2018/07/30

書評: 経営参謀 - 戦略プロフェッショナルの教科書 (稲田将人) 。企業を改革するとはどういうことかを学べる本


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経営参謀 という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 興味深かったこと (5つ)


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

企業の再活性化や不振事業の再浮上化は、どうすれば可能なのか?

改革推進派と現状維持派との駆け引きや心理戦、現場での生々しい改革の実態、経営の基本知識や業務プロセスの勘所などをストーリーで描くことで読者に腹落ちする形で届ける 「戦略参謀シリーズ」 の第2弾。


興味深かったこと (5つ)


本書を読んで、興味深いと思ったことです。以下の5つでした。

  • マーケティングとマーケティングリサーチの役割
  • 科学や理論の前提
  • 戦略・実行・PDCA
  • 組織のあり方
  • 強い企業は常に変化する

それぞれについてご説明します。


[興味深かった 1] マーケティングとマーケティングリサーチの役割


マーケティングについて、本書では以下のように書かれています。

事業者たるもの、マーケットをリードし創造できるようにあるべきだ、ということ。そして、そうは言っても現実的には市場からかい離して低迷している企業が多々ある。

その場合、低迷状態から脱するためには、市場を理解することから始めるべきであると、こういうことですよね。

 (引用:経営参謀)

ここで言われているのは、マーケティングとマーケティングリサーチの役割です。

マーケターが求められるのは、市場をリードすること、新しい市場を創造することです。

新しい市場を創造するとは、まだ人々が知らなかったり、気づいていなかったことで、提示されて言われて初めてそうだと思うことを、マーケターが自らつくることです。つまり、消費者インサイトという 「人を動かす隠れた気持ち」 を満たし、人々の体験したい・使ってみたいという行動を喚起することです。

先ほどの引用の後半部分は、マーケティングリサーチの役割を言っています。リサーチの役割は、現状を把握し、市場を理解することです。

注意が必要なのは、マーケターに必要な答え (例えば、消費者はどんな商品やサービスが欲しいのか) を直接、マーケティングリサーチに求めるべきではないことです。リサーチの位置づけは、消費者が感じていること、どのように商品やサービスを使っているかなどの、市場の実態です。

マーケターがやるべきは、調査で観察したこと、気づきや学びから自分たちのビジネスの文脈で、どんな意味合いを抽出するかです。意味合いが、市場の創造につながります。


[興味深かった 2] 科学や理論の前提


科学について、本書で次のように書かれています。

我々が認識しておかねばならないことは、科学は常に未知の領域に挑戦しているわけであり、ゆえに今、世の中にある経営理論が、経営の全ての事象を説明しきっているわけではない、ということが前提にあるということです。

これは、今存在している経営理論が間違っているという意味ではなく、むしろ、「その一部を的確に説明している」 という表現のほうが正しいと思います。

 (引用:経営参謀)

科学や理論の前提を理解すべきということです。科学や理論で、世の中の全てを説明できるわけではありません。今なお科学やは、未知のことを明らかにするために挑戦しています。

ビジネスの領域でも同様です。経営理論やマーケティング理論も、ビジネスの事象を全ては説明できません。

理論は正しいとも言えるし、間違っているとも言えます。正しいのは、その状況下という前提においてです。

これが意味するのは、経営理論を適用するにあたって、前提を明確にせずに盲目的に信じるのは危ういということです。置かれた環境や制約条件という前提を把握し、理論を使うべきです。


[興味深かった 3]  戦略・実行・PDCA


戦略とは、目的を達成するために、自分たちは何をやるか・何をやらないかを決めることです。

忘れてはいけないのは、戦略は立てた時点では仮説にすぎないということです。戦略は実行して、目的を達成して初めて価値が生まれます。実行を伴わない、できない戦略は、絵に描いた餅です。

ただし実行は、ただやみくもに行えばいいわけではありません。戦略という仮説に則り、PDCA を適切に早くまわします。PDCA の C と A により、戦略を立てた時に想定できなかったことを学び、修正しながら、より良くしていけるかです。

PDCA の最初のステップである P は、Plan (計画) というよりも Hypothesis (仮説) と見なしたほうが、サイクルは早くまわせます。

強い組織は、目的と戦略が明確なだけではなく、組織全体で目的と戦略を理解し、自分たちで実行できる力があります。そして、PDCA をまわし続け成長します。


[興味深かった 4] 組織のあり方


以下は、本書から組織についての引用です。

性善説のみの前提に立ったシステムでは、煩悩を持つ人間に対しては、危険すぎるということです。 (中略)

人は弱いものです。「ばれなければ何をしてもいい」 と謀略の限りを尽くす者も出てきます。

人を大切にするということは、慈悲の菩薩の顔と共に、そういう煩悩を封じ込める不動明王の顔、その両方を持つマネジメントが必要ということになります。

 (引用:経営参謀)

性善説に立ち、お互いに信頼する組織は望ましいでしょう。しかし、性善説だけに寄りかかった組織は危ういです。

人は弱い生き物です。易きに流れ、変化を恐れ、つい怠けてしまうなど、個人の煩悩を完全に捨てることはできません。

組織のあり方で考えさせられたのは、人の弱さや煩悩を否定するのではなく、前提として受け入れ組織のシステムに組み込むことです。評価制度や報酬制度によって、人の煩悩が暴走し組織に悪影響を与えないような設計です。

いかに、「お天道様は常に見ている」 という状態をつくれるかです。「仕組みによって性善説を守る」 という考え方です。


[興味深かった 5] 強い企業は常に変化する


常に変化することの重要性について、本書から該当箇所を引用します。

 「多くの経営者の方とお目にかかってきましたが、目を見張る成長を続けている会社ほど、トップの方は口を開けば『うちは課題だらけでね』と具体的な課題の話を力説されます。そして逆もまた真なりです。この意味合いをどう受け取られますか?」

 「さあ、どうなんでしょうねえ」 副社長は首をひねった。

 「企業は常に変化、進化していかねばならない。つまり、改革が常態化している状態が企業にとっては健全な状態ということですよ」

安部野の話の趣旨は、傍で聞いている高山には明瞭だった。

 (引用:経営参謀)

強い企業は、自ら変化し続けます。改革が常態化しているとは、常に未完成だということです。

自分たちが変化をしなければいけないのは、外部環境が変わるからです。環境が変わるのに、自分たちは変わらなければ、やがては環境変化に置いていかれ衰退します。生物の進化論で言われることと同様です。

外部のスピードと少なくとも同じ早さで自分たちは変われるかです。望ましいのは、外部以上の早さで自らが変わり、世の中の変化を自分たちがリードすることです。


最後に


本書は、前作 戦略参謀 に続く第二弾です。こちらも、別のエントリーで書評を書いています。よければ、ぜひご覧ください。






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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。