今回のテーマは、マーケティングリサーチです。
✓ この記事でわかること
- 人間に変わってアンケート回答する 「デジタルクローン」 とは?
- マーケティングリサーチのパラダイムシフト
- デジタルクローンに期待したいこと
- 今後の課題
おもしろいと思ったマーケティングリサーチの実証実験を取り上げ、意味合い (本質) や未来展望を書いています。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
アンケート回答をするデジタルクローン
この話を知ったのはビデオリサーチのニュースリリースからでした (2021年11月18日) 。
ビデオリサーチとオルツが共同で 「デジタルクローンアンケートシステム」 の実証実験を行いました。第一弾の成果として、アンケートモニター (実際の人間の調査回答者) を再現したデジタルクローン (仮想の調査回答者) の生成に成功したとのことです。
出典: ビデオリサーチ
オルツのデジタルクローンに、ビデオリサーチが保有するアンケートモニターの性別年齢・職業・収入等のデータを組み合わせ、人間の代わりにアンケートなどの調査を回答させる取り組みです。
例えば活用イメージは、企画段階でのテレビ番組視聴者の評価予測や、これまで調査をすることが難しかった詳細なターゲットに対する評価把握です。
出典: ビデオリサーチ
デジタルクローンとは何かを考えると、例えるならアニメのパーマンに出てくる 「コピーロボット」 です。
出典: ガジェット通信
人に代わってデジタルクローンがアンケートなどの調査に回答します。本人と同じようにクローンが考えや意見、感じ方を答えるわけです。
デジタルクローンによる調査回答が実際のマーケティングリサーチ案件で採用されるようになれば、マーケティングリサーチのパラダイムシフトと言っていい進化です。
マーケティングリサーチのパラダイムシフト
直近でのマーケティングリサーチで起こったパラダイムシフトは、インターネットを使ったアンケート調査です。
今ではネット調査は当たり前ですが、以前は郵送調査、訪問調査、電話、街頭でのアンケート調査というアナログな方法が主流でした。
アンケート回答をパソコンでのブラウザやスマホアプリからできるようになったことで、ネット調査はマーケティングリサーチの可能性を広げ、実施の機会を多くもたらしました。
デジタルクローンによるアンケート回答は、ネット調査に匹敵するパラダイムシフトと私は見ます。
デジタルクローンのリサーチへの期待
本人に代わってデジタルクローンがアンケートを回答することで期待したいのは、次の3つです。
✓ デジタルクローンのリサーチへの期待
- アンケートの低コストと回収スピードアップ
- アンケート回答者の裾野の広がり
- 人が答えにくいことへの調査実施
順番に補足をすると、1つ目の 「アンケートの低コストと回収スピードアップ」 は、デジタルクローンは自動で24時間365日いつでも答えられます。
これにより人間が回答するよりもコストが低く、アンケート回収 (目標とする回答数の収集) が早くなります。
2つ目の期待の 「アンケート回答者の裾野の広がり」 とは、日常的にアンケートに答えるのは面倒だと思う人も、デジタルクローンなら勝手にやってくれるので、クローン生成するだけのアンケートモニター登録をしてみてもいいと思う人は一定数いるのではないかと思います。
今まではアンケートモニターをしたことがない人にも裾野が広がります。これにより条件を絞ったアンケート調査でも回答者を集められるようになります。
3つ目の 「人が答えにくいことへの調査実施」 は、プライベートの話で他人にはあまり言いたくない、話しにくい調査も、デジタルクローンであれば本人に代わって答えてくれることが期待できます。
これにより今までは訊きにくかったテーマ (例えばコンプレックス系, 人間関係, 健康などの悩み, 借金の話など) の調査も可能になるでしょう。
デジタルクローンの今後の課題
では最後に、デジタルクローンの未来展望として今後の課題についても整理しておきます。
結論、課題は次の3つです。
✓ デジタルクローンの今後の課題
- 複雑な調査にも回答ができるか
- クローンのアップデート
- デジタルクローン調査の実績と信頼獲得
複雑な調査にも回答ができるか
まずは単純な選択肢を選ぶだけのアンケート回答で、デジタルクローンが機能するかです。
選択肢設問の回答だけではなく、アンケートでの記述式の自由回答、さらにはアンケート以外のインタビュー調査のような会話やチャット形式での調査でもクローンが機能するかが課題です。
クローンのアップデート
一度デジタルクローンを生成できたとしても、元になった人 (クローンのモデル) は日々の生活の中で考え方や価値観は変わっていきます。
これが意味するのは、次第に人間とクローンの乖離が大きくなり、人のアンケート回答とクローンによる回答では違った答えになってしまうことです。
定期的にクローンを更新し、常にモデルである人間と同じ状態にメンテナンスをする必要があります。
デジタルクローン調査の実績と信頼獲得
かつてネット調査が登場した時に、郵送や訪問、電話調査に比べてインターネットで回答されたアンケート結果は信頼できるのかの議論がありました。
これと同じように、デジタルクローンによるアンケート回答結果にも信頼に足り得るものかの議論が生まれるはずです。いわば鶏と卵の関係です。
ネット調査は従来のアナログな方法よりも低コストで早いというビジネスメリットがあり、次第にネット調査が増え、今ではネット調査が信頼できるのかは過去の議論になりました。
デジタルクローンの調査も、結局のところは実績を積み重ねていくしかありません。
技術的にデジタルクローン調査ができるようになっても、広くマーケティング業界や世の中に普及するかは注目していきたいです。
まとめ
今回は、人間ではなくデジタルクローンが調査に回答する実証実験を取り上げ、マーケティングリサーチの未来展望を見てきました。
最後にまとめです。
アンケート回答をするデジタルクローン
- ビデオリサーチとオルツが共同で、人のデジタルクローン (仮想の調査回答者) の生成に成功
- 人に代わってクローンがアンケートなどの調査で考えや意見、感じ方を答える
- クローンによるアンケート回答は、ネット調査に匹敵するパラダイムシフト
デジタルクローンのリサーチへの期待
- アンケートの低コストと回収スピードアップ
- アンケート回答者の裾野の広がり
- 人が答えにくいことへの調査実施
デジタルクローンの今後の課題
- 複雑な調査にも回答ができるか (例: 自由回答, インタビュー調査)
- クローンのアップデート (モデルの人とクローンの乖離を起こさない仕組み)
- デジタルクローン調査の実績と信頼獲得 (鶏と卵の関係)
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