2018/07/04

書評: 孫正義 300年王国への野望 (杉本貴司) 。300年続くためのビジョン・志・多様性、死を覚悟した人間の強さ


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孫正義 300年王国への野望 という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 読んで考えさせられたこと (4つ)


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

 「私が日経新聞に入った2002年ごろ、ソフトバンクといったら、Yahoo! BBを立ち上げてブロードバンドに参入、全国の街角にパラソル営業部隊を投入して NTT に対抗し、いつ潰れるかと噂されていました。実際、当時のソフトバンクは綱渡りだったわけです。ところが、2016年には、イギリスの半導体設計大手の ARM 社を、日本企業の海外企業買収では過去最大となる3兆3000億円で買収すると発表。まさか、そこかと驚きましたね。いったい孫正義という男は、どんな哲学をもって経営しているんだろうと、以前からの興味が膨らみました」

そう語る杉本貴司さんが上梓した 「孫正義 300年王国への野望」 は、1981年に23歳で起業した孫正義が、アルバイトに 「いずれ売上高を豆腐のように一丁 (兆) 、二丁 (兆) と数えるようにしたい」 と語っていた頃から、彼の会社がまさに数兆円の企業買収をくり返す大企業に成長するまでを描いている。

とはいえ、本書で描かれるのは孫ひとりではない。ともにソフトバンクの成長に関わった人々の働きにも大きく光を当てているのも類書にない特徴だ。

この本に書かれていることは、大きくは以下の3つです。

  • ソフトバンクの1981年の創業から2017年頃までの歴史。事業展開とその裏側で何が起こっていたか
  • 孫正義とは何者なのか。創業の前から現在に至るまでに、何を考え、どのような決断をし、どんな行動を取ってきたのか
  • 孫正義が戦友 (ストリートファイター) と認める同士たちは、なぜ孫正義の元に集い、どのような活躍を見せたのか

この3つの視点で、興味深く読める本でした。


読んで考えさせられたこと


本書を読んで考えさせられたことは、次の4つです。

  • ビジョンと志
  • 300年続く企業になるための多様性
  • 迷った時ほど遠くを見よ
  • 死と向き合った人間の覚悟

以下、それぞれについてご説明します。


1. ビジョンと志


孫さんは、自分は何を成したいのかという志を大切にします。

志を大切にするのは、自身が親としても事業化としても尊敬する父親の存在があるからです。お金のためではなく、志のために働くことに価値があると、子どもの頃から教えられました。

孫さんは歴史からも志の重要性を学んでいます。坂本龍馬や織田信長からです。

起業当初からの一貫した志を掲げる孫さんの元には、志に共感した人たちが集まります。ビジョンを共にし、成し遂げる志が共有された 「同士的結合」 です。

この本から考えさせられた最も大きなことは、ビジョンと志についてです。起業や個人のレベルでも、理想とする世界観をビジョンとして描き、志からの使命感を持って生き、行動することの大切さです。


2. 300年続く企業になるための多様性


孫さんは、本気でソフトバンクを300年続く企業にしたいと考えています。そのために必要なことは、「群戦略」 です。

群戦略とは、異なるビジネスモデルやブランドを持つ企業同士が、独立しながらも志で結束し、企業群全体で戦っていくことです。ソフトバンクは様々な企業に投資をしており、根底には群戦略があります。投資は目的ではなく、群戦略を実行するための手段です。

群戦略が意味するのは多様性です。構成させる企業群は入れ替わり、多様性を維持し、変化し続けます。ソフトバンクにとっては、多様性こそが300年続く企業になるために必要なことです。


3. 迷った時ほど遠くを見よ


孫さんが好んで使う言葉は 「迷った時ほど遠くを見よ」 です。

一般的な企業が長期的な視点で未来を描く時は、30年程度のタイムスパンです。しかし孫さんは300年の経営ビジョンを描いています。遠くの未来を見て、これからどんなパラダイムシフトが起こるのか、そのために今何をしなければいけないかを決めます。

他の人から見れば理解できない決断や行動も、誰よりも遠くを見ているからこそ、リスクを取ってできることです。


4. 死と向き合った人間の覚悟


孫さんは、ソフトバンクを創業して2年後に、死を覚悟する病気を患いました。

病名は慢性肝炎で、肝臓癌に進行する可能性の高い肝硬変寸前の状態でした。医者からは余命は5年と告げられます。治療に専念するために入院し、闘病生活を送ります。

入院生活を送っていた孫さんは、父親から新しい肝臓病の治療方法が学会で発表されたことを教えてもらいます。治療法はステロイド離脱療法で、当時の成功率は 70% でした。失敗すれば死ぬ可能性もありました。

孫さんはこの新治療によって、病気を克服しました。

このエピソードを読んで思ったのは、一度、自分の死と向き合ったことがある人間の強さです。孫さんのように20代で創業し、これから成長するというタイミングで、若くして自分が生きる時間はもう僅かという体験を乗り越えたからこそ持てる覚悟です。


最後に


本書がおもしろく読めるのは、孫さんのストーリーだけで終わらないことです。

孫さんの志に魅了され集まった、本書で 「ストリートファイター」 と表現される孫さんの戦友たちです。今のソフトバンクがあるのは、孫さんだけではなく、使命感でつながった同士的結合の仲間の存在があるからです。



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多田 翼 (書いた人)


複数のスタートアップ支援に従事。経営や事業戦略、プロダクトマネジメント、マーケティングのコンサルティング及びメンター。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn をご覧ください) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝のランニング。

内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。