競合 (マーケティングを学べる手段の全て) も存在する)
- 商品 × 競合: 自社商品・サービスの比較優位や勝ち筋を見出す
では1つずつ順番に詳しく見ていきましょう。
[ユーザー × 商品] ターゲット顧客のニーズ理解
マーケター向けの有料コンテンツの販売では、まずターゲットとなる想定利用者が何を求めているのかを明らかにすることが重要です。
たとえば、マーケティングの初級レベルの人は基礎知識を、マーケティングの実務経験者はさらなるスキルアップや最新トレンドの情報を求めているでしょう。
教育コンテンツはこれらのニーズに応える形で、初心者向けと経験者向けに、経験者もさらに中級者と上級者用に分け、コンテンツの中身を各利用者に合わせた中身にして提供することが効果的です。
[ユーザー × 競合] 競合の理解と分析
次に、お客さんがどのような選択肢を持っているかを把握するようにします。
マーケティング学習コンテンツを販売していくというビジネスでは、直接的な競合には他の教育プラットフォームやオンライン受講コースがあります。ただしそれだけではなく、間接的な競合には、企業や個人からの無料のブログ、YouTube 動画、セミナー動画、書籍などが含まれます。
お客さんはこれらの中から、自分にとって最適だと思う学習方法を選ぶでしょう。よって、自社の学習サービスがこれらの競合に対してどのような利点を持ち、独自価値をもたらすことができるかの勝ち筋を見極めたり、場合によっては新たに勝ち筋をつくり出すことが重要になります。
[商品 × 競合] 自社サービスの優位性の見出し
勝ち筋を見出すためには、自社の教育コンテンツが競合に対してどのような優位性を持っているかを知ることです。
たとえばそれは、最新のマーケティングトレンドを常に更新して提供することであったり、実践的なワークショップや専門家による個別指導などです。また、ユーザーのフィードバックを積極的に取り入れ、コンテンツの中身をブラッシュアップし改善を重ね、学習内容の質を継続的に向上させることも競争優位性につながります。
こうした他では得られない学習体験、スキル向上効果を顧客価値として実現し提供することが大事です。
継続的にサイクルをまわす
ここまで、マーケティング学習コンテンツ販売という例で、3C を使っての価値創出の方法を見てきました。
最後にもう1つポイントを加えると、プロセスを何度もまわしサイクルのように ③ までいったら再び ① へと、すなわち 「③ 商品 × 競合」 から次のステージでの 「① ユーザー × 商品」 を続けることが大切です。
盛者必衰の理
まわし続けることが必要になるのは、ビジネスの環境は常に変化しているからです。
そのため、一度つくった戦略や商品に優位性を打ち出したとしても、永続的なものになるとは限りません。「盛者必衰の理」 と言われるように、そのまま何もしなければ次第に劣化してしまうでしょう。
変化に対応するために適応し続ける
3C の3つの要素は、継続的に見直しを行うことが求められます。このプロセスは、自社の商品やサービスが市場の変化に合わせて進化し続けるために不可欠です。
具体的には、「③ 商品 × 競合」 の段階で得られた学びやフィードバックをもとに、再び 「① ユーザー × 商品」 の段階に戻ります。
ここでは、お客さんの環境やニーズが変化していないか、新たなニーズが生まれていないかを知ることが重要です。
たとえば、マーケター向け学習コンテンツの市場においては、新しいマーケティング手法や画期的な技術の登場、業界のトレンド、生活者のライフスタイルの変化、国や自治体の大きな方針表明 (規制の強化, 大型の予算配分など) などによってお客さんのニーズを変える可能性があるわけです。
新たに発見されたニーズ、潜在的な望み・不満を察知したら、それにもとづいて商品やサービスの中身や提供価値を見直し、時には顧客設定から再定義します。その後に再び 「② ユーザー × 競合」 の段階で直接競合と間接競合を洗い出します。そして 「③ 商品 × 競合」 を見て自分たちの比較優位からの新しい勝ち筋を見出します。
この繰り返しによって、企業は市場の変化に迅速に対応し、競争優位を保ち続けることができるのです。
お客さん目線での競争優位性のつくり方
ここまでの 3C を当てはめてのマーケティングの方法は、お客さん目線からお客さんの立場になって自分たちの競争優位をつくるということです。
流れを俯瞰すると次のようになります。
✓ 顧客目線からの競争優位性のつくり方
- 重視するお客さんを決める (ターゲット顧客の設定)
- ニーズ、奥にある隠れた望みや不満 (顧客インサイト) 、価値観まで深くお客さんを理解する
- お客さんが求めるであろう商品やカテゴリーにおいて、お客さんの頭の中にある選択肢を見極める
- 他の選択肢 (直接・間接の競合) と比べて自分たちの優位性をつくる
- お客さんから他ではなく自分たちが選ばれるように価値を提案する
以上がお客さん目線で競合を設定し、競争優位をつくる方法です。
まとめ
今回は 3C のフレームを補助線にして、顧客理解と価値創出のプロセスを考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
✓ 3C からの価値創出 (サイクルとしてまわし続ける)
- ユーザー × 商品: ターゲット顧客が、その商品カテゴリーにおいて本当に求めることを理解する
- ユーザー × 競合: 想定するお客さんはどのように選んでいるか。どんな選択肢があるかを見極める (自社以外の選択肢が競合。直接的な競合もいれば間接的な競合 (マーケティングが学べる手段の全て) も存在する)
- 商品 × 競合: 自社商品・サービスの比較優位や勝ち筋を見出す
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