投稿日 2021/12/15

BtoB オフィス緑化サブスクに学ぶ、新規事業や新サービスのつくり方

出典: PR TIMES

今回のテーマは、事業開発や商品開発です。

✓ この記事でわかること
  • ホームセンターのサブスクビジネス 「BtoB オフィス緑化サービス」 とは?
  • オフィス緑化ビジネスの本質
  • 独自資産の有効活用
  • 事業開発や商品開発に学べること

この記事を読んでいただきたいのは、新規事業の開発を担当していたり、新しい商品やサービスの企画・アイデアを考える仕事をされている方です。

あるホームセンターが始めたおもしろいビジネスを取り上げ、事業開発や商品・サービス開発に学べることを解説していきます。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ホームセンターのオフィス緑化サブスク


福岡のホームセンター 「グッディ」 が、法人向けのオフィス緑化ビジネスを開始しました (公式サイトはこちら) 。

緑化されたオフィス (出典: 日経)

緑化した会議室 (出典: PR TIMES)

以下は日経新聞の記事からの引用です。

ホームセンターのグッデイ (福岡市) は、オフィスに観葉植物を提供する緑化ビジネスに参入する。

ホームセンターで園芸品を販売しているノウハウを生かし、植物の手入れを代行するほか、季節にあわせた植物を配置する。まず福岡市内を中心にサービスを始め、天神や JR 博多駅周辺のオフィスビル再開発で高まる需要を取り込む。

園芸のバイヤーなどグッデイのスタッフがチームを組み、顧客の要望や予算に応じて植物を設置する。会議室や玄関、休憩室などの場所や日照環境に合わせて、観葉植物やフェイクグリーン (人工観葉植物) 、土を使わない水耕栽培などを組み合わせる。

植物の施工や、水やりや剪定 (せんてい) などのメンテナンス、植物の交換などを請け負い、サブスクリプション (定額課金型) サービスで提供する。料金は部屋の広さによって異なるが、休憩室など1カ所につき月2万2000円から。

顧客企業が希望すれば植物を買い取ることもできる。専用ウェブサイトを立ち上げ、ネットで問い合わせを受け付ける。

オフィス緑化ビジネスの本質


では戦略の観点から、オフィス緑化ビジネスの意味合いを掘り下げてみましょう。

一言で言えば、オフィス緑化ビジネスの本質は 「資産を有効活用した横展開する新規事業」 です。

ここでいう資産とは、次のような無形資産です。

✓ 持っている独自資産
  • ホームセンターでの園芸品販売で培ったノウハウ
  • グッデイの自社オフィスで緑化を実施している先行事例からの経験
  • 大学との共同研究から得られた知見

2つ目の独自資産である 「グッデイの自社オフィスで緑化」 を補足すると、グッデイは2019年の本社移転の時にオフィスに観葉植物を取り入れたことです。オフィスの緑化により、社員がリラックスして作業効率を高めることが実感できたそうです。

3つ目の 「大学との共同研究から得られた知見」 については、次で少し詳しく補足しますね。


緑化の共同研究からの知見


オフィスでの執務フロアや会議室に観葉植物を置いたほうが、リラックス効果はあると感覚的にわかっていても、ではどれぐらいの本数 (植物量) がいいのかはわかりません。

グッデイは大学との共同研究から、「緑視率」 という指標で、数字から緑化のリラックス効果を把握しています。緑視率とは視界の中に占める緑 (植物) の割合です。視界の面積を 100 として、5% 分が植物であれば緑視率は 5% となります。

大学との共同研究から、緑視率が 10% ~ 15% で平均 11% 以上のストレス軽減があるそうです (参考: PR TIMES) 。


知見の有効活用


共同研究の結果から、法人向けの緑化サービスで次のような活用ができます。

例えば、「少なくとも 10% 、できれば 15% の緑視率になるように植物を置きましょう」 、「なぜなら大学と弊社の共同研究では、緑視率が 10% から 15% でストレスが減ることが認められているからです」 のように、客観的な数字で自信を持って言えるわけです。

こうした大学との共同研究からの知見に加えて、ホームセンターでの販売からのノウハウ、自社でのオフィス緑化の実施から、グッデイは他社にはない独自資源を持っています。

オフィス向けの緑化サービスは、独自資産を活かした新規事業なのです


学べること


では最後に、グッデイの緑化ビジネスから学べることを整理してみましょう。

会社として新規事業を立ち上げたり、事業部内で新商品・サービスを企画する時のヒントがあります。

一言で表現すれば、学びは 「自分たちが持っている独自資産を活用しよう」 です。

資産にはハードとソフトの両方があります。特にソフト資産は目に見えにくく、自分たちが普段からやっていて普通にできていると、実は世の中一般ではすごいことなのに気づけません。

グッデイに当てはめると、ホームセンターの店頭での園芸品の販売は、日々当たり前のように行われています。毎日お客さんと接して得られる知見は、他にはない貴重な資産です。

今回の学びは、このように独自資産を有効活用して、新規事業や新商品・サービスの開発をやっていけないかと考えてみることです。

もう1つの学びは、既存事業や商品との相乗効果です。

グッデイではオフィス緑化サービスのクライアント企業から、オフィス向け用品をグッデイのホームセンターから販売し届けることも狙えます。

このように 「新しいサービスや事業が、既存事業にもつながる相乗効果を発揮できないか」 という着眼点から新しい着想が得られます。


まとめ


今回はグッデイのオフィス緑化サブスクサービスから、新規事業や新商品の開発に学べることを見てきました。

最後にまとめです。

法人向けオフィス緑化サブスク
  • ホームセンターのグッデイがオフィスに観葉植物を提供する緑化ビジネスを開始
  • 本質は、独自資源を活かした新規事業
  • ホームセンターで園芸品を販売しているノウハウ、グッデイの自社オフィス緑化の経験、大学との共同研究から得られた知見を活用

学べること
  • 次の2つの着眼点から事業や商品開発を進めよう
  • ① 自分たちが持っている独自資産を活用した事業開発や商品開発
  • ② 新しいサービスや事業が既存事業につながる相乗効果


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。