投稿日 2021/12/05

南紀白浜を 「IoT の聖地」 に。地域 DX からの三方よしの価値創出



今回のテーマは DX (デジタルトランスフォーメーション) です。

✓ この記事でわかること
  • 顔認証を使った 「IoT おもてなしサービス実証」 がおもしろい
  • DX の本質とは?
  • 実証実験は 「地域 DX」 である
  • 三方よしの価値提供

おもしろいと思った地域全体を巻き込んだ実証実験を取り上げ、DX の観点から掘り下げています。

よかったらぜひ最後まで読んでみてください。

IoT おもてなしサービス実証 @南紀白浜


NEC が和歌山県の南紀白浜で、顔認証技術を活用した 「IoT おもてなしサービス実証」 を行っています (公式サイトはこちら) 。

実証実験は2019年1月からです。

出典: NEC

観光客などの南紀白浜の訪問者は、事前に顔画像やクレジットカード情報を1回登録します。

空港に降り立った時に Welcome メッセージで迎えられ、観光施設では待ち行列に並ばずに入場できます。飲食店や土産屋では財布を持たずに顔認証での顔パスで買いものが可能です。

ホテルのチェックイン、ホテル滞在時の客室のカギの開け閉め、アミューズメント施設の入園、お土産の買いものに至るまで、複数の施設のサービスを 「手ぶら」 「キャッシュレス」 で利用できます。

施設単体ではなく、複数の施設が連携し、エリア全体で顔認証サービスを受けられる取り組みは、国内でも他にはない先進的な取り組みです。



南紀白浜を 「IoT の聖地」 に


IoT おもてなし実証に参加している南紀白浜エアポートの岡田信一郎氏は、次のように述べています。

南紀白浜を日本最先端の "IoT の聖地" にしたい。IoT による地域全体のおもてなし拡充による利用者満足度の向上、地域の観光政策や産業政策と歩調を合わせた誘客および地域活性化を図る 「空港型地方創生」 を目指しました

南紀白浜が IoT の聖地になることを目指す意欲的な取り組みで、今後の構想は、次のように描いています。

出典: NEC


DX の本質


南紀白浜の IoT おもてなしサービス実証について、私は 「地域 DX」 と見ました。

地域 DX の意味合いを説明する前に、そもそもの DX についてです。あたらめて DX とは何でしょうか?

DX の本質を言語化すると、DX とは 「事業や経営のコア領域をデジタル化し、ビジネスモデルを進化させること」 です。これが私の一言の DX の定義です。

単なる IT ツールの導入や、紙ベースで管理していたことを電子化 (ペーパーレス化) するだけでは、DX とは言えません (DX のための必要な1つです) 。DX とは事業と経営のコア領域をデジタル化し、事業プロセスを効率化したり顧客への新たな価値提供から、ビジネスを変革させることなのです。

DX はビジネスでの成果につなげてこそです。この意味で DX は手段であり、これからはビジネスの前提になります。


南紀白浜での地域 DX


NEC が南紀白浜で進めている IoT おもてなしサービス実証は、「地域 DX」 です。

先ほど DX とは 「事業や経営のコア領域をデジタル化し、ビジネスモデルを進化させること」 としました。事業や経営を 「観光体験」 と置き換え、ビジネスモデルを 「地元産業」 と言い換えれば、次のように表現できます。

IoT おもてなしサービス実証とは、「観光体験のコア領域をデジタル化し、南紀白浜の地元産業を進化させること」 。観光体験のコア領域とは具体的には、接客 (お店, ホテル, 空港) 、食事、遊び、温泉入浴、支払い、移動です。


三方よしの価値創出


顔認証サービスを活用する新しい観光体験の実現によって、南紀白浜に訪問する人 (観光客や出張ビジネスパーソン) にメリットがあります。

それだけではなく、地元の人々にも恩恵があります。

観光客が来てくれ、南紀白浜でしかできない体験を楽しみ、お金を支払ってもらえれば、観光産業により地元は活性化します。雇用が生み出され、地域全体も豊かになります。1つの施設やお店単体で顔認証を導入するのではなく、地域全体で皆で一枚岩となって取り組むことで相乗効果が生まれるわけです。

南紀白浜への新規での観光客が増え、リピーターができることが期待できます。IoT おもてなし実証は観光客、サービス提供者 (お店や施設) 、地元住民の三者に価値がある 「三方よし」 の取り組みで、今後も期待したいです。


まとめ


今回は、南紀白浜での顔認証を使った 「IoT おもてなしサービス実証」 を取り上げ、DX の観点で掘り下げました。

最後にまとめです。

IoT おもてなしサービス実証 @南紀白浜
  • NEC の顔認証技術を活用した地域全体での実証実験
  • 空港での Welcome メッセージ、観光施設では待ち行列に並ばずに入場、飲食店や土産物店では財布を持たずに顔パスで買いものが可能
  • 南紀白浜が IoT の聖地になることを目指す意欲的な取り組み

南紀白浜での地域 DX
  • IoT おもてなしサービス実証は、「地域 DX」 と見ることができる
  • 観光体験のコア領域をデジタル化し、南紀白浜の地元産業を進化させる
  • 観光体験コア領域とは具体的には、接客 (お店, ホテル, 空港) 、食事、遊び、温泉入浴、支払い、移動

三方よしの価値創出
  • 顔認証サービス活用の新しい観光体験から、南紀白浜への訪問者メリットだけではなく、地元の人々にも恩恵がある
  • 観光産業により地元は活性化し、雇用が生み出され地域全体も豊かになる
  • IoT おもてなしサービス実証は観光客、サービス提供者 (お店や施設) 、地元住民の三者に価値がある


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。