投稿日 2024/04/19

サントリービールサーバー nomiigo 。2つのお客さんへの価値提供と宣伝効果

#マーケティング #お客さんのお客さん #提供価値

今回は、サントリーが提供する飲食店向けのビールサーバー 「nomiigo (ノミーゴ) 」 を取り上げます。

nomiigo は、いかにして飲食店の運営効率を上げ、同時に来店客の満足度を高め、さらにブランドの宣伝効果まで発揮しているのでしょうか?

ここから学べることを解説します。

ビールサーバー nomiigo


出典: zakzak

サントリーのイノベーション部が、新たに 「nomiigo」 というビールサーバーを開発しました。

樽ではなく缶ビールから生ジョッキをつくれる


nomiigoは、主に小規模の飲食店向けのビールサーバーです。常温の缶ビールを短時間で冷やし、高品質な生ビールを提供する仕組みになっています。

ユニークなのは、一般的なビールサーバーはビール用の大きな樽に入ったビールを使うのに対し、nomiigo ではサントリーの 「ザ・プレミアム・モルツ」 の350ミリリットル缶を使う点です。

常温の缶を nomiigo にセットしてボタンを押すと、自動で缶のフタが開栓し、ものの数十秒でサーバー内部で冷却されたビールをジョッキに注げるようになっています。注ぎ終わるまでの時間は50秒程度です。

小規模の飲食店向けに設計


ビールサーバー用の樽は開栓すると中に入っているビールの鮮度が落ちるため、3日以内に使い切る必要があります。

サントリーは nomiigo を、3日以内で使えずビールの鮮度劣化や廃棄コストを気にしてサーバーの導入が進められないラーメン店やファストフード店へ導入する方針です。店舗には、そのお店と取引がある酒販店からザ・プレミアム・モルツの缶を購入してもらうことを条件に、nomiigo を貸与の形で提供するとのことです。


 「2つのお客さん」 へのそれぞれの提供価値


マーケティングの観点で注目したいのは、サントリーの飲食店向けビールサーバー nomiigo は、"2つのお客さん" に価値をもたらしていることです。

導入飲食店への提供価値


出典: ITmedia

1つ目のお客さんは導入している飲食店です。

通常の生ビールサーバーを使用した場合、消費されなかったビールは廃棄しなければなりません。nomiigo はビールロスを減少させることができます。

さらに、ビールの提供作業が省力化されることにより、従業員の作業負担の軽減にもなります。店舗を運営する効率化とコスト削減に寄与し、店舗経営の改善につながる価値を nomiigo は提供します。

来店客への提供価値


2つ目のお客さんは、飲食店に来店する消費者 (サントリーにとってはお客さんの先にいるお客さん) です。

nomiigo の導入によって生ビールの注文が増加するということは、それだけ来店したお客さんには 「食事と一緒にジョッキの生ビールを飲みたい」 という潜在的なニーズがあったことを示しています。

消費者は食事の際に新鮮でおいしい生ビールを求めており、nomiigo はこのニーズを満たします。これによって来店客の満足度も高まることでしょう。


それぞれへの宣伝効果


もう1つ注目したいのは、nomiigo が宣伝効果も果たしていることです。

来店客へのブランド露出


飲食店の来店客へのサントリーのプレミアムモルツのブランドの露出機会を増やし、宣伝効果を発揮します。

来店客が店内でザ・プレミアム・モルツのロゴが入ったグラスで生ビールを楽しむことは、お客さんの記憶にブランドを刻み込んでもらえることが期待できます。これにより消費者は、コンビニやスーパーなどの普段の買い物で購入する際や自宅でビールを飲む時にも、自然とプレミアムモルツを思い出しやすくなります。

結果としてブランドの認知度や想起回数を高め、飲食店以外の自宅での飲用へとつながります。

店舗従業員への宣伝効果


nomiigo は店舗従業員に対してもポジティブな影響を与えます。

従業員は日々の業務を通じて、普段自分が生ビールを入れているブランド銘柄を何度も目にすることで、そのブランドに親近感や愛着を感じるようになるでしょう。

彼ら・彼女らが目にするプレミアムモルツのロゴ、サーバーからジョッキへ注ぎ、注文したお客さんへの配膳などによって、プライベートでのビールを飲む時にプレミアムモルツが選ばれやすくなることも期待できます。

さらには店舗従業員がブランドの非公式な広告塔のような存在になり、プレミアムモルツを選ぶという消費行動や周囲への話題化などを通じて、ブランドの認知度や想起される機会が増えることにつながります。


まとめ


今回は、サントリーの飲食店向けビールサーバー 「nomiigo」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • nomiigo は、"2つのお客さん" に価値をもたらしている。飲食店でのビールロスを減少し、従業員の作業負担を軽減。店舗経営の効率化とコスト削減が実現し、経営改善に寄与する

  • 来店客の潜在的な需要に応えることができ、nomiigo は食事の時に新鮮でおいしい生ビールを飲みたい消費者の満足度を高める

  • nomiigo はブランドの宣伝にも一役買っている。サントリーのプレミアムモルツブランドの露出機会を増やす。来店客と店舗従業員にブランド認知や想起を増やす効果をもたらし、家庭での飲用にもつながることが期待できる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。