2019/12/29

カルビーのポテチに学ぶ、提供価値からブランドのつくり方




今回は、マーケティングの話です。提供価値を取り上げます。

  • カルビーのポテチの提供価値とは?
  • 売り手と買い手の価値認識の違い
  • 違いが意味すること (ブランディングの観点から)

こんな疑問に答える内容を書きました。


この記事でわかること


この記事でわかるのは、事業や商品・サービスで顧客への提供価値についてです。

カルビーがお客様に提供する価値の話から、価値について掘り下げています。マーケティングやブランディングの観点で書いています。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。


ポテトチップスの提供価値


Marketing Native の、カルビーのマーケティング責任者へのインタビュー記事を読みました。

カルビー マーケティング本部長・松本知之インタビュー 「小さなイノベーションの積み重ねが国民的ロングセラーへの道」|Marketing Native


カルビーのマーケティングの考え方、マーケターのキャリアなど、考えさせられることが多い記事でした。中でも、カルビーがスナック菓子事業全体で定義している顧客への提供価値の話が興味深かったです。

読んだ後に、こんなツイートをしました。





インタビュー記事から、該当箇所を引用します。

――DNA というのは、原料のじゃがいもの品質ということですか。

もちろん、それもあります。加えて大切にしたいのは食感です。我々は時代の変化に合わせて、「かっぱえびせん」 から 「ポテトチップス」 「じゃがりこ」 「Jagabee (じゃがビー) 」 などの商品を発売してきました。あらためて我々は何を作ってきたかを振り返ってみると、食感を作ってきたのだと考えています。

――食感ですか。

食べることは本能的に気持ちのいい要素です。また、「どんどん食べたくなる」 という欲求を考えると、食べ応えや食べたときのテクスチャーも重要な要素を占めていると思います。カルビーのコーポレートメッセージは 「掘りだそう、自然の力。」 ですが、自然の素材をどんな食感に変えていくのかという点は、事業の根幹であると考えています。

その食感を作り出すという根幹の部分が最近、少し停滞していたのかもしれません。私はそんな問題意識を持っていますので、もう一度原点、コアコンピタンス (競合他社に真似のできない核となる部分) に立ち戻って、いろんな食感を作り出していこうと思っています。その点はカルビーの本質ですし、ポリシーだと捉えていますから、今後の商品企画の方向性、戦略のひとつに据えています。

――力強いですね。「うすしお味」 とか 「コンソメ味」 とか味ばかり気にしていて、食感までは意識していませんでした。ただ売れる商品ではなく、コアコンピタンスから戦略を立案し、それを基に商品を作って、事業を伸ばしていくということですね。

味の世界もバリエーションは豊富ですし、カルビーならではの味の出し方もできますので、お菓子の持つ楽しさの要素として大切にすべきです。ただ、味のバリエーションを出すこと自体は、他社さんでもできます。そうではなく、カルビーの本質的な強みとは何かを考えたとき、それはいろいろな食感を作り出すことだと思います。

(引用:カルビー マーケティング本部長・松本知之インタビュー 「小さなイノベーションの積み重ねが国民的ロングセラーへの道」|Marketing Native)

もう少し、食感という提供価値について掘り下げてみます。


味や風味はパーツ


カルビーのポテチの提供価値を 「食感」 と捉えると、何が言えるでしょうか?

思ったのは、味や風味、形、固さ (噛みごたえ) 、表面のざらつき (舌触り) などは、全て食感につながるパーツです。これらは、食感というユーザー体験を実現するためのものです。

トータルで食感をつくっているわけです。

カルビーは価値を食感と定義していますが、買い手である消費者はどう思っているのでしょうか?


消費者の価値認識


興味深いと思うのは、食感という価値を買い手が自覚していないであろうことです。

無意識にはポテチなどのスナック菓子を食べながら食感を楽しんでいるでしょう。しかし、消費者は自分が 「カルビーでしか体験できない食感を得るためにお金を払っている」 という認識を持ってはいません。

もし消費者にポテチなどの価値を聞けば、返ってくるであろう答えは、
  • おいしい
  • 小腹を満たせる
  • 気分転換
  • 酒のつまみ
  • 子どもに食べさせれば静かにしてくれる
です。

ここから、何が言えるでしょうか?


価値認識の不一致が意味すること


つまり何が言いたいかというと、提供者側の価値定義と、受け手の価値認識は必ずしも一致しないのです (意識できるレベルにおいて) 。

売り手と買い手、相手と自分の両者では、どこかに必ず認識の不一致があります。ビジネスに限らず、家族やパートナー間でも同じです。

提供価値に話を戻すと、売り手と買い手の不一致が意味することは何でしょうか?

思ったのは、提供側が価値をしっかりと定義し、たとえ受け手が明確に意識したり言語化できていなくても、定義した価値提供の実現を主体的に進める重要性です。

提供価値とは、提供側にとっては自分たちの存在意義です。

自らの価値をどこに見い出すのか、どう実現するのかを、部分最適ではなく全体最適で考え、一貫した思考と行動を取れるかです。この1つ1つの積み重ねが、カルビーで言えばポテトチップスなどのカルビーの 「らしさ」 につながります。

カルビーらしさが積み重なっていった結果、受け手が感じるカルビーでしか味わえない、体験できない価値が生まれます。必ずしも意識されなくてもカルビーならではの食感を楽しみ、ユーザー体験からカルビーというブランドができていくのです。

カルビーの食感という価値定義は、考えさせられる話でした。


まとめ


今回は、提供価値についてでした。

最後に今回の記事のまとめです。



カルビーが定義するポテチなどのスナック菓子の価値は、食感。
味や風味、形、固さ (噛みごたえ) 、表面のざらつき (舌触り) などは、全て食感につながるパーツ。食感というユーザー体験を実現するためのもの。


興味深いのは、消費者は 「カルビーでしか体験できない食感を得るためにお金を払っている」 という食感への価値認識を持ってはいない。
提供者側の価値定義と、受け手の価値認識は必ずしも一致しない。


売り手と買い手の不一致が意味するのは、提供側が価値を定義し、たとえ受け手が明確に意識したり言語化できていなくても、定義した価値提供の実現を主体的に進める重要性。


自らの価値をどこに見い出しどう実現するかを全体最適で考え、一貫した思考と行動を取れるか。1つ1つの積み重ねが 「らしさ」 につながる。
らしさが積み重なっていった結果、それでしか得られないユーザー体験からブランドができていく。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。