投稿日 2021/07/05

カルビーポテチの 「食感」 に学ぶ、顧客より深いレベルの提供価値をつくる方法



今回はマーケティングについてです。カルビーに学ぶ提供価値のつくり方です。


この記事でわかること


  • カルビーのポテチの提供価値は 「食感」
  • 「食感」 という存在価値から考えたこと
  • 顧客より深いレベルで価値を定義する
  • プロダクトアウト的な価値提供のつくり方


カルビーのポテトチップスを例に、顧客への提供価値をつくる方法を掘り下げています



ポテトチップスの提供価値


Marketing Native の、カルビーのマーケティング責任者へのインタビュー記事を読みました。

カルビー マーケティング本部長・松本知之インタビュー 「小さなイノベーションの積み重ねが国民的ロングセラーへの道」|Marketing Native


カルビーのマーケティングの考え方、マーケターのキャリアなど、考えさせられることが多い記事でした。中でも、カルビーがスナック菓子事業全体で定義している顧客への提供価値の話が興味深かったです。

以下はインタビュー記事からの引用です。


――DNA というのは、原料のじゃがいもの品質ということですか。

もちろん、それもあります。加えて大切にしたいのは食感です。我々は時代の変化に合わせて、「かっぱえびせん」 から 「ポテトチップス」 「じゃがりこ」 「Jagabee (じゃがビー) 」 などの商品を発売してきました。あらためて我々は何を作ってきたかを振り返ってみると、食感を作ってきたのだと考えています。


――食感ですか。

食べることは本能的に気持ちのいい要素です。また、「どんどん食べたくなる」 という欲求を考えると、食べ応えや食べたときのテクスチャーも重要な要素を占めていると思います。カルビーのコーポレートメッセージは 「掘りだそう、自然の力。」 ですが、自然の素材をどんな食感に変えていくのかという点は、事業の根幹であると考えています。

その食感を作り出すという根幹の部分が最近、少し停滞していたのかもしれません。私はそんな問題意識を持っていますので、もう一度原点、コアコンピタンス (競合他社に真似のできない核となる部分) に立ち戻って、いろんな食感を作り出していこうと思っています。その点はカルビーの本質ですし、ポリシーだと捉えていますから、今後の商品企画の方向性、戦略のひとつに据えています。


――力強いですね。「うすしお味」 とか 「コンソメ味」 とか味ばかり気にしていて、食感までは意識していませんでした。ただ売れる商品ではなく、コアコンピタンスから戦略を立案し、それを基に商品を作って、事業を伸ばしていくということですね。

味の世界もバリエーションは豊富ですし、カルビーならではの味の出し方もできますので、お菓子の持つ楽しさの要素として大切にすべきです。ただ、味のバリエーションを出すこと自体は、他社さんでもできます。そうではなく、カルビーの本質的な強みとは何かを考えたとき、それはいろいろな食感を作り出すことだと思います。

 (引用: カルビー マーケティング本部長・松本知之インタビュー 「小さなイノベーションの積み重ねが国民的ロングセラーへの道」|Marketing Native)


もう少し、食感について掘り下げてみます。


食感という提供価値


自分たちの存在意義として顧客への価値提供を 「食感」 と定義しているのが興味深いです。

味や風味、形、固さ (噛みごたえ) 、表面のざらつき (舌触り) などは、全て食感につながるパーツです。これらは、食感というユーザー体験を実現するためのものです。トータルで食感をつくっているわけです。


生活者の価値認識


記事の中で聞き手であるインタビュアーが 「味ばかり気にしていて、食感までは意識していませんでした」 と言っているように、生活者は食感がポテトチップスの価値だとは認識していません。

それよりも自覚できているポテチの価値と言えば、おいしい、小腹を満たせる、気分転換になる、お酒のおつまみ、子どもに与えておくと静かにしてくれるといったものでしょう。

これらが欲しいから消費者はお金をポテチにお金を払うのです。決して 「カルビーならではの食感が欲しい」 と意識して買っているわけではありません。

提供者側は 「食感」 、一方の生活者は 「おいしい」 や 「小腹が満たせる」 と、価値認識に不一致が起こっています。


自らが提供価値を定義する


思ったのは、たとえ受け手が明確に意識したり言語化できていなくても、自らが定義した価値提供の実現を主体的に進める重要性です。

提供価値とは、提供側にとっては自分たちの存在意義です。

自らの価値をどこに見い出すのか、どう実現するのかを部分最適ではなく全体最適で考え、一貫した思考と行動を取れます。1つ1つの積み重ねが、カルビーで言えばポテトチップスなどのカルビーの 「らしさ」 につながります。

カルビーらしさが積み重なっていった結果、受け手が感じるカルビーでしか味わえない、体験できない価値が生まれます。必ずしも顧客に意識されなくてもカルビーならではの食感を楽しみ、ユーザー体験からカルビーというブランドができていきます。


プロダクトアウトで提供価値をつくる


カルビーの 「食感という価値提供」 から考えさせられたのは、顧客から言われたり直接求められることだけにとどまらず、顧客が気づかないレベルで提供価値を定義する重要性です。

この発想はプロダクトアウトでの提供価値をつくるアプローチです。

顧客と同じレベルで価値提供を考えるだけではありません。自分たちからより深く掘り下げ、その深さは顧客の意識レベルでは行き着けないところです。ここまでの存在意義を定義できるかです。

存在意義、顧客への本質的な提供価値をマーケットインだけで終わらず、プロダクトアウトからできるかが、提供者には求められます。


まとめ


今回はカルビーのポテトチップスに学ぶ、顧客への提供価値をつくる方法でした。

最後にまとめです。


食感という提供価値
  • カルビーは顧客への価値提供を 「食感」 と定義している
  • 一方の生活者は食感がポテトチップスの価値だとは認識していない
  • 提供者側は 「食感」 、一方の生活者は 「おいしい」 や 「小腹が満たせる」 と、価値認識に不一致が起こっている


プロダクトアウトで提供価値を定義する
  • 顧客から言われたり直接求められるような顧客と同じレベルで止めない。顧客の認識レベルでは行き着けない深さまで提供価値を掘り下げる
  • 顧客への本質的な提供価値をマーケットインだけで終わらず、プロダクトアウトで存在意義を見出そう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。