2018/11/02

イノベーションを起こす組織とは。イノベーションを生み出す組織が持つ 「価値基準」 は、どのように組織に浸透するか


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今回は、イノベーションと組織について書いています。

 「イノベーションのジレンマ」 を唱えたクリステンセンの理論から、イノベーションを起こすための組織をどのようにつくるかを考えます。

今回のキーワードは 「価値基準」 です。

エントリー内容です。

  • 組織の実行力を規定する3つの要因
  • 価値基準の組織への浸透。創業期と成熟期の違い
  • まとめ


組織の実行力を規定する3つの要因


クリステンセンの著書の1つに、イノベーションのジレンマ があります。



クリステンセンによれば、組織ができることとできないこと、つまり組織の実行力を規定するのは次の3つです。

  • 資源
  • プロセス
  • 価値基準

3つの意味合いは、以下です。


資源


  • 資源とは、人や物などの 「資産」
  • 具体的には、人材、設備、技術、商品デザイン、ブランド力、情報、資金、さらに供給業者、流通業者、顧客との関係など。雇ったり解雇したり、購入したり売却したり、価値を減らしたり高めるたりすることができる
  • 質の高い資源が豊富に手に入れば、組織が変化に対応できる可能性が高くなる


プロセス


  • 従業員が資源のインプットを、価値の高い商品やサービスに変換する。組織が価値を生みだす
    • 資源のインプットとは、人材、設備、技術、商品デザイン、ブランド力、情報、エネルギー、資金など
    • プロセスとは、この時の相互作用、協調、コミュニケーション、意思決定のパターン
  • 製造プロセスだけでなく、商品開発、調達、市場調査、予算作成、事業計画、人材開発と給与決定、資源配分などを実現するプロセスも含まれる


価値基準


  • 仕事の優先順位を決める基準
  • 組織の価値基準とは、従業員が優先順位を決定し、注文が魅力的かどうか、顧客が重要かどうか、新商品のアイデアが良さそうかどうかなどを判断する際の基準
  • 優先順位の決定は、企業のあらゆるレベルの従業員によって行われる


価値基準の組織への浸透


組織の実行力を規定する3つのうち、興味深いと思ったのは最後の 「価値基準」 です。

特に、価値基準が組織に浸透していく過程です。

本書でクリステンセンが言っているのは、企業が生まれ、企業に価値基準が定着していくためには、創業者の姿勢や行動が大きな影響力を持つことです。

創業者は、自分の持つ価値基準をもとに業務や事業の優先順位を決めていきます。創業者が自分の価値基準に沿った行動をし、価値基準を体現することにより、まわりの人たちに価値基準が伝わっていきます。

まわりのメンバーが創業者の価値基準を理解し、価値基準に則った判断をすれば、創業者と同じような行動がとれます。

価値基準の実践での成功体験が蓄積され、次第に組織内で創業者が言わなくても自然と価値基準に沿った行動ができるようになります。やがては、価値基準が企業文化を形成します。

まとめると、以下です。

  • 創業者という組織内で影響力の高い人の姿勢や行動が、まわりにも伝わっていく
  • 価値基準という創業者の暗黙知が組織に共有され、成功体験が得られる。価値基準に沿った行動が繰り返されることによって、組織で形式知化される
  • 価値基準を意識しなくても創業者の考え方や行動が理解でき、実践できるようになり、やがては企業文化にまで昇華する


企業の成熟期における価値基準の浸透


ここまで見てきた創業者の価値基準の浸透は、企業が創業して間もなくの時期のことです。

創業期ではなく、成長期や成熟期に入った企業では、価値基準はどのように扱われるのでしょうか?

価値基準は、永遠に同じものではないということです。むしろ、外部環境の変化によって、変化に自らも適応するために、自分たちの姿勢や行動を変えなければ、やがては変化に淘汰されてしまいます。


創業期と成熟期の違い


企業の成熟期であっても価値基準をアップデートするためには、どうすればいいのでしょうか?

創業期における価値基準の浸透から考えれば、創業者に相当する影響力の高い人物の姿勢や行動から組織に価値基準を浸透させることです。例えば、今の CEO などのトップです。

ただし、創業期と成熟期で前提が違うのは、企業規模です。

規模が大きくなっていると、トップと現場には物理的な距離があり、間にある組織階層が多くあります。現場の社員が、普段の CEO などのトップの姿勢や行動を直接見る機会は限られます。CEO は普段の現場業務からは遠い存在です。


ミドルのリーダーが担えるか


思ったのは、成熟期でも新しい価値基準を浸透させるためにカギになるのは、ミドル層のリーダーだということです。

ミドルのリーダーが、トップの考えていることや行動の背景にある価値基準を理解し、実際に価値基準を体現する行動を取り、まわりのメンバーに語り続けます。リーダーが企業がありたいと思う価値基準を現場に落とし込むことです。

リーダーが価値基準のエバンジェリストという役割を果たします。

価値基準だけではなく、価値基準の基になっている企業が描くビジョンと、ビジョンを実現するためのミッション (使命) も現場に浸透させます。ビジョンとミッションの意味合いを語り、現場からの共感と実現可能性の機運を高めるのです。


まとめ


企業がイノベーションを起こし実現するのは、日々の業務を担う現場においてです。

イノベーションを起こすためのアイデアを思いつき、アイデアをただ持っているだけではなく、イノベーションを成し遂げるほどの組織の実行力があるかです。

クリステンセンによれば、組織の実行力を規定するのは、資源・プロセス・価値基準の3つです。

価値基準は、創業者の影響力の高い人の姿勢や行動が、まわりのメンバーの形式知化することによって、やがては企業文化になります。

創業期ではなく、成熟期であっても価値基準は外部環境の変化に取り残されないように、新しくなるように変えていく必要があります。その際には、影響力の高いミドルのリーダーが鍵を握ります。

価値基準だけではなく、企業のビジョンやミッションも含めてエバンジェリストとしての役割を果たせるかです。



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書いている人 (多田 翼)

ベンチャーから一部上場企業の経営・事業戦略を支援。マーケティング、コンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネジメント。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。