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シリコンバレー式 最高のイノベーション という本から、イノベーションをどうすれば起こせるかを考えます。
エントリー内容です。
- 本書の内容。イノベーションとは何か
- イノベーションに必要なことを3つに分けて整理する
- 思ったこと (3つ)
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
自ら数社のスタートアップを成功させるとともに、22ヶ国でスタートアップを支援するアクセラレーターの CEO がシリコンバレーで起きているイノベーション成功の秘密を初公開!
小さなアイデアが大きな変革をもたらし、世の中を一変させるプロセスを、多くの実例を紹介しながら具体的に説明する 「シリコンバレー式イノベーション」 の方法。
本書では、以下のような疑問に答える。
- シリコンバレーではなぜ次々とイノベーションが起こるのか?
- イノベーションチームはどうやって作るのか?
- イノベーションを起こすにはどんなスキルが必要か?
- 企業の中でイノベーションを起こすにはどうすればいいのか?
- 画期的なアイデアはどうやって生み出すのか?
- どんな手法やプロセスを使えば、いい結果が出せるのか?
- 次の大きなビジネスチャンスは、どうやって見つけるのか?
イノベーションとは何か
本書では、イノベーションとは下記のように説明します。
- 新しい何かを創り出すこと。誰も見たことも、試したこともない何かを生み出す。イノベーションの本質は未知の何かを発見すること
- イノベーションとは探求である。証拠集め、ユーザーの観察や聞き取りから、隠れた真実を表に出すこと
- 多くの偉大なイノベーションは偶然から生まれた。イノベーションを計画することはできない
イノベーションに必要なことを3つに分けて整理する
この本を読み思ったのは、イノベーションに必要なことは大きく3つに分けて整理できることです。
- マインドセット
- やり方・アプローチ
- 実行するための組織
以下、それぞれについて詳しく見ていきます。
[イノベーションに必要なこと 1]
マインドセット
イノベーションを起こすためにベースとなる考え方は、以下があります。
- オープンマインド:自分と違うこと、新しいことを受け入れる。オープンマインドは多様性とセット
- 今の常識や前提を疑う:常識はあくまで一時的なもの。未来永劫で変わらない常識はない。常識は過去の積み重ねでできたが、未来も同じとは限らない
- 人と違うことをやる:ピーター・ティールの有名な質問 「他の誰もは間違っていると思うが、自分にとっては大切な真実は何か」
- ルールを変える:既存のビジネスモデルを変えるような、ルール自体を書き換える
- 自分をイノベートする:自分から新しいことや難しいことに挑戦する。いつもと違うことをやってみる。自分から新しく何かを始める
[イノベーションに必要なこと 2]
やり方・アプローチ
2つめは、イノベーションのためのアプローチです。6つご紹介します。
1. 小さく始める
- ちょっとしたアイデアを試してみる
- 完璧になるまで時間をかけて作り込むよりも、未完成でいいから投入する
- LinkedIn の共同創業者であるリード・ホフマンが 「自分のプロダクトの最初のバージョンが恥ずかしくないなら、発表が遅すぎるということだ」 と言ったことは有名。不格好でも世に出してフィードバックを得て学習する
2. ユーザーとの対話と理解
- 自分たちのプロダクトのユーザーは誰か、ユーザーとどれだけ時間を過ごしたか
- ユーザーこそ最高の情報源になる。観察と正しい質問を投げかけ、ユーザーが普段はあまり口にしない 「満たされない欲求」 を理解する
- ユーザーにより深く入り込み、彼らの生活やビジネスを知る。データを集める
3. ユーザーの問題が先、ソリューションは後
- 実際は存在しない問題へのソリューションをつくろうとしていないか
- 出発点はユーザーが抱える問題から (時には本人も気づいていないような潜在的な 「不」 から) 。まずは問題を磨き込み、解決策 (ソリューション) の質を高めるのはその後
4. 自分たちのコアから取り組む
- コアの機能から始め、そこから外側に拡げる (逆向きの外から始めて内側を固めるのではない)
- 核から始めるので出発点と目標が明確になる。自分たちが何に集中するかがはっきりする
- コアに絶対欠かせない機能でなければ後回しにする。コアの価値向上に集中する
5. 早く失敗する
- 失敗なしのイノベーションはあり得ない。最初から成功しようと思わない。早く先に失敗する
- 失敗から学ぶ。学びをアウトプットし発信し、組織で学びを形式知化する (属人知や暗黙知のままにしない)
6. テスト・検証と学びを数多くする
- テストと学びのサイクルを早く繰り返す
- どれだけ自分たちの仮説と検証を行ない、その都度で学びを得られたか
- 学びを次の変更や改善に活かし、再びテストをする。学びは、ユーザーがプロダクトをどう使うかから得られる
[イノベーションに必要なこと 3]
実行するための組織
3つめは、イノベーションを起こすための組織について考えます。4つあります。
1. 多様性
- 同じ人だけの組織ではなく、多様性のある組織
- 男女や年齢、国籍などの属性の多様性よりも、本質的にはものの見方や考え方、バックグランド、専門分野で多様な人材が集まった組織
- お互いの視点や意見が異なるので、新しいアイデアが創発される
- 多様性の前提として、お互いが相手の違いを受け入れるオープンマインドが重要
2. 信頼と心理的安全性
- 組織の中でお互いへの信頼で成り立っている組織
- 心理的安全性という、自分が組織でありのままの状態でいられ、自分の居場所があると感じること。自分が組織に受け入れられていると実感できる組織
- 言いたいことが言い合え、普段から活発なコミュニケーションが起こっている
3. ビジョンとミッション
- 企業や組織へのビジョンとミッションに皆が共感している。目指すところが同じ認識である
- 組織で大切にしたい行動基準の価値観はリーダーの言葉だけではなく、行動からつくられる。価値観の浸透と実践によって企業文化が形成されている
4. 全員の参加
- 組織構造が、イノベーションは誰でも起こせるような状態になっていること
- 一部の人だけではなく、イノベーションには全員参加になるような仕組みがあるとよい
思ったこと
ここからは、本書 シリコンバレー式 最高のイノベーション を読んで思ったことです。
[思ったこと 1]
イノベーションとは何か
私が考えるイノベーションの定義は、イノベーションとは 「未来の当たり前」 をつくることです。
逆に言えば、今はまだない未知のものです。しかし、未来にはそれが当たり前のように存在し、人々に使われ、なくてはならないものになっている世界を創り出すことです。
未来の当たり前とは、新しい常識をつくることです。今ある常識を書き換えるために、既存の常識を疑うところからです。
[思ったこと 2]
「イノベーションの常識」 を疑う
イノベーションは、一部の天才や企業が起こすものだと考えられています。多くは結果的に、偶然に起こるものと捉えられています。本書には、「イノベーションは計画できない」 と書かれています。
あらためて思ったのは、イノベーションは本当に偶発的にしか起こらないものなのかです。イノベーションを科学的な見解から、意図的に起こすことは本当に不可能なのでしょうか?
少なくとも思うのは、AI にはイノベーションそのものはできないであろうということです。
AI には学習するためのデータが必要です。データとは本質的に過去のものです。過去からでしか学習できないということは、AI からは過去の延長でしか何かがつくられません。
イノベーションは未来の当たり前です。過去の延長ではなく非連続のものです。現時点では存在せず未知のものです。
イノベーションは、AI ではなく人間が起こすものです。他者への共感力、人の創造力、気づきや異なるもの同士を組み合わせたアイデアの統合と創発からです。
個人的に期待したいのは、イノベーションそのものの 「未来の当たり前」 です。
イノベーションは偶然でしか起こらないという常識は正しくなく、未来には意図的に人の創造力からイノベーションが起こる新しい常識ができていることです。
[思ったこと 3]
イノベーションの必要条件と十分条件
本書には、これまでのイノベーションへの事例や経験則から、どうすればイノベーションが起こせるかを体系立てて解説しています。
あくまで私の感覚ですが、書かれていることはイノベーションの必要条件であり、十分条件ではないことです。つまり、説明されていることはイノベーションには必要な要素ですが、これらをやったとしてもイノベーションを起こせるとは限らないことです。実践してもイノベーションは保証されません。
イノベーションの難しさの一つは 「タイミング」 です。同じことをやっても、タイミングが早すぎても遅すぎてもいけません。「なぜ今か?」 に答えられるかです。
イノベーションの十分条件とは、何なのでしょうか?
最後に
本書 シリコンバレー式 最高のイノベーション はイノベーションを起こすという視点から、多くの事例とともに詳しくイノベーションの成功の秘訣が紹介されています。
成功事例だけではなく、考えさせられるのは失敗事例です。
松浦静山の剣術書である 「剣談」 には、以下のような言葉が出てきます。
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし
イノベーションに当てはめると、2018年の現時点では、後者の 「不思議の負けなし」 、つまりなぜイノベーションに失敗したかは、後から振り返れば納得のある説明ができます。
一方で前者の 「勝ちに不思議の勝ちあり」 は、イノベーションも同様です。まだまだ偶然の要素が大きいのがイノベーションの現状です。