2018/07/09

書評: グーグル、モルガン・スタンレーで学んだ 日本人の知らない会議の鉄則 (ピョートル・フェリクス・グジバチ) 。会議を 「良い葛藤の場」 にするために、どうするか


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グーグル、モルガン・スタンレーで学んだ 日本人の知らない会議の鉄則 という本をご紹介します。



エントリーの内容です。

  • 本書の概要
  • 会議は本質的に 「葛藤」 の場
  • 良い根回しと悪い根回し。会議は準備が大事


本書の概要


以下は本書の内容紹介からの引用です。

 「結論の先延ばし」 「議論の蒸し返し」 「論点のズレ」 「腹の探り合い」 「無言の圧力」 ……

すべての 「無駄」 と 「建前」 を終わらせる!日本人と16年働いてきた著者がおくる、シンプルな会議のルール。これ一冊で会議が変わり、会社が変わる!

この本には、具体的な会議のやり方が多く紹介されています。

本書の特徴は、生産的な会議にするためのノウハウだけで終わっていないことです。根底には、著者のピョートル氏の会議に対する信念と哲学が見て取れます。


会議は本質的に 「葛藤」 の場


会議では、立場の異なる参加者の意見や考えの隔たりにより、ぶつかり合いや摩擦が起きます。ピョートル氏は、会議は本質的には葛藤の場であると言います。

日本語で葛藤と聞くとネガティブな印象を受けるかもしれません。ピョートル氏は、会議では 「良い葛藤」 と 「悪い葛藤」 があるとします。

  • 良い葛藤:異なるアイデアがぶつかり合う。異なるアイデアを取捨選択する。議論を通してアイデアを融合し、より良いアイデアに変える
  • 悪い葛藤:感情がぶつかり合う。立場や利害が異なる人同士で、問題ではなく人を攻撃し合う


良い葛藤を増やすために


本書の主旨は、会議でいかに 「良い葛藤」 を増やすか (悪い葛藤をなくすか) です。そのためには、「ファシリテーション」 と 「心理的安全性」 がキーポイントです。


ファシリテーション


会議のファシリテーターのイメージは、会議中の進行や議論を整理する人でしょう。しかし本書での会議のファシリテーションは、より広い範囲で役割を発揮することです。

ファシリテーションとは、会議でのアウトプットを出すプロセスを前に進めることです。会議中の議論の整理だけではなく、会議の前の準備も含めます。

なお、ファシリテーターを含め、本書で紹介される会議の役割は以下の4つです。

  • 会議オーナー
  • ファシリテーター
  • タイムキーパー
  • ノートテイカー (議事録係)

通常は、会議オーナーとファシリテーター、あるいはファシリテーターとタイムキーパーが一人の人が担当しますが、特徴的なのは、これらの役割を別の人が担うことです。


心理的安全性


会議での良い葛藤のための2つめのポイントは、心理的安全性です。

心理的安全性とは、メンバーがお互いに考えていることを気兼ねなく言えること、自分がそこで必要とされていると感じること、メンバーに受け入れられていると実感できることです。心理学の用語です。

心理的安全性のある会議とは、自分が会議の場に必要とされていると感じ、お互いの信頼関係のもとに誰もが自由に発言できることです。

興味深いと思ったのは、会議での感情の摩擦が生じる 「悪い葛藤」 を減らすためには、日頃から自分の感情や正直な気持ちを抑えることはしないことです。

まわりのメンバーに自分の気持ちや感情を積極的にオープンにすることによって、お互いのことを理解することができます。日頃からの自己開示によって信頼関係ができているからこそ、会議では振る舞いや発言の意図が理解でき、感情の摩擦は生まれにくくなります。


賛成せずともコミットする


たとえ会議で良い葛藤が起こり、アイデアや問題を議論したとしても、参加者の全会一致で決まることは稀です。参加メンバーは立場や利害が異なるほど、全員が同じように賛成または反対することは起こりにくいです。

重要なのは、全会一致を求めるのではなく、意見を出し合い会議で決まったことには、たとえ自分は賛成ではなくても、決定事項にコミットする姿勢です。

会議では賛成した、あるいは反対意見を言わなかったにもかかわらず、会議で決まったことに後から反対だと言う人はプロフェッショナルではありません。

本書では 「disagree, but commit (賛成せずともコミットする) 」 という言葉が紹介されています。ピョートル氏が今まで働いた職場 (モルガン・スタンレーやグーグルなど) にあった暗黙のルールです。


良い根回しと悪い根回し


おもしろいと思ったのは、根回しで良い悪いがあることです。良い根回しとは、会議をより生産的な時間にするために事前準備の一環として行なうことです。悪い根回しは、会議を非生産的にしてしまうものです。

具体例で説明します。

  • 良い根回し:アジェンダに入っているこの案件は、ぜひ前に勧めたい。これから何をすればスムーズに始められるか、懸念があれば会議で率直に発言をしてほしい。検討のための情報が不足していれば、詳細の資料を事前に送るので言ってほしい
  • 悪い根回し:これは部長の肝いりの案件なので、くれぐれも批判や反対意見は言わないでほしい。会議では賛成してくれないか


良い会議をするために準備こそが大事


ここからは思ったことです。

会議とは、異なる立場の人が集まり話をする場です。当然、考えや意見の隔たりがあります。

会議をする目的は、直接会って (リモート会議でもなるべく直接会う環境を設定し) ものごとを前に進めることです。会議で意思決定をしたりアイデア出しによって、何かしらのアウトプットを出すことです。

アウトプットとは、会議での意思決定、確認したアクションアイテムと、誰が・いつまでにを決めることです。それらが簡潔に記録された議事録もアウトプットです。

会議をより良い生産的な場にする、意味のある時間にするためには、本書で紹介されているようなファシリテーションの技術が大事です。

そして思うのは、会議の準備の大切さです。何のために、何の議論を、どういう会議形式でやるか、時間と参加者の選定という会議設計がつくれるかです。必要であれば先ほどご紹介したような良い根回しも、準備の1つです。

会議設計については、別のエントリーでご紹介しています。よければ、ぜひご覧ください。

参考:会議をもっと生産的にする 「会議準備」 と 「議事録」


最後に


本書の良さは、冒頭でもご紹介したように、単に会議ノウハウだけの本ではないことです。著者のピョートル氏の会議への思い、日本の会社の会議への問題意識が伝わってきます。

読みながら、あらためて自分たちがやっている会議、参加している会議は今のやり方でよいのかを考えさせられます。



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多田 翼 (書いた人)


複数のスタートアップ支援に従事。経営や事業戦略、プロダクトマネジメント、マーケティングのコンサルティング及びメンター。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn をご覧ください) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝のランニング。

内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。