投稿日 2024/04/06

P&G マーケターが向いている環境、そうではない環境。"戦場" "戦力" "戦い方" の順番が大事

#マーケティング #戦場 #戦略

ビジネスの世界で勝利を手にするためには、何が必要なのでしょうか?

成功への第一歩は、市場の成熟度や競争状況を把握するところからです。

今回は、「戦場」 を見極め、持っているリソースやスキルなどの 「戦力」 を有効に活かし、変化する市場環境で勝つための 「戦い方」 を探ります。

元 P&G マーケターの戦場


P&G (プロクター・アンド・ギャンブル) の出身のマーケターがさまざまな企業で活躍しているのは、マーケティング業界では有名な話です。

しかし、元 P&G マーケターも決して万能ではなく、スキルや経験を十分に生かしにくい業態や分野も存在します (参考記事) 。

P&G マーケターが向いている環境


先ほどの参考記事によれば、まず 「P&G マーケターが向いている環境」 を整理をすると3つあります。

  • 市場が大きい: P&G マーケターは大規模な市場での競争環境に強い。市場動向を深く理解し、大規模な顧客基盤を対象とした戦略を効果的に実施できる

  • 豊富な市場データ: P&G マーケターはデータドリブンのアプローチをとり、豊富な市場データが利用可能な環境でその力を発揮します。データにもとづく顧客理解と洞察から、戦略と施策をつくることを得意としている

  • 既存ブランドの存在: 既にあるブランドや製品ラインを成長させることに長けている。顧客と市場の理解を進め、効果的なブランド強化と市場拡大戦略を策定する

P&G マーケターが向いてない環境


一方で、P&G マーケターが向いてない環境は、次のようなものです。

  • 市場データが少ない環境: 市場調査データが不十分、または顧客理解のための大規模な調査を行いにくい環境では力を発揮しにくい。新しい市場や未探索の領域では十分なデータが得られないため、彼らの得意とするデータドリブンのアプローチが難しくなる

  • 新ブランドの立ち上げ: 全く新しいブランドの立ち上げやゼロからの市場構築。P&G でのマーケティングでは、どちらかと言うと大きい市場や既存ブランドの成長に重点を置いているため、新ブランドの立ち上げへの知見は決して多くはない

  • D2C ビジネス: スタートアップ企業の設立や D2C ビジネスなど新しい領域は、P&G 内での成功事例が少なく、マーケターとしての経験を積みにくかったため得意分野とは言えない


戦力と戦い方が活きるのは戦場次第


ここまでの話から学びを汎用化して考えてみると、「やり方や戦い方」 を決める前に 「戦場」 を見極める重要性を教えてくれます。

 「戦場」 を見極める重要性


ビジネスにおいても、そして個人の働き方においても、どのような環境や状況に自分が置かれているのかを理解することが大切です。

たとえば、市場が成熟しているかこれから成長していく市場なのか、競争が激しいか、市場自体が新しく未知の領域であるかなど、その 「戦場」 の特性を把握することが大事です。

次に 「戦力」 の把握


戦場の後に戦力がきます。

戦場を理解した後で次に考えるべきは自身の 「戦力」 、持っているスキルや利用可能なリソースのことです。

P&G マーケターの例で言えば、大きい市場という戦場で戦うための高いスキルと豊富な経験を持っています。しかし、市場データがまだ乏しいスタートアップ、自分たちの知見や実績が少ない D2C ビジネスのような環境では、P&G での成功体験や獲得したスキルが十分に活かされないことがあります。

戦場によって活かせる戦力は変わり、逆に言えば自分 (たち) の戦力を理解し、戦力をどの戦場で活かすかを考えることが重要だということです。

戦場と戦力があっての 「戦い方」 


戦場の特性と自らの戦力を理解した上で、戦い方を決めることが大事です。

たとえばマーケティングにおいては、成熟市場での既存ブランドの強化を展開するには、P&G マーケターが得意とするデータを駆使するアプローチが有効です。一方、顧客や市場データがまだほとんどないような新しい市場や創業したばかりのベンチャー企業では、データや経験値、リソースがない中で意思決定と実行を繰り返し、柔軟で迅速な PDCA サイクルを回すことになります。

このように戦場の状況と持っている戦力に応じて、適切な戦い方を選ぶことが成功へのカギなります。

戦いの前提となる 「戦場」 の選択と理解


戦い方という方法論の前に、前提としてどういった環境や状況に身を置いているのかという戦場の特性を理解することが大切です。

戦い方は、それを取り巻く環境や状況という戦場によって変わります。経験豊富な P&G マーケターといえども、スキルと経験が最大限に活かされるのは顧客や市場データが豊富にあり、成熟したブランドがある市場規模が大きい環境です。逆に、データが少なく市場が未知の場合は、知見やスキルは活かしにくいわけです。

自分たちがいるのはどのようなビジネス環境なのかという 「戦場」 の特性、持っている 「戦力」 を把握することが先決なのです。


まとめ


今回は P&G マーケターの特性から、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 戦場の理解: マーケティングを成功させるには、まず市場の成熟度や競争状況などの 「戦場」 を正確に理解することが大事

  • 戦力の適用: 戦場によって活かせる戦力は変わる。裏を返せば自分の戦力を把握し、戦力をどの戦場で活かすかを考えることが重要

  • 戦場と戦力があっての戦い方: 戦い方は、それを取り巻く環境や状況という戦場によって変わる。戦い方という方法論の前に、前提として戦場の特性と持っている戦力を理解しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。